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住人が自らの手で部屋をカスタマイズするセルフリノベーション。コストをあまりかけず、自由に住まい空間をつくる楽しさから注目を集めています。しかし、DIYビギナーにとってはまだまだハードルが高く、クオリティが今一つになってしまうことも。そこでオススメなのが、プロの大工さんの手を少しだけ借りる“半”セルフリノベーションです。今回は、実際に職人さんと協同でマンションリノベを試みた人気インテリアスタイリストの石井佳苗さんに、その魅力を教えてもらいました。
プロと一緒にワンランク上のセルフリノベを目指す
インテリアや暮らしまわりのスタイリストとして活躍、さらにはWEBマガジン『Love customizer』も主宰する石井さん。2013年に出版した著書『簡単! インテリアDIYのアイデア Love customizer』では、女性でもできるおしゃれで可愛いインテリアDIYのコツを紹介し、反響を呼びました。
中古の一戸建てをDIYでリノベした経験ももつ石井さんが今回チャレンジしたのは、逗子にあるヴィンテージマンションのリノベ。大工や家具職人といったプロたちと一緒に、3カ月にわたるセルフリノベーションにトライし、リビングからキッチン、寝室、水まわりまでフルで完成させました。その様子が詳しくつづられた書籍『Love Customizer2 DIY×セルフリノベーションでつくる家』も、昨年12月6日に発売され、DIY愛好家からも注目されています。
「56m2の一戸建てが手狭になり、新居を探していたときにたまたま出合ったのがこの物件でした。私はライフスタイルのひとつとしてDIYを本やWEBマガジンを中心に紹介してきましたが、プロではありません。そこで今回はプロの技を学びたいという思いもあって、セルフリノベーションの要素も残しつつプロに頼ってみることにしました。
かかわってくださった業者さんは、大工さんを筆頭に左官、水道、設備、電気、防水関係の方々。大工さんが工務店も兼ねているので、全て紹介していただくことができました。私の担当は、いわゆるプロデューサー的な立ち位置と、施行の手伝い。なるべく仕事をセーブしてこちらに集中しようと思って、工事期間の半分くらいの日数は現場にいましたね。今回職人さんたちにその場で要望を伝えながら、“感覚”でつくってもらったので図面はつくりませんでした。図面がなくてもリノベーションはできるんですよね」(石井さん、以下同)
ハーフリノベーションの良さとは?職人さんとの協同作業で石井さんが実感したのは、「暮らしの機能性」をしっかり考えておくことの重要性だったそう。
「絶対にちゃんと見ておかなきゃいけないのはコンセントの位置です。あとから意外とここにあったほうがいいなって思うことがあるので、細かい部分ですが職人さんたちの意見を聞きながら、家電製品の配置なども見据えてきちんと指示をしたほうがいいですね。あとはキッチンや洗面などの機能面ですね。インテリアは後にまわしてもいいですが、火まわりや水まわりは初期の段階で決めなくてはならないので」
確かにコンセントの位置によっては、コードがヘンに目立ってしまったり、家具の置き場所が制限されたりと不満が残ることも考えられます。これは住み手が主導して決めるべきことかもしれません。
また、DIY×プロ集団のメリットについて、石井さんは次のように語ります。
「工務店にすべてお願いすると、その工務店が取り引き先から設備や材料、インテリアを入れることになると思います。でも、工務店が提示したカタログには自分が好きなものがない。自分で気に入ったものを使いたいとなると、自分で商品を手配する“施主支給”をすることになって、じつは工務店さんが嫌がるケースもあります。私は立派なカーテンはいらないし、小さなお店で海外から輸入したすてきなファブリックを使いたい、自分の好きなものに囲まれていたい。このカタログのなかから選びなさいと言われても、ないわけです。そうした点を踏まえると、プロに100%任せず、住み手が積極的に部屋づくりに携わることが、やはり大事なのかなと思います」
コストカットだけではない! “DIY×職人”リノベのメリット1LDKのマンションを半分手伝いながらリノベーションし、自分で素材や設備の発注をしたことで、200万円弱のコストカットにつながったそう。ただ、石井さんはコスト以外にも得るものは大きかったといいます。
「自分の手でクオリティの高い住まいをつくるという経験値が得られるのは貴重ですし、一緒に施工をすることで住まいの構造を深く理解できます。床の下がどうなっているとか、壁はどんな素材を使っているとか、それらを知ることで、これから生活をしていくうえでの安心につながると思います」
なお、これからは施工会社に丸投げではなく、住み手が積極的に施工に携わるハーフリノベーションを選ぶ人が増えてくると予想します。
「取っ手やタイルなどDIYインテリアにまつわる、おしゃれなアイテムを見つけて販売している個人店もたくさん出てきているので、工務店さんが施主の要望に応えられないと、世の中のニーズに合わなくなり、選ばれなくなるのではないでしょうか。逆にそうした施主を受け入れて、自分の引き出しが広くなると考えるほうが絶対に今後につながっていくと思います」
すべてをセルフリノベーションで行おうとすると、行き詰まったり妥協したりと、結局はプロに頼んだほうが良かったと後悔することにもなりかねません。しかし、協同スタイルを取り入れることによって、自分にもできる作業は手伝い、プロに頼るところは頼ることで、一括してプロにお任せしてしまうと得られないような、住まいにまつわるアイデアのブラッシュアップにもつながりそうです。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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