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家を買うとき、借りるとき、不動産会社を通じて諸々の契約を行う際に必要となる「重要事項説明(以下、重説)」。従来、不動産会社と契約者が対面で行うことが義務付けられていた重説を、インターネットを使ったテレビ会議でもできるようにしようという動きがあるらしい。8月末から社会実験として一部でスタートした「IT重説」を、いち早く体験してみました。
不動産会社に行かずに賃貸契約が可能に?
「重要事項説明書」。あまり耳馴染みのない言葉だが、不動産会社で家を借りるときにはほとんどの人がこれを通過している。賃貸契約の際に、不動産会社で宅地建物取引士が長い書面上の注意事項を一言一句読み上げ、確認するアレだ。
原則として対面での実施が義務付けられている重説を、テレビ会議でも実施できるようにしようというのが今回の試み。普及にあたり、まずは全国の不動産流通会社246社が参加しての社会実験、つまり予行演習がすでに始まっている(賃貸取引と法人間取引のみ)。
「IT重説」が一般化されれば、遠方の人や、忙しくて不動産会社になかなか足を運べない人にとってもメリットは大きい。うん、これは便利そうだ。
というわけで、ひと足先に体験してみることにしました、IT重説。
パソコンとネット環境があればOK。IT重説の流れ今回は首都圏を中心に賃貸物件の管理を行うアートアベニューさんご協力のもと、IT重説を体験させてもらった。まずは前もって不動産会社から送られてきた「重要事項説明書」を準備し、パソコンを起動。IT重説を行う約束の時間を待つ。
本来はテレビ電話を通じ遠隔で行われる「IT重説」だが、今回は取材で色々聞くこともあったのでアートアベニューのオフィスに赴いて、一連の流れを体験させてもらう。結果、メールでしかコミュニケーションしない倦怠期の夫婦みたいになっているが、気にしないでほしい。筆者は自宅にいるという体で見ていただければ幸いである。
お部屋に関する重要事項説明に先立ち、まずは「IT重説」にまつわる注意点や確認事項について説明を受ける。お互いなりすましなどを防ぐため、身分証明書を提示し合うのもIT重説ならではのルールである。
事前確認が終了したら、いよいよ重要事項の説明に入る。なお、一連のやりとりは全て録音、録画されるらしい。なるほど、賃貸契約にありがちな、言った言わないのトラブルを防ぐためにもそれは重要だ。ちゃんと鼻毛チェックをしておけばよかった。
IT重説といっても基本的な流れは従来の重説と同じ。重要事項説明書の内容を一つひとつ宅地建物取引士が読み上げ、内容を確認していく。ちなみに途中でトイレに行きたくなったら中断も可能。もし、急な来客があって会議をストップする場合は後日にスケジュールを変更し、途中から再開するのもOKなんだとか。
所要時間は1時間程度。事前説明があるぶん対面での重説に比べて倍の時間はかかったが、不動産会社に足を運ぶ手間を考えれば、かなり効率的だ。自宅なのでリラックスして説明を聞けるし、不動産会社オフィスのアウェーな雰囲気に呑まれず遠慮なく質問できるという利点もあるかもしれない。
普及すれば、不動産業界が大きく前進IT重説、確かにユーザー側のメリットは大きいと感じた。ただ、不動産会社としては余計な手間が増えるだけなのではないか? 高橋さんに聞いてみた(その場にいるのですぐ聞ける)。
「新たに準備することや覚えることは増えますが、IT重説が導入されることで入居者の方、不動産会社の双方にメリットがあると思っています。お客様が重説のためだけに不動産会社に行かなければならないといったことがなくなり時間や費用の無駄がなくなりますし、忙しいお客様ともスケジュールが合わせやすくなります。IT重説が普及すれば市場の活性化につながり不動産業界にとって大きな前進になると思います」(高橋さん)
さらには事前に重要事項説明書が送られてくることで、IT重説当日を迎えるまでにユーザーが「予習」をしておけるのもメリット。事前に目を通し、分からないところや詳しく聞きたいところをチェックしておけばスムーズに進行できるし、より理解を深めることもできるだろう。やたら長くて難しく、馬の耳に念仏になりがちな重説をきちんと把握するためにも、いい方法かもしれない。
なお、今回の社会実験は2017年1月末まで最大2年間行われる予定(状況により短縮される可能性もあり)。不動産取引のIT化は果たして成功するのか、注目していきたいと思います。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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