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今、無個性なマンションを、スタイリッシュで個性的なオンリーワン空間に生まれ変わらせるリノベーションが人気です。でも、見た目や雰囲気だけでなく、リノベーションの際には居住性能こそしっかり考えたいもの。築古マンションでも、「通風・断熱・採光・動線」を見直すことで、暮らしやすさが格段に向上するからです。どんな観点でリノベーションを考えればいいのか、ポイントを調べました。
居住性能を高めるには、空間をつなげる間取り変更&断熱化がポイント
築30年以上など築古のマンションは、新築マンションに比べて断熱性や換気性能が低い家が見られます。その理由は、断熱基準が現在よりも低かったことや、24時間換気システムなどの住戸内の全体的な換気設備がないため。また、部屋数を重視した画一的な間取りによって、通風や採光の確保が不十分であることなどが考えられます。
では、こうした居住性能の低いマンションを暮らしやすくするにはどうしたらいいのでしょうか。マンションリノベーションを数多く手掛ける「三井のリフォーム」でお馴染み、三井不動産リフォーム株式会社・設計推進部長の池田邦彦さんにお話を伺いました。
「マンションリノベーションで一番のご要望は水まわり設備や内装を新しくしたいということですが、居住性能に関するご相談もかなり多くいただきます。特に『結露がひどい・風通しが悪い・暗いので改善したい』というお悩みが多いですね。居住性能を改善するには、通風・断熱・採光・動線を考えることがポイントです。具体的には、『風も光も入る行き止まりのない間取りに変更する』『窓と外壁の内側を断熱化する』ことを行います」と池田さん。
下図は同社が手掛けたマンションリノベーションの一例で、「北参道モデルルーム」として公開されている住戸です。この部屋を参考にしながら、リノベーションのポイントを見ていきましょう。
【居住性能アップのポイント1】空間をつなげて「風と光の道」を生む●空間を分断しないよう「縦ライン」で間取りを考える
部屋が細かく仕切られたマンションは風の抜けが悪く、光の届かない場所も生じます。古いマンションでは24時間換気や各空間に給気口が完備されていないことが多いため、空気の流れが滞って熱・湿気・臭いなどが籠もってしまいます。それを解消するには、空間をつなげて風と光が届く間取りに変えることがポイント。間取りを全て見直す、いわゆる「スケルトンリフォーム」(設備や内装、間仕切りを全て取払う)を行います。
「『窓などの共用部は変えられない』『水まわり空間を移動するのは排水管の勾配を取れる範囲まで』など、マンションリノベーションには制約があります。しかしそれらを考慮しつつ、日当たり、風の流れ、機能的な生活動線などを考え抜いたプランにすることによって、快適な居住空間に変えることができます。マンション住戸は長方形であることが多く、奥まで風と光を呼ぶためには、収納をウォークスルーにするなど、間取りを南~北などの『縦ライン』で考え、空間が分断されないよう、行き止まりのないプランを考えるのが一番のポイントですね」と池田さん。
「北参道モデルルーム」(上間取図参照)では、2LDKを1LDKに変え、『玄関→ウォークスルークローゼット→寝室→リビング→キッチン→洗面室→廊下』とつながる回遊間取りにしたことで、風が個々の空間へ通るようになりました。
●通風建具や室内窓で奥側にも光と風を呼ぶ
「窓のない空間は、建具をルーバー扉など通風タイプのものを選び、ドア上や壁に欄間やスリット窓を設ければ、ドアを閉めていても光と風を取り込めます。また、室内窓やガラス窓付きの室内ドアを用いれば、奥まで光を呼び込めます」(池田さん、以下同)
●窓の断熱化=内窓を付けて、熱気&冷気の侵入を防ぐ
「築古のマンションの窓は、断熱性の低いシングルガラス+アルミサッシというケースが多く、冷気・熱気ともに、ガラスやアルミを通じて室内に入ってきます。だから窓を断熱化することが大切です。その際、注意したいのが、サッシは建物の共用部なので自由に変えられないことです。そのため、マンションでは内窓を付けることが一般的。内窓の設置は比較的低コストで、窓が二重になるので断熱性能はかなり高まります。また、窓の形状によっては内窓を付けられない場合もありますが、基本的には全ての窓を断熱化するのがお勧めです。断熱化しない窓があると、その部屋だけ寒く、結露が生じ、住戸全体の冷暖房効率も妨げてしまうからです」
「マンション管理規約の規定によっては条件次第で断熱サッシ(サッシ+Low-E複層ガラス)への交換や、ガラスのみをLow-E複層ガラスへ交換することが可能な場合もあります。サッシを交換するといっても窓枠部分は取り外せないので、既存窓枠に新規のサッシをはめ込む『カバー工法』という工事を行います。また、ガラスのみを交換する場合、複層ガラスにするとガラスの厚みが増すため網戸にぶつかってしまう場合があるので、注意が必要です」
内窓設置や複層ガラスへ交換することで遮音性も高まるので、大通りや線路が近いなど、周囲の音が気になるマンションなら、音環境の改善にもつながります。
●断熱施工で、壁を伝ってくる冷気・熱気を断つ
「通常、マンションの外壁や最上階住戸の天井には断熱材が充填されていますが、古いマンションでは断熱材の性能が低いタイプが使われていたり、そもそも断熱材がなかったりという建物も見られます。断熱材がないと、コンクリートから伝わる屋外の冷気や熱気が遮られず、冬寒く・夏暑いという環境になります。冬は屋内外の気温差で結露が生じて、特に北側の部屋では壁紙にカビがビッシリという現場もよく目にします」
コンクリートは熱を蓄える素材で、熱をじわじわと放出していくので、夏は夜になっても室内が暑いままで寝苦しく、逆に、一度冷えたコンクリートは温まりにくく、冬は冷えきったコンクリートからの冷気が伝わってしまうというやっかいな特性をもちます。コンクリートの内側を断熱施工すれば室温がコントロールしやすくなります。窓から入る風で室内を涼しく保てたり、少しの冷暖房で快適な室温にできたりします。現に北参道モデルルームでは、エアコン1台のみで夏も冬も十分だそうです。
「特に角部屋や最上階の住戸はきちんと断熱を考えたいですね。また、柱や梁は『熱橋部』といって特に熱が伝わりやすい箇所。気密性が高い吹き付けタイプの断熱材を選ぶとよいと思います」
リノベーションとは建物の性能を向上させ、その住まいの価値を高めること。北参道モデルルームを見学し、お話を伺って、築30年オーバーの建物でも快適に暮らせる住空間に変えることができるのは、設計の工夫次第なのだと感じました。
最後に池田さんはリノベーションが持つ力について語ってくれました。
「『マンションでは断熱や通風などの居住性能、基本性能を高めることはできない』と思っているお客様は多いです。しかし、一戸建てに比べて制約はあるものの、快適な住まいに変えることが可能です。さまざまな工夫でリノベーションされたマンションは、ライフスタイルや家族状況に合わせた特注品のようなもの。条件次第では新築マンション以上の暮らしやすさを手に入れることができます。お客様から『とても快適で毎日の暮らしががらっと変わった』というお声をたくさん頂いています」
築古マンションに住んでいる人、これから中古マンションの購入を予定している人は、マンションの居住性能を高めるリノベーションで、快適な暮らしが送れる空間を特注してみませんか。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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