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前回、賃貸物件では犬よりも猫のほうが飼育NGとなっているということをお伝えしましたが、その理由と回避方法、そして賃貸物件の大家さんの事情についてお伝えします。●連載「猫と暮らす住まいの理想と現実」
以前に比べてペットOKな集合住宅が増えてきましたが、実は犬より猫のほうが禁止されていることが多い。猫には猫の習性や飼育方法があり、それらを理解して適切に対応すれば、人と猫がともに幸せに暮らせる住まいが、もっとたくさんつくれるはず。ニッセイ基礎研究所で長年不動産マーケット調査にたずさわってきたアナリスト目線と個人的に猫が好きで積極的に里親にもなってきた猫好き目線をもつ筆者が、5回にわたって「猫と住まい」の「理想と現実」についてお伝えします。
●連載記事一覧
・ペット飼育OKなのに「猫」はNG、の賃貸住宅
・大家さんの大いなる誤解、猫が賃貸で嫌われる理由とは
・脱走名人の猫、この習性を知らない業界関係者が多すぎる
・猫OK、ペットOKは賃貸住宅の付加価値になる
・猫にとっての「理想の住まい」に欠かせないものとは猫が飼育NGの理由は「爪とぎ」「オシッコのにおい」など
賃貸住宅で猫の飼育可物件が少ない大きな理由は、猫の習性や飼育について誤解している大家さんが多いことだと思います。犬はオーケーでも猫はダメという大家さんに理由を聞くと、だいたい次のような答えが返ってきます。
曰く、猫の爪とぎでふすまや障子、畳、床、ドア、壁紙がボロボロになる、放し飼いをする人が多いので近隣住民とのトラブルになりやすい、オシッコの臭いがきつい、発情期に気味の悪い声で鳴く、2頭以上いれば夜中に大運動会(要するに室内での追いかけっこ)をするので他の住人に迷惑、などです。
もちろん、過去にルーズな住人が内緒で野良猫を出入りさせて部屋をボロボロにし、近隣にも迷惑をかけたうえ、退去や修繕費の支払いなどでもトラブルになったような苦い経験があれば、猫の飼育に不寛容になってしまうのはやむをえないとは思います。
しかし、アパートや賃貸マンションでは、ふすまや畳、壁紙などは傷が付かなくても古くなったら取り替えるのが一般的なルールですから、ペット飼育可としたうえでどうしても不安なら、猫の飼育の場合は敷金を多めに取るとか、修繕についてあらかじめ契約をきちんと決めておくなどすれば大きな問題はないのではないでしょうか。
条件をつければ、猫トラブルはずいぶん回避できるまた、猫は犬より尿の臭いがきついといわれますが、基本的に綺麗好きでトイレはいつも決まった場所でするので、驚いて失禁したり病気だったりしない限り、他の場所でお漏らしするようなことはほとんどありません。トイレに消臭効果のある砂を使い、こまめに掃除や換気をすれば近隣住人は気にならないと思われます。不妊去勢手術を入居の条件にすれば、発情期にオシッコを飛ばすスプレー行為や鳴き声、オス同士のケンカはずいぶん抑制できるはずですし、どんどん増えてしまうことによるトラブルも防げるでしょう。
犬は飼い主が外出すると寂しくてよく鳴きますが、猫は留守番していてもほとんど鳴かない、基本的に静かな動物です。NPO法人東京キャットガーディアンの保護猫カフェに行ってみると分かりますが、給餌タイムは別として、たくさんいるはずの猫たちの鳴き声はほとんど聞こえてきません。糞尿や鳴き声などによる近隣トラブルは、完全室内飼いを入居の条件にすればずいぶん回避できると思われます。
そもそも古いアパートなどは、地主の節税目的で建てられた低コスト・低品質の建物が多く、部屋の壁は薄くて窓の防音性能も低いため、ペットがいなくても隣人や近隣との騒音トラブルが発生しがちです。また、もともとペット飼育を想定した内装や契約内容、管理ではないので、面倒なことを嫌う保守的な大家さんが、ペット飼育不可としたがる理由も理解できなくはありません。
さらに、これまでは犬に比べて猫を飼っている世帯が少なかったので、犬の飼育は身近に感じても、猫の飼育経験がなければ猫独特の習性などはよく分かりませんし、昔ながらの室内と屋外を自由に行き来する猫の飼い方しかイメージできない大家さんも多いのだと思います。
競争が激しくなっていく賃貸マーケットで、猫OKは差別化になるはずなのにこのように、猫飼育不可の賃貸住宅が多いのは、過去の市場慣習や、猫の飼育に対する先入観に囚われている大家さんに多少なりとも原因があるといえるでしょう。
しかし、少子高齢化などで競争が激しくなっている賃貸住宅マーケットを展望すれば、猫が飼える住宅であることを売り物(付加価値)にして顧客に訴えよう、他の競合物件との差別ポイントにしよう、という発想が大家さんから出てこないのが不思議です。
これには、不動産を利用する相続税対策の影響が大きいと思われます。相続課税で財産を評価する際、土地や建物は現金や預貯金より低く評価され、建物を賃貸していれば評価額はさらに下がります。このため、相続税対策としてアパートや賃貸マンションを建てる地主(大家さん)が多いのです。
賃貸住宅経営が本来の目的ではないので、マーケット動向にも関心が低く、空き室が徐々に増えていても、そこそこ入居者がいて銀行への借入金返済に滞りがなければ問題ないという感覚になってしまいます。
そんな大家さんが、愛猫家のために内装や管理のあり方をわざわざ見直すことは考えにくいです。特に、経営を不動産管理会社などに任せてしまうサブリース(転貸)方式では、所有と経営が完全に別になるので、大家さんに経営感覚を求めること自体無理な話かもしれません。次回は、大家さんのほかに不動産会社・建築関係者の理解も不足していることについて触れます。
※次回は2015年11月4日(水)の予定です
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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