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40代の婚活は、ある意味20、30代のソレより面白い。婚活歴4年のOTONA SALONE編集長・アサミ(48歳)は、4年間で100人以上もの男性と出会ってきた。
婚活アプリで出会った59歳の会社役員・ロマンさん。マッチングから1カ月、ついに初デートとなったのだが──!? この話は40代独女の「実名 顔出し」で書いている、リアル婚活ドキュメントである。
美味しいスイーツを一緒に食べに行きましょうと誘われたのは、都内某ホテルのアフタヌーンティー。スイーツ好きなロマンさんがお気に入りのチーズケーキがあるという。
私もスイーツ好き(というか、食べることが好き?)かつ好奇心旺盛なので、行ったことのない場所へ行くだけでもワクワクとテンションが上がった。
待ち合わせの場所で、ロマンさんはすぐにわかった。遠目からの背格好も洋服も雰囲気も、婚活アプリの印象と変わらなかった。実は婚活アプリの写真って、リアルで会うと印象が違う人も少なくない。
しかし着席してみると、ちょっと違った。写真よりも細かくハッキリわかるので、深く刻まれたシワや肌や髪の質感にそれなりの加齢が出ている。おじいちゃんっぽいというか。59歳……まもなく還暦の年齢だから年相応なわけだけど。
逆にいえば自分だって、写真よりリアルのほうがシワなりシミなりが見えてしまうわけで、つまりお互い様。
しかし、これまでのメッセージの経緯から11歳年上には、「大人の余裕」を感じていたが、実際に目の前にしてみると「やっぱり還暦なんだ」という気持ちにもなった。もともと年上好きというわけでもないし、年齢差のある男性とお付き合いしたことがないので、なんとも言えない「年の差」感にちょっとした戸惑い。
しかし、何より気になったのはロマンさんの声だった。
ロマン「アサミさん、※△◆~#✕◯*ますか?」
ロマン「お口に合うといいですが※△◆~#✕◯*」
やや低音の声だから通らないせいなのか?
ゆったりとした座席なので距離があるからなのか?
周囲の席で弾んでいる会話の声が聞こえてくるからなのか?
それとも私が難聴なのか?
紅茶と、3段になったアフタヌーンティーのティースタンドが運ばれてきた。
スープやサンドイッチ、スコーンはもちろん、小さなケーキが何種類も並べられている。見るだけでテンションが上がる。あぁ、美味しそうなものを目の前にするだけで幸せだわ。
アサミ「ステキですね! 美味しそう」
ロマン「いただきましょうか」
気のせいだったかな、さっきロマンさんの声が聞き取れなかったのは。いまはちゃんと聞こえた。さっきはお店の中がちょっとザワザワしていたのかもしれない。
アサミ「ミニサイズのチーズケーキもありますね」
ロマン「1ピースは別のフロアのラウンジで食べられますよ」
アサミ「そうなんですね」
ロマン「スイーツ好きとおっしゃっていたから、いろいろ◯▲※✕◆」
あれ、また後半が聞き取れない。一瞬、まわりがにぎやかだったのかな? まぁ「いろいろ」のあとだから、「いろいろ食べられるといいかなと思って」的なニュアンスじゃないかしら。
アサミ「そうですね。ショートケーキもモンブランもシュークリームもティラミスも楽しめるなんて贅沢です」
なんとなく空気を呼んでで返事をしてしまった。

ロマンさんの声は、その後もところどころで聞こえなかった。
内容によってはさっきのようにロマンさんが言ったであろう言葉を推し測って会話を返したが、できないときもあった。
ロマン「アサミさんは、※△◆~#✕◯*▲※✕◆ですか?」
最初と最後しか聞こえない。
アサミ「すみません、もう一度言っていただけますか?」
ちょっと悪いかなと思いつつ、勇気を出してみた。
ロマン「アサミさんは、お仕事は◯*▲※✕◆ですか?」
「お仕事は」までは聞こえた。でもその後は聞き取れない。さすがに3度目をリクエストはしにくい。
仕事のことを聞かれているんだよな。仕事の内容のこと? 忙しいとかそうでもないとか? 何年やってるかとかキャリアの話? よくわかんないから全部答えてしまおう。
アサミ「出版社で編集の仕事をしています。忙しいといえば忙しいですが、25年間この仕事しかしていないので他と比べたことがないんです。残業もありますし土日に仕事をすることもあります。私にとってはこれが当たり前になってしまっているので、他の人と比べて忙しいとかはわからないんですけど、20代の頃からくらべたらだいぶ人間らしい生活になりました」
ロマンさんが尋ねるであろう質問に対して一気に答えてしまった。
ニコっと笑って
ロマン「そうですか」
と答えた。どれかわからないけれど、彼の質問に対して答えになっていたようだ。
その後の会話でも、ロマンさんの声はところどころ聞こえない。
あまりに聞こえないからロマンさんが話しているとき、耳を彼の正面に向けてみたりもした(つまり、顔を横に向けるわけだが)。
それでも、ロマンさんの声は聞き取りにくい。
ホテルのアフタヌーンティー、それなりに人はいるが、席と席の間はわりと離れているし、そもそもにぎやかなお客さんもいなかった。私の耳が難聴というわけでも、たぶんない。人間ドックでの聴力検査は正常だった。
ロマンさんと私の席間がちょっと遠いというのはあるけれど、理由はそうじゃない。
ロマンさんの声質の問題? 滑舌が悪い? 肺活量が異常に少ない? 入れ歯なの? わからないけれど、ただただ聞き取りにくい。
まるで、一言一句聞き漏らすまいとものすごく集中して取材するときのように、ロマンさんの声を聞いていた。
そのせいか、なんか疲れてきた……。
ロマンさんの声を一生懸命に聞こうと努力することにも、言葉を推し測ることにも、会話がつながるように考えて答えることにも。
疲れると私はすべてがめんどくさくなる。以前、婚活アドバイザーの先生にも、性格診断で「アサミさんは疲れると帰りたくなるから二次会に行くのが苦手なんです」と言われたことがある。
その通りですよ。もう帰りたい……。
相手の会話の声が聞こえないというのは、想像以上にストレスを感じることを初めて知ったのだった──。

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この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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