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和室のない家が増えたけれど、「寝室にはベッド」ではなく布団派も少なくない。でも気になるのが、寝心地やカビ、そして布団の収納場所……。そこでフローリングで快適に眠るための敷き布団選び、湿気対策、収納術を探ってみた。
畳とフローリング、寝心地の違いはほとんどなかった!
筆者もフローリングで布団派の一人。住宅事情もあるけれど、場所を占有しない布団の軽快さが気に入っている。ただ「洋室=ベッド、和室=布団」の固定観念があり、「洋室に布団を敷いて寝ています」と人に話すのは何となく恥ずかしいと感じてしまう。寝心地に満足できないのは、もしかしたらフローリングのせい? なんて不安もある。
そんなモヤモヤを解決しようと訪ねたのは、布団・寝具の老舗メーカー、東京西川。スリープマスターの速水美智子さんが質問に答えてくれた。スリープマスターとは、東京西川の社内資格のひとつで、寝具はもちろん、睡眠環境や生体リズム、人間工学についてまで、幅広い知識をもつ睡眠のスペシャリストだ。まずは、畳と比べた場合、寝心地に違いはあるのか聞いてみた。
「ほとんど違いはありません。素材の特性として畳には湿気を吸う力が少しありますが、違いはわずか。寝心地にもとくに影響はありません。厚みが5cm以上あるような一般的な敷き布団で寝るのであれば、差を感じる方は少ないと思います」(速水さん)
寝心地に差がないとは意外! おまけにフローリングでも畳でも、敷き布団の選び方は変わらないという。それならと、敷き布団選びの基本をレクチャーしてもらった。
敷き布団は自分に合う硬さを実際に試して選ぶ「敷き布団の役割は、人間の体を支えることがメイン。理想の寝姿勢は、まっすぐ立ったときの自然な姿勢を倒した状態といわれ、凹凸のある人間の体を自然な形でキープすることが大切です。それには『寝姿勢保持』と『体圧分散』の2つがポイントになります」
人間は腰臀部(ようでんぶ)が一番重いので、柔らかすぎる布団に寝ると腰からお尻あたりが沈み込んで“く”の字のような姿勢になり、腰痛などにつながってしまう。正しい寝姿勢を保つために、重い部分をしっかりと支える土台が必要だという。
一方、硬すぎる敷き布団で寝ると、肩や腰など凸部分だけで体を支えることになり、凹んだ部分は浮いている状態に。腰などに集中的に圧がかかるため、血流が滞り、しびれの原因になることも。寝がえりの回数が増えて、眠りを妨げられることにもつながるそうだ。
柔らかすぎると寝姿勢が保てず、硬すぎると体圧が分散しない。いったいどんな布団だったら、相反する2つの条件をかなえられるのだろう?
「土台に硬めのマットレスを敷き、その上にクッション性のある柔らかいものを敷くのもおすすめです。また、最近は2つの役割を1枚でかなえられるものがいろいろ出てきています」とのこと。
収納面を考えても、敷き布団は2枚より1枚がダンゼンいい。試してみる価値はありそうだ。ただ、店頭でちょっと寝てみただけで寝心地の良し悪しを判断するのは難しい。
「人によってちょうどいい硬さは違うので、店頭のベッドで実際に寝てみることは大事です。横を向いたり、寝返りを打ったり、いろいろな姿勢を試してください。寝具店に行けばプロの販売員がいますから、寝姿勢をチェックしてもらうといいでしょう」(速水さん)
湿気対策は手軽な除湿シートやパッドシーツを活用次は、湿気対策をマスターしたい。恥ずかしながら筆者は過去に、布団を敷きっぱなしにしてフローリングにシミをつくってしまったことがある。当然ながら、敷きっぱなし、置きっぱなしはご法度、ですよね?
「そのとおりです。敷きっぱなしではなく、せめて立てかけたほうがいいですね。押入れやクローゼットにしまうときも、すのこなどを使って通気をよくするといいでしょう。
湿気を逃がすお手入れ方法は素材によって違います。昔ながらの綿の敷き布団は、吸湿性はあるものの放湿性が乏しく、こまめな天日干しが欠かせません。ウール混の敷き布団は、吸放湿性に優れ、綿より湿気がたまりにくいですが、やはり天日干しは必要です。
ウレタンの敷き布団は、天日干しができないので、風通しの良いところで日陰干しをしましょう。外に干さない場合でも、敷きっぱなしはカビなどの原因になるので、こまめに壁に立てかけて裏面に風を当てるようにしましょう」(速水さん)
こまめに天日干しをするのはムリという人も多いはず。手軽にできる湿気対策はないだろうか?
「敷き布団の下に除湿シートを敷くのがおすすめです。吸湿力に優れ、天日に干してたまった湿気を逃がせば繰り返し使えます。また、敷き布団の上にパッドシーツを使うと、ダイレクトに汗がしみ込むのを防ぐことができます。洗えるものがほとんどで取り替えも簡単です」(速水さん)
どちらもパラッと一枚敷くだけで、折りたためて収納や干すのがラクなのもいい。ただし、除湿シートは敷き布団の下に落ちた湿気は吸い取るが、敷き布団の中にたまった湿気を吸い取ることができない。特に綿の敷き布団は、できるだけ天日干しを心がけたほうがいいそうだ。
クローゼットへの収納は工夫次第。あえてしまわない選択も最後に、収納の問題を解決したい。洋室には押入れのような奥行きのある収納が少なく、クローゼットに入らないからと布団を出しっぱなしの人も多いと思う。クローゼットにもしまいやすい布団や、上手な収納方法はないだろうか。整理収納のエキスパート、すはらひろこさんにアドバイスしてもらった。
「従来の和布団(綿の布団)ではなく羊毛や羽毛布団を使っている家庭が多いと思います。その場合には4つ折りにたたむことで、押入れよりも奥行きの浅いクローゼットにもしまうことができます。また、4つ折りにできるマットレスもあります。キャスターのついた布団用のワゴンを使うと毎日の出し入れがラクです」
「ただ、布団をしまうために衣類の収納スペースを使うので、そのぶんだけ衣類を減らして調整する必要があります」とすはらさん。布団はしまえたけれど、衣類が外に出てしまったら意味がない。無理やりクローゼットにしまうのではなく、出したまま見た目よく管理する手もあるだろう。
「出したままにするなら、カビ、ダニ、ほこり対策のために、布団にこもった湿気を取り除き、床掃除のしやすい道具を使うのがおすすめです。例えば、すのこのボードを逆V字にして、室内で干しながら片づける方法があります。道具を使わない場合はたたんだ状態にして、布をかぶせて目隠しをするといいでしょう」
布団はもちろん、湿気対策グッズや収納用品も便利なものがいろいろ出ている。積極的に取り入れれば、私たちの「フローリングで布団生活」はもっと快適になりそうだ。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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