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要らない物なのにもったいなくて捨てられない、物がなかなか減らなくてスッキリしない…断捨離中のそんな悩みってありますよね。どうすれば物への執着を断ち切って、納得の捨て方ができるのでしょうか。そこで、30年の試行錯誤を経てミニマリストとなったブロガー・筆子さんが自身の著書『1週間で8割捨てる技術』で明かしている「こうすれば捨てられるようになる」という方法を紹介します。
「物があれば生活がもっと良くなる」のは単なる幻想
「30年もの間、物を捨てたり増やしたりの繰り返しでした」という筆子さん。50代のミニマリストで、ご自身のブログ「筆子ジャーナル」に日々の断捨離や節約生活を綴っている人気ブロガーでもあります。物を捨てる過程でうまくいったこと、失敗したことなどの体験が参考になると、多くの人から反響を得ているそうです。
20代後半だったある日、部屋いっぱいにあふれる物の多さを自覚し、「物をたくさん持っていても、人は幸せになれない」ことに気づきました。持たない暮らしを目指したものの、物を捨てられず、いざ減らすことができても、その後、いつの間にかさらに物が増えて…という繰り返しでした。
「そうしたリバウンドを何回も繰り返してしまった原因は、仕事や住環境、出産育児などで暮らしが変化したことと、『物を買えば今より生活が良くなる、楽しくなるという幻想』を抱いていたからなんです。シンプルライフを目指していたはずが、気づいたら再び物が増えていました」と筆子さん。
捨てて分かったのは「持ち物の8割は必要ないこと」ミニマリストとは最小限の物で暮らす人のことですが、片付けの試行錯誤ばかりしていた筆子さんが、どうやって物を減らすことができるようになったのでしょうか。「たくさんの物を捨てて分かったことは、8割の物は必要なかったということ」と語る筆子さんに、その方法を伺いました。
まずは、自分がどうしてその物を捨てられないのか、自分でも気づかない心理を見つめてみることが大切です。
「私には、捨てたいのに捨てられない物がたくさんありました」。特に文房具、書類、本、製菓用品などが多く、その一つひとつに対し、「捨てる?捨てない?」の問答を何度もやったそうです。
そして、捨てられない物に共通点があることに気づきました。
●持っていればなりたい自分になれると思う物
「野望ガラクタは捨てにくいんです。野望ガラクタとは、それがあればなりたい自分になれると思う物のこと」。例えば、英語がペラペラな自分になりたいと思って買った英会話教材。それを捨てると自分の夢や希望をあきらめてしまう気がするので捨てたくないのです。
●いつか使うかもしれないと思う物
今使っていなくて存在すら忘れていた物でも、いつか使うかもと思って捨てられないのは、その物への執着があるためです。人には損失回避(物を失うことを恐れる)や授かり効果(手に入れた物を理由もなく高く評価すること)という心理が働いて、一度手に入れた物は手放したくなくなるのです。
●人からの頂き物・買ったときに奮発した物
使っていない、またはその物があまり好きではないのに、「人からの頂き物を捨てるのはその人に悪くて」「買ったとき、高かったからもったいなくて」といったケースも、よくある捨てられない状況ですが、大切に使いたいという気持ちがないのであれば、物に縛られているのだと気付くべきです。
これらの物は使っているなら手放す必要はありませんが、使っていないのに捨てられないから部屋がスッキリしないのです。
人は変化や失うことを恐れる生き物なので、結局、いろいろ理由をつけて捨てることを先延ばしにします。でも、それでは今の暮らしが変わることはありません。変わりたいという気持ちが強いなら、捨てることを選択肢に加えるしかないのです。
「いざ失ってみると、物を失うことへの恐れはなくなり、逆に解放感が得られます」と筆子さん。「思い出の物でも思い切って処分してみたら、過去に縛られず、新しい自分と向き合えるようになりました」
「15分で27個捨てる」訓練で、捨てる判断が加速する「捨てられない心理」があることを自覚したら、次に「捨てる訓練」をすることが大切です。「何かをマスターしたかったら回数を重ねるしかありません」と筆子さん。「訓練」とは、15分間で27個の物を捨ててみること。タイマーを15分にセットし、家中を走り回って捨てる物27個を手に取り、ごみ袋に入れていくのです。
こうして時間を決めて集中することで、「捨てる・捨てない」の判断が鍛えられるわけです。
「これはアメリカのお片付けサイトで紹介されていた方法で、27個という数にはきちんとした根拠はありませんが、風水的に運気を呼び込む数字にちなんでいるようです。多すぎず少なすぎず、走り回って集めるには適度な数だと思います。やり始めたときはゲーム的に楽しみながらチャレンジできました」
単純なゴミを27個集めるほか、「服を27着」や「本を27冊」「リビングにある物を27個」などとテーマを決めて取り掛かります。
捨てる物が思いつかない、捨てるのが苦手という人は、確実に捨てられる物、捨てても惜しくない物から始めて経験値を高めると良いそうです。例えば、期限切れの物(食品や薬、古くなった化粧品、保証書、クーポン券など)、無料の物(サンプル、粗品、チラシ、小冊子、カタログなど)、包装物(空き箱、袋、お菓子の空き缶など)、破損している物などです。
そして、捨てる際にはあまりその物をじっくり見たり触ったりせず、触る時間を極力短くしてごみ袋に入れます。人は何かを触っているとそれに対して感情的なつながりを感じるようになり、執着が出てしまうからです。
また、「物を処分する際にはお金に変えようと考えない方がいいです」とも筆子さんは話します。「お金にしようとすると、売るというミッションが増えて、目的がぶれるからです。私は基本的にゴミのような物は捨てて(リサイクル含む)、使える物は友人に譲るか地域のチャリティーセンターに持ち込んでいます」
もし売りたいという場合はできるだけ早く行動した方が、スッキリします。
捨てる訓練をしたら次に、1週間と時間を決めて、毎日、自分が物を溜め込んでいる場所を集中的に片付けることがお勧めだそうです。片付ける際には「8割の物は要らない」と意識しながら1週間集中して捨てることを続けるのです。
そうすることで、視覚的な達成感や自分でもできるという自信が得られ、もっと片付けたいという気持ちや欲求を呼び起こします。その気持ちを持続させていくことで、片付けが驚くほど加速するわけです。
1週間で捨てるのは、家中の物が対象というわけではなく、「プライムゾーン」にある物だけに集中します。プライムとは英語で根本的なという意味。特に物を溜め込んでしまいがちな根本的原因となる場所を筆子さんはプライムゾーンと呼んでいます。
たくさんの物が詰め込まれている場所…例えば、クローゼット、洗面室の引き出し、ドレッサーの引き出し、パントリーなどが思い浮かびますが、そうしたプライムゾーンの物を集中的に片付けることで、プライムゾーン以外の家中の片付けにも拍車がかかります。
片付けに使う時間は「15分で27個捨てる訓練」と同じく、1回15分です。これを1日5~8回ほど行います。フルタイムで仕事をしている人でも、1日に1時間半程度の時間を確保できる時期を見計らって、「捨てる訓練」を進めてみましょう。
一気に片付けようとすると、脳が決断疲れを起こしてしまうので、筆子さんの経験上、15分ずつ行った方が結局は効率的だそうです。
場所は、例えば「今日はクローゼットだけに集中」というように、物の数がかなり多く、収納や片付けに悩んでいるところから始めると良いそうで、次の事項を判断材料にして捨てる物をより分けます。この時も「8割の物は不要・なくてもなんとかなる」と意識して臨みます。
【捨てる基準】
●1年間使わなかった物で、今後使う予定のない物
●物理的に傷んでいる物(シミのある服、欠けている食器など)
●使いづらい物(サイズの合わない服、重いバッグ、特殊な形の食器など)
●数が余分にある物で、気に入っていない方
●大切ではないのに、思い出だけのために残している物
●嫌な気分を思い出してしまう物
●いつかなりたい自分になるための物(読んでいない自己啓発本など)
筆子さんは「私の場合、迷ったら捨てると決めました。先延ばしにすると、『捨てる?捨てない?』と意思決定する機会が余分に増えます。また、使っていない物を持っていても意味はないですから、『3年使っていなければ捨てる』というゆるいルールから始め、今は、1年使わなかったら捨てると決めています」と話します(1年使わなくても、何年か毎に使う物は捨てません)。
「捨てようかな?と考えている時点で、すでにそれは不用で邪魔な存在になっているわけですから、捨てても大丈夫、後悔したことや買い足したことはほとんどなかったですね」
1週間、この「プライムゾーンの8割を捨てる訓練」を実践していくと、家中の不用物が気になり始め、何とかしようと、捨てる行動がどんどん加速するというわけです。
大切なのは「物を捨てて自分がどうなりたいか」捨てたいのになかなか捨てられない、という悩みを解消するためには、捨てる訓練で気持ちと行動を加速させることが大切ですが、「一番大切なことは、物を捨てて自分がどうなりたいか、どんな未来を得たいのかを強く心に記すことです」と筆子さん。
不要な物を捨てて部屋がスッキリすると、いつも気分良く過ごせます。物を探し回ることもなくなり、掃除も楽。集中力が高まり、物を持て余していたストレスがなくなるので、心身ともに健やかになります。そんな心豊かな暮らしを実現させたいと強く思うことが、スッキリさせる一番の秘訣なのです。
「人が暮らすのに必要な物はそんなにたくさんありません。『いつか使うかも』の『いつか』はたいていやってこないのですから」
30年以上の紆余曲折を経て、物を確実に減らす方法に辿り着いた筆子さん。その言葉にうなずくばかりでした。
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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