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住民経営マンションを取り上げる本連載の第7回では、「ブランズタワー文京小日向」を紹介する。茗荷谷駅から徒歩7分、有名大学をはじめ、学校が多く、充実した教育環境が整ったエリアに立地するマンションだ。
合意形成を促す決め手は、住民との“キャッチボール”
竣工から4年で、大規模修繕までまだ数年のゆとりがある。管理組合の仕事の難易度としては比較的低く、一般的にはともすれば“弛み”が出る時期かもしれない。しかし、だからこそ課題を積極的に見つけ、改善することが大切だと第4期理事長の宮崎氏は話す。
「例えば駐輪場です。当初自転車は各戸1台分の割り当てでしたが、想定よりも子どもの数が多いことなどから不足したため、利用率の低いバイク置場を転用しようということになったのです。そこで、更新後の駐輪場内のアクセス案や、駐輪場所の希望調査など、理事会からの問いかけを文書にまとめて各戸に配布しました。さらに住民の回答を集めて“駐輪場増設に関してこんな声が寄せられています”というレスポンスも開示。いわば理事会と住民でキャッチボールを行い、その過程も文書にして配布、公開したのです」
住民の暮らしにプラスになる提案でも、総会で合意が得られず却下される可能性もある。そこで理事会では、住民に納得してもらうため、各種の文書、アンケートを作成し、ルール決定や新施策決定までのプロセスを明らかにすることに。1年近く時間をかけて合意を促し、総会で駐輪台数の増設を承認してもらったという。
「丁寧なフローによって結果的に早く解決できました」(宮崎理事長)
また、マンションの大切な資産でもある、外構部の植栽についての取り組みも成果を収めている。
「低層部の壁面やエントランス前に緑を配しているのですが、タワーならではの風の強さや、日が差し込みづらい環境だったことからうまく成育しませんでした。そこで管理会社を通じて、施工会社に改善を要求してみたのです。実は瑕疵担保責任を果たすべき期間は既に切れていたのですが、竣工前に予見できなかった成育環境などの問題点を明確にして交渉したところ、育ちやすい品種への植え替え、自動灌水設備の導入をすべて無償で行ってもらえました」(花島監事)
無償対応とした施工会社の誠意も素晴らしいが、何より理事会と管理会社が協働して説得材料を準備し、折衝を試みたからこその結果だ。
「この先、大規模修繕に向けた資金計画など重要な課題が待っています。それをスムーズに進めるためにも目前の課題を着実に解消することが理事会に求められると思います」(宮崎理事長)
建築・住宅計画等を専門とする東京大学教授 大月敏雄氏が語る建築家の視点
物件が竣工し、管理組合が発足してもすぐに実務的な仕事は進められない場合が多い。しかしここでは、まだ築4年ながらアンケートでスマートに駐輪場不足の解消を実現。共用部の全照明をLEDに交換し、時間帯によって冷暖房を送風に切り替えて光熱費も削減した。植栽問題の無償対応も引き出しており、コスト意識が高い。一方で唯一の共用施設であるゲストルームの清掃に元ホテル従業員を充てるなど、“住民満足度”への配慮も見られる。資産価値の維持・向上に好影響をもたらすだろう。
隣接するマンションと合同で防災訓練を行う計画があるというのも良い話。防災に対する意識が高まるのもさることながら、住民同士の交流促進にも期待できる。
※この記事は『都心に住む』2017年11月号(9月26日発売)からの提供記事です
※管理組合のルールや方針は変更される場合があります
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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