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山道を走るトレイルランニング、通称”トレラン”が趣味の村田諒さん。日本だけでなく海外のレースでも、何度も表彰台に上がった経験のある筋金入りのトレイルランナーだ。結婚を機に、新居を構える街として選んだのが「高尾」(東京都八王子市)。長年テレワークをしていたからこそ実現できた暮らしについてインタビューした。連載【職住融合 ~テレワークが変えた暮らし~】
時間や場所にとらわれない柔軟な働き方、テレワーク(リモートワーク)が普及し、暮らし方も多様化しています。自宅の一部をオフィス仕様にする「家なかオフィス化」や、街の中で仕事する「街なかオフィス化」、そして通勤に縛られない「街選びの自由化」など。SUUMOではテレワークを前提とした家選びや街選びの潮流を「職住融合」と名付け、その暮らしをシリーズで紹介していきます。トレランの恰好の練習場所になる高尾に住み替え
ベンチャー系企業のマーケティング職につく諒さんは、3年前からずっとテレワーカー。妻の美保さんは別会社のテレワーカーだ。2人が高尾で暮らし始めたのは約2年前。結婚当初は一人暮らしの諒さんの部屋で暮らしていたが、「さすがに狭い」と二人暮らし用の物件への住み替えを考えたのがきっかけだ。
「当初は、当時住んでいた世田谷区で探していたんですよ。でも2LDKなら20万円以上もする。都内にいなければいけない理由がないのに、これはもったいないと思い、”高尾ってどう? ”と妻に提案しました。もともとトレランの練習で、高尾周辺を走ったことがあり、コースバリエーションが豊富で毎日走っても飽きがこない。日常生活の拠点にできるイメージも湧きました。僕も妻も通勤の必要はないし、高尾なら東京都心に出る のも週に1度なら楽ですから」(諒さん)
妻の美保さんは、「え、高尾? って最初は思いました。もともと海派だった私としては、同じ郊外でも鎌倉や湘南とかのほうがいいなって思っていたんです」と当初は困惑したという。しかし、高尾の家賃の安さを知り、賛成。「2LDKで10万円を切る。当初予定した予算よりも10万円も安いし、単純計算して1年で120万円も浮く。その分、海外旅行にお金を使えると考えれば、むしろ高尾がいいかもしれないという話になりました」(美保さん)。
高尾という恰好の「トレーニング場所」を得た村田さん。平日は早朝1、2時間走ってから仕事に取り掛かるのが日課に。走っているのは、近くの河川敷や高尾山の南北に位置する南高尾山稜と北高尾山稜。いつも多くの登山客でにぎわう高尾山と尾根ひとつ違うだけで、登る人は少ない、静かな穴場だ。「平日は山にほとんど人がいないのでとても快適です。時には、自分と同じく高尾に引越してきたトレイルランナーと一緒に走ることもあります」(諒さん)
高尾は起伏の大きい地形のため、坂道や階段も多く、こうした場所もちょっとした練習になる。世田谷で暮らしていたころは、主に休日のみだったトレイルでのトレーニングも、高尾では日課になり、その結果、確実にレースの成績が良くなったそう。「最近では表彰台に上がることも増え、優勝することもできました」
暮らしてみると、「思っていた以上に高尾は便利だった」と実感しているお二人。駅近くにはショッピングセンター「イーアス高尾」、住まいの近くには「イトーヨーカドー」もあるなど商業施設が充実。しかも、京王線と中央線の2線を利用でき、中央線は 始発駅になるので、都心に用事があるときは必ず座ることができる。「仕事が忙しいときは、車内でPC広げて仕事をすることも。それに、立川や八王子駅まで行けば、都心まで行かなくても、ほぼすべて用事がすんでしまいます」
テレワークだからこそ効率的な仕事ができる現在、夫の諒さんは、「リモートワークを当たり前にする」をミッションに掲げる企業「キャスター」の執行役員、妻の美保さんは、PRコンサルティング会社の「ディアメディア」で、週に2回正社員としてテレワーク、それ以外はフリーランスで編集・ライティングなどを行っている。二人とも、ほぼ毎日自宅でテレワークだ。「だいたい9時~10時から始業して、18~19時まで仕事をするという感じでしょうか。そのあとは、急ぎの用件によっては対応することもあります。コミュニケーションは主にチャットやテレビ会議で。1日に7、8件打ち合わせが入ることがありますが、すべてオンライン。これが全部対面だったら、けっこう大変だなぁと思います」(諒さん)
新型コロナウィルスの影響に伴い、注目を集めるテレワーク。ただし、なかなか浸透しないのも実情だ。
「セキュリティ面で心配という声はよく聞きます。ウチでは、パソコンは会社付与。アクセスの権限は役割に応じて細かく分かれているなど、セキュリティ面は対処しています。もともとリモートを前提としたシステムなこともありますが、やはり、トップの意識判断によるところが大きいのではないでしょうか。在宅だと、さぼるのでは?と思われがちですが、出社=仕事ではありません。リモートであってもなくても 、基本的に成果主義ですし、仕事ぶりは意外と一目瞭然なんです」(諒さん)
部屋が広くなって、おうちオフィスはより快適空間にただし、以前、世田谷で一人暮らしだったときは、自宅に快適な仕事環境がつくれなかったので週に2度以上は会社に出勤し、クライアントのオフィスまで向かうことも多かったそうだ。「まず、リモートワークについて当時は今以上に浸透していなかった 時期だったというのもありますが、それよりも自宅環境の影響が大きかったです。リモートワークでは1日の多くの時間を自宅で過ごすため、部屋をいかに快適な状態にできるかはとても重要ですね」(諒さん)
高尾で暮らし始め、部屋が広くなった分、DIYが本格化。「自宅近くのホームセンターでいろいろ買い込みました」(諒さん)
テレワークによって自炊率も上がった。「家の周囲に飲食店が少ないというのもありますが、せっかく自宅で食事をするならと、つくるものにもこだわるようになり、ヴィーガン(卵を含む動物性食品を口にしない)食を取り入れています。外食も含めてヴィーガンにするのは大変だけど、家でゆるくなら楽しく続けられる。そのぶん外食では、お肉もお魚も気にせずに楽しんでいます」(美保さん)
「好きな時に好きな場所で暮らしたい」海外でのテレワークも実践。家賃が浮いた分、さらに海外旅行を楽しむ二人。ハワイ、タイ、スペイン、マルタ、マレーシアなど、観光やレース参加を目的に、去年の海外渡航はなんと6回。特にタイでは1カ月間暮らすように旅をした。「実はタイでもリモートワークをしていました。仕事相手にとっては私たちが高尾にいても海外にいてもあまり変わりませんから。ネット環境さえあれば仕事ができました。時差は2時間なので日本時間の18時は、バンコクの16時。早朝から仕事して、夜は外にご飯を食べに行ったり、長めにジムでトレーニングしたり、時差を活かした生活をしていました」(諒さん)
今後、住まいの購入は今のところ考えていないという。「海外に暮らすことだってあるかもしれないし、身軽でいたいんです」
好きな時に好きな場所で暮らす。固定でかかる住居費にお金をかけたくない二人にとって、テレワークは、それを可能にする働き方、暮らし方といえそうだ。
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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