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現代に生きる竪穴式住居? 四本柱の邸宅にお邪魔してみた

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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現代に生きる竪穴式住居?四本柱の邸宅にお邪魔してみた

現代の日本にはさまざまな形態の住宅があります。何十年も前に建てられた伝統的な日本家屋もあれば、洋風の住宅や、デザイン性の高い先端的なものも。そんな中、時代をうんとさかのぼって竪穴式住居の「柱」を受け継ぐかのような様式の住宅をつくり、住んでいる人がいます。縄文時代の竪穴式住居といえば「元祖日本の住まい」。現代に生きる竪穴式住居のような家とは、いったいどんな家なのでしょうか? 取材しました。
家を貫く「四本柱」が人と家とを結びつける

鎌倉駅からバスで10分弱、浄明寺の程近くに、竪穴式住居の「柱」の思想を受け継ぐお宅があります。建築家で、桑沢デザイン研究所 スペースデザイン分野専任講師の大松俊紀さんのアトリエ兼ご自宅です。テレビ番組等でも紹介されたこちらの住宅は、建築家のご自宅らしい落ち着いた外観ではありますが、外からは柱の様子をうかがい知ることはできません。

2009年に竣工した大松さんのご家族3人が暮らす住宅兼アトリエは、樹齢約80年の4本の太い柱が1階と2階を貫きます。ご自宅にお邪魔し、階段を上って2階のLDKにお邪魔すると、柱が圧倒的な存在感を誇っていました。

【画像1】四本柱が異彩を放つ自宅2階に立つ大松さん。ダイニングテーブルは、4本柱の空間を特別なものにしないために、わざと中心からずらして置かれています。(写真提供/大松俊紀さん)

【画像1】四本柱が異彩を放つ自宅2階に立つ大松さん。ダイニングテーブルは、4本柱の空間を特別なものにしないために、わざと中心からずらして置かれています。(写真提供/大松俊紀さん)

もともと三重県の伊勢のご出身で、伊勢神宮が柱を中心につくられていることから、柱には特別な思い入れがあったという大松さん。大学で建築を学ぶようになってから、柱と建築の関係について考えたり、最近では雑誌に柱に関する論文を寄稿したりする機会がたびたびあったそうです。

現在の住宅では、柱をなるべく隠し、邪魔にならない構造にする傾向があります。しかし、大松さんは柱をあえて隠さず、柱をメインにした住居をつくろうと決めました。模型をつくって試行錯誤の末にたどりついたのが、「四本柱」の住宅。「柱は家と人とを結びつけるきっかけになるものです。人間の住まいづくりの根幹だともいえます」と大松さんは柱の大切さを話します。

家族の日々が四本柱へ刻まれていく

ところで、メインとなる太い柱の数を4本にしたのはなぜでしょうか。

「例えば1本だと、とても象徴的になってしまいます。柱を象徴的に見せたいわけではなかったので、1本ではないな、と。2本だとどうしても住宅自体の構造を切妻造り(きりづまづくり・棟から両側に勾配屋根があり、側面側が壁になっている屋根形式)にせざるをえませんが、この敷地で切妻造りだと大きな壁のような建築になってしまいます。3本だと家はつくりづらい。この敷地の形状に、4本がしっくりくる、ベストな選択だったのです」(大松さん)

大松さんによれば、建築構造と実用面では、4本の柱に特別なメリットはないとのこと。実際に生活してみて「柱が存在感を放ちすぎるので、逆に気になることがありません。4本柱は精神的な象徴のようにも思われがちですが、そんなこともありません」と大松さんは笑います。

たしかに、4本の柱には、お子さまが身長を測ってしるしをつけた鉛筆のあとが残っていたり、メモが貼られていたり、クリスマスの飾りが残っていたりと、生活の痕跡が残されていてほほえましい家族の暮らしの痕跡が見られました。4本の柱が神聖で不可侵なスペースをつくるものではなく、生活に密着したものであることがうかがえます。

【画像2】クリスマスの飾りの横に、身長を測ったしるしが見られる柱(写真撮影/近藤智子)

【画像2】クリスマスの飾りの横に、身長を測ったしるしが見られる柱(写真撮影/近藤智子)

【画像3】子ども部屋。壁の向こうには大松さんのアトリエ(写真提供/大松俊紀さん)

【画像3】子ども部屋。壁の向こうには大松さんのアトリエ(写真提供/大松俊紀さん)

家族に安心感を与えてくれる太い柱

それでも、まったく気持ちに関係しないわけではないそうです。

「通常の住宅では直径10センチ程度の柱が使われることが普通ですが、細いものがリビングなどに4本もあると邪魔で仕方がありません。42センチの太さの柱の存在感が大切なのです。何気なく柱に触ることが多々あるのですが、太い柱が家族に安心感を与えたり、落ち着きを覚えたりすることもあります。柱はもう一人の家族のような存在です」(大松さん)

縄文文化にも興味をお持ちの大松さんは、柱の家をつくるにあたって、竪穴式住居の柱も意識されたとのこと。大松さんにとって、この家は「終の棲家」となりそうですが「柱をメインにした家づくりにはまた挑戦したいですね」と柱への熱い思いを語ってくださいました。

柱を大切に、自然を大切にした縄文人

大松さんのお話を伺い、ふと、縄文人たちが暮らした竪穴式住居と、いま私たちが暮らす住まいとのつながりが気になり、東京都立埋蔵文化財調査センター「縄文の村」を訪ねました。

「竪穴式住居とは、地面を一定の深さに掘って柱を立て、上屋をつくって住居としたものです。穴の深さは大体50~60センチで、出入りにははしごを使います。直径はだいたい4メートルくらいで、柱をめぐらして中央に炉を置き、萱などで屋根を葺(ふ)いたものが基本的な形です」と教えてくれたのは、東京都埋蔵文化財センターの松崎元樹さん。

【画像4】復元した竪穴式住居。週に何度か火を焚いて維持管理をしています(東京都教育委員会所蔵)

【画像4】復元した竪穴式住居。週に何度か火を焚いて維持管理をしています(東京都教育委員会所蔵)

縄文時代の竪穴式住居や縄文人の暮らしから、現代につながる何かを見つけることはできるでしょうか。

「難しい質問ですが、住居の床柱(大黒柱)を重視する傾向は、縄文的な発想だと思います。柱が家の象徴、中心として建てられることは、縄文人にとって生活が成り立つことにつながります。そして、柱を大切にすることは、環境を大切にすることにつながっているでしょう。まっすぐで丈夫な柱を得るためには、森を育まねばなりません」(松崎さん)

日本の縄文時代は1万年以上続く農耕のない定住生活の時代です。これは海外では例の見られない驚異の世界であり、高く評価されています。縄文人は自然と上手に共生し、サスティナビリティの精神に富んだ人々だったのかもしれません。

お話をうかがったあとは、復元された竪穴式住居の中を見学。炉にともされた火によって暖かさと明るさが生まれ、住居を囲む柱の力強さと相まって、とても居心地のよい空間に感じられます。決して大きくはない住居の中に入ってみて、太い柱と火のありがたい存在感を感じ、縄文人が「住まう」ことに特別な思いを持っていたことを強く知らされました。

【画像5】竪穴式住居の内部。炉でぼうぼうと燃える焔(ほのお)があざやかです(東京都教育委員会所蔵)

【画像5】竪穴式住居の内部。炉でぼうぼうと燃える焔(ほのお)があざやかです(東京都教育委員会所蔵)

竪穴式住居の精神を受け継ぐ四本柱の住居と縄文の村の竪穴式住居の2カ所を訪ねて、柱の大切さと生活に根ざしたぬくもりにも気づかされました。住まいを支える柱、その中心にある炉やリビング。縄文時代に定住を始めた私たちの祖先がつくった住居は、形を変えながらもその基本や心は変わらず、現在の私たちの住居にも連綿と受け継がれてきているといえます。いま住んでいる部屋の柱は、壁などで隠れてしまっているかもしれませんが、いま一度その意味を考え直してみると、住まいの見方がかわってくるかもしれません。

●取材協力
・大松俊紀アトリエ
・東京都立埋蔵文化財調査センター 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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この記事のライター

SUUMO

『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。

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