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新型コロナウイルス感染症の影響で自転車通勤が増えているようです。同時に、自転車利用の増加による通勤中の労災も話題になっています。
それでは、たとえばアルバイトに行く途中の事故は労災の対象になるのでしょうか?今回の記事では、労災の加入条件や加入対象者を中心に、労災保険制度の仕組みや加入手続きなどを解説します。
「労働基準法」では、労働者が仕事中にケガをしたり、仕事がもとで病気になった場合、使用者に補償の義務を負わせています。
しかし、大事故で補償金額が大きくなった場合など、使用者が補償金を支払えないという事態を防ぐために設けられたのが労災保険制度(正式には「労働者災害補償保険法」)です。
労災保険制度とは、会社員などの労働者が仕事中や通勤の途中にケガや病気になったり、死亡したりした場合に、労働者や遺族を保護するために労働災害保険給付を行う制度です。保険料は全額会社が負担し、保険給付は国が行います。
労災保険の支給要件は、ケガや病気の原因となる災害が「業務災害」または「通勤災害」に該当することです。「業務災害」または「通勤災害」に該当すれば、労災認定されて保険給付が行われます。
業務災害と通勤災害
業務災害
・仕事中の事故や業務が原因の病気などが対象。
・「災害と業務との因果関係」が認定のポイント。
・仕事の準備、後始末のときや出張中の事故も対象。
通勤災害
・会社への通勤中の事故が対象。
・通勤が「合理的な経路と方法」で行われているかが認定のポイント。
・帰りに飲みに行ったりした場合(中断)は対象にならない。
https://manetasu.jp/1279044
労災保険の保険金は、業務災害や通勤災害による治療、休業、障害、死亡、介護などに対して給付されます。主な給付内容は下記のとおりです。
労災保険の給付内容
給付名
給付内容
療養(補償)給付
傷病の治療に対し必要な療養を給付
休業(補償)給付
傷病で休業する場合に休業4日目から給付 ※傷病(補償)年金の給付開始まで給付
障害(補償)給付
傷病の治癒後に所定の障害が残ったときに年金または一時金を給付
遺族(補償)給付
傷病により死亡したときに、遺族に対し年金または一時金を給付
葬祭料・葬祭給付
傷病により死亡したときに葬儀を行った人に給付
傷病(補償)年金
療養開始後1年6か月経過して傷病が治癒せず、所定の障害状態にあるときに年金を給付
介護(補償)給付
障害(補償)給付または傷病(補償)年金の受給者で、所定の障害状態にあり介護を受けているときに給付
二次健康診断等給付
会社の定期健康診断で所定の異常の所見があるときに二次健康診断、特定保健診指導を給付
※給付の名称について、業務災害で支給されるものは「補償」という言葉が入ります。たとえば、業務災害では休業補償給付、通勤災害では休業給付という名称になります。
従業員を雇っている事業主は、必ず労災保険に加入することが義務づけられています。また、会社に雇われているすべての従業員が労災保険の対象となります。
労災保険法では「労働者を使用する事業を適用事業とする」と定められています。適用事業とは労災保険法が適用される事業のことです。
つまり、従業員を1人でも雇っている事業所は、労災保険に加入する義務があるのです。開業したばかりで従業員の少ないところでは労災保険の加入手続きをしていないケースもありますので、念のため確認しておきましょう。
ただし、下記の事業所や従業員は「適用除外」とされ労災保険は適用されません。
「適用除外」の事業
官公署
(国や地方公共団体の機関)
国家(地方)公務員災害補償法が適用される。
行政執行法人
独立行政法人国立印刷局、独立行政法人造幣局など
(国家公務員と同様の扱い)
また、小規模(個人経営、従業員数5名未満など)の農林水産事業は「暫定任意適用事業」として、労災保険の加入は事業主または労働者の過半数の意思に任されています。
労災保険の加入対象になるのは、会社に雇われているすべての労働者です。正社員だけでなく、パート、アルバイト、日雇など雇用形態を問わず加入対象となります。派遣労働者も同様で、派遣元の事業所で労災保険に加入することになります。
パート中のケガで治療や休業したのに会社から労災の話が出ない場合は、会社に労災適用されないかを確認しましょう。「労災かくし」という言葉があるように、一部の会社では労災を申請したがらないケースもあります。
しかし、下記に該当する場合は「雇われている」状態ではないため、労災保険の対象にはなりません。
事業主
代表権や業務執行権を持つ役員
請負で仕事している人(個人事業主となる)
労災保険と雇用保険は、どちらも労働者を保護することを目的とした国の給付制度で、両制度を合わせて「労働保険」と呼びます。労働者保護という目的は共通ですが、加入対象者や保険給付の対象などは異なります。
雇用保険は、失業や休業した場合の「労働者の生活と雇用の安定」を図ることを目的に設けられた制度です。「失業保険」と呼ばれることもありますが、失業した場合のほか、育児や介護で休業せざるを得ない場合にも給付金が支給されます。主な給付内容は、下記のとおりです。
雇用保険の給付内容
求職者給付
「失業保険(基本手当)」給付のほか、公共職業訓練受講を支援する「技能習得手当」の給付など
就職促進給付
「再就職手当」や「求職活動支援費」の給付など
教育訓練給付
就職中の加入者に対する所定の教育訓練の費用の給付など
雇用継続給付
・再雇用で給与の下がった高齢者に対する「高年齢雇用継続給付金」
・育児休業で給与が出ない人に対する「育児休業給付金」
・介護休業で給与が出ない人に対する「介護休業給付金」など
「労災保険」は業務災害や通勤災害によって労働者がケガや休業した場合などに、「雇用保険」は労働者が失業した場合などに保険給付を行います。保険給付の対象以外にも、下記の点で違いがあります。
労災保険と雇用保険の相違点
労災保険
雇用保険
加入対象
すべての労働者
1週間の労働時間が20時間以上、かつ、31日以上継続して雇用されることが見込まれる者
保険料の負担
事業主が全額負担
事業主と労働者
給付の対象
業務災害や通勤災害によるケガ・病気・死亡など
失業や育児・介護による休業など
給付の請求先
労働基準監督署
公共職業安定所(ハローワーク)
https://manetasu.jp/1277187
従業員を1人でも雇い入れたとき、事業主は労災保険に加入しなければなりません。加入手続きは、労働保険事務組合に委託する場合を除き、所轄の労働基準監督署への「保険関係成立届」「概算保険料申告書」の提出と保険料納付です。
「保険関係成立届」は、従業員を1人でも雇い入れた日から10日以内に所轄の労働基準監督署へ提出しなければいけません。保険関係は、初めての従業員を雇い入れた日から法律上当然に成立して、「保険関係成立届」により事後的に届出する形になります。
建設業や農林水産業などの一部の業種を除き、「保険関係成立届」の提出により労災保険と雇用保険の成立を同時に届出できます。
「概算保険料申告届」は保険関係成立した初年度の保険料納付のための申告書です。
労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、4月から翌年3月までの1年間の保険料見込額(概算保険料)を前払いで一括(または分割)で納付します。
保険料は下記のように労働者に支払う賃金総額と業種によって決まるため、1年間に支払う賃金総額の見込を使って計算します。
(労災保険料)=(賃金総額)×(労災保険率)
※労災保険率は業種ごとに2.5/1000から88/1000までの範囲で決まっています。
※労災事故の多い業種ほど労災保険率は高くなります。
2年目以降の労働保険料は、毎年6月1日から7月10日までの間に「概算・確定保険料申告書」を労働基準監督署に提出し、保険料を納付します。(※令和2年度の申告・納付は新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため8月末日まで延長。)
雇用保険と併せて、この手続きを「労働保険料の年度更新」といい、申告内容は次の2つです。
確定保険料の申告・精算
昨年度の実際の保険料(確定保険料)を計算・申告し、前年度に見込みで納付した概算保険料との差額を精算
概算保険料の申告
当年度の賃金総額の見込を計算し、概算保険料を申告
労災によってケガをしたり、4日以上休業したりする場合などは、所定の申請書により労働基準監督署長あてに労災申請を行います。療養した医療機関が労災保険指定医療機関の場合には、申請書を医療機関に提出すれば、医療機関を経由して労働基準監督署長に提出されます。
労災の申請には事業主の証明が必要ですが、事業主の協力が得られない場合は最寄りの労働基準監督署などに相談しましょう。
労災保険の保険金は、業務災害や通勤災害による治療、休業、障害、死亡、介護などに対して給付されます。労災保険はすべての事業に加入が義務付けられていて、パート・アルバイトを含むすべての労働者が加入対象となります。
初めての従業員を雇い入れた日から労災保険は法律上当然に成立し、事業主は10日以内に所轄の労働基準監督署へ「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を提出しなければならない点に注意しましょう。
この記事のライター
マネタス
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