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最近ではマンション購入の選択肢に、新築マンションだけではなく中古マンションを入れる人が増えている。しかし中古マンションは新築を選ぶのとは違った視点が必要だ。中古マンションを購入するにあたり、立地・物件のスペック(建物の構造・共用施設)・間取り・設備といったこと以外に、チェックすべきポイントを知っておきたい。今回は凄腕マンション理事長に「見学時に見るべきポイント」を聞いてみた。
共用部がきれいか?でマンション管理への意識をチェック
桑原泰弘さんは8年前に購入したマンションの理事長に9期連続で立候補している。管理費コストの削減をはじめ、管理規約や長期修繕計画の見直し、清掃会社や管理会社の変更など、幅広く活動している。そんな桑原さんに、管理組合の理事長としての視点から、中古マンションを見学するときにチェックしておくべき項目を伺った。
「まず初めに見るべきポイントは、廊下や階段、壁などがきちんと清掃されているかどうかです。またゴミ置き場もきれいに整えられているかをチェックします。『共用部の美観をしっかり保っているか』は、マンション管理がきちんとなされているかどうかの物差しともいえます」と桑原さん。美観維持に対して意識の高い理事会であれば、管理会社とコミュニケーションを密にとり、日常清掃を含めた管理業務が適切になされているということだ。
「例えば、うちのマンションでは、日常清掃・3カ月ごとの定期清掃に加えて、2年ごとの特別清掃も実施しています。特別清掃では普段の清掃では落としきれない床や壁の汚れや、日常清掃の対象外の場所などを、特別な洗剤や道具を利用して清掃しています。普段からきれいにしていると、住民もキレイに使ってくれますからね」(桑原さん、以下同)。
たくさんのマンションを見ていると、訪れたときに匂いや汚れの差を感じることがある。築年数が同じくらいの物件を見学し、共用部の清掃具合に対して自分なりの判断軸をもつことも大切だ。
「実は、うちのマンションも当初は前の管理会社に特別清掃をやってもらっていたんです。でも、思っていたよりもきれいにならなかったことから、今の清掃会社に相談し、共用部を試験清掃してもらいました。その結果、従来と比較して驚くほどキレイになったんです。清掃技術のレベルに大きな差があったということです。結果、総会で定期清掃と特別清掃の委託会社を変えることにしました。今は新しい管理会社と一緒に、敷地・建物内を全部まわって、細かく日常清掃の場所と手順、作業スケジュールを決め、マンションの美観を一緒に保っています」
ちなみに、見学時にどこをチェックすればよいかの具体例も伺った。いずれも簡単に確認できることなので、ぜひ参考にしてほしい。
■見学時のチェックポイント目で見て判断しやすい建物や施設・設備などのハード面だけではなく、管理組合の運営や管理会社の管理能力などのソフト面では、どのような点をみるべきだろうか。管理組合と管理会社がうまくいっているマンションの見極め方についても聞いてみた。
「管理会社と入居者がうまくいっているがどうかは一見しただけでは正直分かりません。しかし、購入前に管理会社に理事会の雰囲気を聞いてみるといいと思います。例えば管理会社に『理事会ってどんな雰囲気ですか?』と質問して『ここの理事会は熱心な雰囲気で、清掃にすごく気を使ってますよ』など具体的に回答が出てきたら、理事会と管理会社のコミュニケーションはできていると思っていいですね。あと、この質問で役員の人柄も垣間見えるので、どんな人が住んでいるかを同時に知ることができます」と桑原さん。
また、マンションの暮らしでは管理員の人柄が住み心地に大きく影響するため、見学に行ったときに管理員に挨拶してみるのも大切だ。笑顔で挨拶してくれるか、服装・身だしなみは大丈夫かを確認しておきたい。ちなみに、管理員さんが聞いていないことまでベラベラしゃべるようであれば、情報管理の観点から要注意だそうだ。中には、いつ行っても管理員が入居者や管理員仲間としゃべっているマンションもあるので、そういう物件は避けた方がいいだろう。また、掲示板に連絡事項が掲示してあるかどうかを確認することで、管理状況を手軽に見極めることもできる。
購入前に必ず確認しておくべき「未収納金」物件を見学して気に入ったら、具体的に資料を集めて購入への一歩を進めたい。その際に確認したい書類等についても聞いてみた。
「まずは管理組合の収支決算書を確認させてもらいましょう。特に管理費や修繕積立金の“未収納金”の有無と割合を確認することで、管理状態の良しあしが判断できます。滞納住戸が1戸だけの場合は、たまたま引き落とし口座に入金する金額や日程の間違いなどといったケアレスミスであることが考えられます。しかし、滞納住戸が複数で継続的な未納状況が見られる場合は、入居者の質を判断する材料にもなりますし、理事会の運営や管理会社の業務遂行に対する責任感を見極める重要なポイントになります」。
さらに、購入を検討している住戸に未収納金があったとしたら要注意だ。以前の所有者の滞納金の全額を、新所有者が負担しなければいけないことになる。広告にはこういった情報は記載されない場合があるので、まずは未収納金の有無を最初に確認しよう。
ほか、マンションの「管理規約(使用細則含む)」「長期修繕計画書」「修繕履歴」などを仲介会社にお願いして見せてもらおう。中にはすべてが整っていないマンションもあるだろう。その場合は理由を聞いてみよう。詳細は細かくチェックできないとしても、必要な書類があり、不明点に応えてくれるマンションなら、ある程度管理がしっかりしているというポイントにはなるはずだ。
最後に、「マンションの入居者は、管理費を払っているからと、管理会社に任せっきりにしてしまう傾向が多いようです。管理会社はあくまでも管理組合の委託を受けたパートナーとして管理業務を事務的に遂行しているだけです。最終的にマンションの良しあしを決めるのは理事会を含む管理組合なんです。
きれいな物件だなと思って買ったとしても、そのまま放置していたら汚れていくし、経年とともに劣化も進行し、資産価値が下がってしまう。資産価値を高める努力をして『不動産』を『富動産』にしていかなければ誰もしあわせにはなりません。そのことを新しく入居してくる人に理解してもらい、自分たちの資産価値を守るという観点で、一緒にいい管理を実施していきたいと思っています」と桑原さん。
つまり中古マンションを購入するときには、「理事会と管理会社がしっかり手をつないで資産価値を高めているのか」を確認するのが大切だ。管理費や修繕積立金の安さだけに目を向けず、自分の資産を守るための必要経費と考えるべき時代だと言えよう。
これからは徐々に中古マンションの取引が中心になっていくだろう。適切なメンテナンスが行われているか。長期修繕計画、管理費・修繕費を計画的に見直しているか。1・2年後には管理状況が物件の価値を判断するうえでの評価軸に組み込まれるようになる。その時に自分のマンションが資産として適切に認められるかどうかは、中古マンションを購入する前に気を付けておきたい大事なポイントだ。
住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナルこの記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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