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数年間空き家になっていた築31年の2階建て一軒家を借りて、家中の内装を自分好みに“プチリノベ”して暮らす女子がいる。足かけ4カ月、リノベ作業は今も進行中だ。持ち家ではなく賃貸で、プロの手を借りずにどうやって変身させるのか。DIYの工程をのぞかせてもらった。
“昭和感”ただようレトロな一軒家に住むことに
今回取材をしたのは、埼玉県郊外にある一軒家。築31年、3DKの2階建てだ。この家で4カ月前から賃貸暮らしをしているのは、カタオカマナミさん。数年前から仕事の一環として、この近くで地域に根差した農作業に携わっていたつながりで、3年間空き家になっていたこの物件を手ごろな価格で紹介してもらったのが始まりだという。
しかし、3年間人が住んでいなかった空き家は、お世辞にもキレイと言える状態ではなかったそうだ。
「最初に内見をしたときは、思っていた以上に年季が入っていて正直びっくりでしたね。キッチンやお風呂、トイレ、壁紙のクロスなどは、入居前に大家さんの好意でリフォームをしてくれて、住みやすくなりました。それでも築31年となると、家のあちらこちらに“昭和感”が残っていて……。そこで、大家さんには了解を得て、DIYで内装をプチリノベさせてもらうことになりました」(カタオカさん、以下同)
一戸建てということで部屋数も多く(1階はダイニングキッチンと和室1部屋、2階には洋室と和室が1部屋ずつ)、一見難易度が高そうにも思えるが、このレトロな雰囲気をどうやって自分好みに変身させようかと、入居時からワクワクしたそうだ。
これまでDIY経験はなかったというカタオカさん。どのように作業を始めていったのだろう?
「まずはダイニングキッチンの壁や天井の色を変える作業から始めました。市販の壁紙を貼り替えるだけで全然違う印象になるので、モチベーションも上がります。料理も好きなので、自分好みに変身したダイニングキッチンが今は家の中で一番居心地がいいんです」
築古物件ならではのレトロな建具や和室の特徴を活用したDIYをすることで、新しい物件にはないオリジナリティのある内装に仕上がるのが魅力的だと話してくれた。
DIY作業に密着!押入れスペースがおしゃれなパレットベッドに!?まとまった休みが取れる冬休みに作業を進めるということで、筆者もDIY作業に参加させてもらった。
今回体験したのは、2階にある6畳の洋室のDIY作業。大きな窓があって明るい雰囲気なので、白を基調としたゲストルームにする計画だそう。手つかずの状態だった洋室がどう変身していくのか、レポートしていこう。
1.押入れの扉を外し、木枠を白いペンキで塗る
使用したのは、近所のホームセンターで購入したという艶消しマット仕上げの白いペンキ。水性なのでペンキ特有の「嫌なにおい」もほとんどしなかった。厚塗りにしたくない場合は、水で濃さを調整できるというのも手軽だ。
※賃貸物件に手を加える場合は、原則としてオーナーもしくは管理会社の許可が必要。今回のケースでは大家さんの許可があるので、ペンキを塗装した部分の原状回復をする必要はない
2.天井と壁を白いペンキで塗る
つづいて、天井と壁の全面を白いペンキで塗装していく。
3.床材として白いクッションフロアを貼る
床材として使用したのは通販で仕入れた白いクッションフロア。部屋の大きさに応じてカッターで切り、専用の両面テープで簡単に貼ることができる。
4.木製パレットで「パレットベッド」を製作する
倉庫などで荷物を載せる際に使われる木製のパレット。DIY作業向けに1枚単位から購入できる通販サイトもあるそう。今回はこのパレットをベッドフレームに使用し、木製のパレットベッドを製作する。木の表面がささくれているとケガの原因にもなるので、表面を滑らかにするやすりがけ作業が必須だ。
5.木材と塩ビパイプで机を製作する
本来は給排水用として使われる「塩ビ管」や「塩ビパイプ」と呼ばれる建築資材。今回はこれを机の「脚」に使い、木材を組み合わせて机を製作した。ホームセンターで誰でも購入することができる。
完成したパレットベッドがこちら。
筆者がこの日体験できたのは、上記の1と2の作業。時間にして2時間ほどだった。
天井などにペンキを塗るのは初めてだったので、塗り始めは「失敗しないだろうか……」と恐る恐るスタートをしたのだが、やってみると実に楽しい!思い切って大胆に塗るほうがムラにもなりにくく、またどこかでチャレンジしてみたいと思う。
最後に、DIYグッズの購入方法や、今後の計画について聞いてみた。
――そもそも、DIY可能な賃貸築古物件をどうやって見つけたのですか?
「週末にこのあたりの地域で“都会から通える田舎づくり”の活動をしているのですが、特に田植えや稲刈りの時期などは頻繁に通わなくてはいけないため、都内から通うのに限界を感じていたんです。そこで知り合いの農家さんに部屋探しの相談をしていたら、親戚が住んでいた部屋が空いているということで紹介してもらいました」
「話を聞いたときは、1DKぐらいのアパートの一室かなと思っていたんですが、まさかの一戸建てで(笑)。あまり便利な立地ではないので借り手がつかず、3年間空き家のままで大家さんも諦めていたところに、私が立候補しました。DIYをどこまでやっていいかなどは、契約時に『外観の塗装はダメだけど、内装はあまり変な色でなければ大丈夫』と許可をもらいました」
――DIYの参考にする情報は、どうやって見つけているんですか?
「部屋のイメージに悩んだときや、何か新しいものの製作に入るときに参考にするのは、DIYのポータルサイトです。気に入ったイメージ写真を見つけたらクリップしておいて、ゆっくり悩みながら進めています。今作業中の2階の和室も、壁や天井を赤×白の配色にするか、赤×黒の配色にするか構想を練っているところです」
――DIYに使う材料の入手は、どうしているんですか?
「近所にあるホームセンターや通販サイト、100円ショップで買うことが多いですね。木材や塗料などは、初心者のうちはホームセンターで店員さんに聞きながら購入するのがおすすめです。軽トラックの貸し出しサービスをしている店舗も多いので、※ツーバイフォー(2×4)材など大きいものを購入しても安心ですよ」
※ツーバイフォー(2×4)材…ツーバイフォー工法の住宅に使用される木材
「壁紙や床材などは、通販サイトで購入することがほとんどです。色や素材もかなり豊富で、賃貸でも使える “貼ってはがせる”商品のラインナップも多いんです。でも、届いてみたら『思っていた色と違った…!』なんていう失敗もたまにあるので、返品ができるかどうかは確認したほうがいいですね」
――築古物件DIYならではの、難しいポイントなどはありましたか?
「生活面でもDIYの面でも困ったのは、コンセントがちょうどよい場所になく、数も足りないということですね。現代の生活では、充電したいものもたくさんあるので、家中のあちこちにコードが露出してしまうんです。見栄えも悪くなるので、100円ショップで購入した木箱でコンセントカバーを自作しておしゃれに隠したり、コードが見えないような工夫をしたり気をつかっています」
――今後のプチリノベ計画は、どんなイメージで考えていますか?
「今後の計画としては、まずは作業中の和室を完成させること。あとはトイレですね。トイレはリフォームされていてキレイなのですが、ちょっと殺風景なのでおしゃれに変身させたいと思っています。手洗いタンクの部分を木材で隠して、“なんちゃってタンクレストイレ”にできたらよいなと妄想中です」
退去時には元に戻すことを考えると、あまり大金をかけずに始めたい賃貸暮らしのDIY。「できるだけ安く、手軽に」という制約があるからこそ、工夫の余地があって楽しさが増すのかもしれない。今回のケースでは、大家さんの了承があったためペンキ塗りなど大掛かりな作業もできた珍しい事例だったが、初心者でもチャレンジできそうな点もたくさん見られた。賃貸でも、原状回復できる範囲であればDIYは可能。また、大家さんと直接交渉ができる場合は、可能性もさらに広がるはず。賃貸だからと諦めずに、「DIYは未経験!」という人は、ぜひ参考にしてみてはいかがだろう。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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