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商社でフルタイムで働くAさんは37歳のワーキングマザー。45歳の夫、3歳と1歳の男児との4人暮らしです。昨年秋、40m2の1LDKから、60m2の2LDK(LDK14畳、和室6畳、洋室5畳)の分譲賃貸マンションへ引越してきました。そんなAさんに、小さな家での快適な暮らしについて伺います。【連載】狭くても快適に
「家が狭い=理想の暮らしはできない」。そう考えるのが一般的かもしれません。けれどもここで紹介する人たちは、数多くの選択肢のなかから、あえてコンパクトな住まいを選択し、狭くても快適に暮らしています。家族3人+愛犬1匹の4人家族で59m2という狭小スペースに暮らすライフオーガナイザー、さいとうきいが、そのヒミツに迫ります!収納スペースよりも、子どもが自由に遊ぶスペースを優先
東京郊外に住むAさんは4人家族。結婚してから昨年秋までの8年間、約40m2の1LDKにお住まいだったそう。第2子の誕生を機に引越しを考えていたところ、タイミングよく好条件の部屋と出合いました。それが現在のお住まいです。
“好条件”といっても、Aさん宅は60m2の2LDK。国土交通省によると、都市圏に暮らす4人家族の理想的な居住面積は約95m2。子どもが小さいことを考慮しても、決して広いとは言えません。
ところが、「これまで暮らしていた家もコンパクトだったせいか、今の家もとくに狭いとは感じていないんですよ」というAさん。たしかに、Aさん宅はどの部屋もすっきりと片付いていて、狭さを感じさせない開放感があります。
「4人家族になってものが増えた分、もっと収納スペースがほしいという気持ちもありました。でも、引越しの一番の目的は、子どもたちが自由に遊ぶスペースを確保することだったんです。家選びの際、とくに重視したのは『リビングの広さ』でした」
そんなAさん宅のLDKは約14畳。角部屋でワイドスパンのリビング・ダイニングは窓が多いため、日中は明るく、風通しもバツグンです。大きな収納家具を置いていないことも、開放感アップの一因のよう。
けれども、小さい子どもたちがいると、リビングにおもちゃや衣類など細々したものが集まりがち。そういったものはどのように管理しているのでしょうか?
「よく使うおもちゃやよく読む絵本は、テレビ台の下にざっくりと収納しています。子どもたちは普段、その手前のスペースで遊ぶことが多いので、出すのも戻すのもカンタンにできるようです」
「子どもの衣類は、引越し前から使っているソファの下にカゴを並べて収納しています。ちょっと大きめで脚の長いソファなので、意外とたくさんのものを隠しておけるんですよ(笑)」と話すAさん。
Aさん宅のリビングの奥には和室があるので、本来ならそこに収納家具を置いたり、押入れを活用したりして、子どものものを管理するのが一般的かもしれません。けれども、小さな子どもにとっては、日中最も長く過ごすリビングから奥の和室へ移動するのは、意外と大変なこと。
ものを持ち出すたびに大人の手が必要だったり、持ち出せても子どもが自分で戻せなかったりすると、結果的に親の手がかかる割に散らかりやすいリビングになってしまいます。
A邸のように、子どもが長く過ごす場所に収納スペースを設ければ、親の手は最小限で子どものものをラクに管理できます。収納家具を増やさないことで、引越しの一番の目的だった「子どもたちが自由に遊ぶスペースを確保」することも可能になりました。
譲れない条件をクリアした快適な住まい。狭さは工夫でカバー家選びでは「リビングの広さ」の優先順位が高かったというAさんですが、例えば「もう少し郊外に引越す」「もう少し駅から遠い物件を探す」という選択肢はなかったのでしょうか?
というのも、Aさん宅があるのは、東京のなかでもとくにファミリー層に人気があるエリア。しかも、主要駅から徒歩3分という利便性の高い立地です。もう少し郊外にある、もう少し駅から離れた物件であれば、より広い家に暮らすこともできるはず。
「実は、家選びでもっとも重視したのは『立地』だったんです。結婚以来8年間ずっと暮らしてきたこの街に魅力を感じているので、ほかの街に引越すという選択肢はありませんでした。だから、以前の住まいも現在の住まいも、最寄駅は同じです。以前は駅から30秒という便利さだったため、『駅からの近さ』も重視しました。今より広くなったとしても、駅から5分以上かかる物件は選ばなかったと思います」
つまりAさんの家選びの優先順位は、1)立地、2)駅からの近さ、3)リビングの広さ。それに続くのが、4)日当たり、5)2LDKという部屋数だったそう。
この条件さえクリアできれば、リビング以外の部屋は多少小さくてもいいと考えていたAさん。部屋を少しでも広く使うため、これまで使っていたベッドは手ばなし、久しぶりに”和室で布団”の暮らしを楽しんでいます。
ベッドのように転げ落ちる心配がないうえ、使わないときはたたんで片付けられる布団は、小さな子どもと一緒のコンパクトな暮らしの強い味方。けれども、朝晩の布団の上げ下げが大変です。
そこでAさんは、キャスターつきの布団収納棚を購入し、押入れの幅に合わせてDIYでカスタマイズ。キャスターごと引き出せるから、布団の出し入れが劇的にラクになったそうです。
「あえて収納家具を置かないこと」が狭さを感じさせない秘訣そのほかのスペースでも、狭さを感じさせない工夫が随所に見られるA邸。例えばダイニングスペースには、「広々と使えるように」という理由で収納家具を置いていません。
テーブルの上に置きっぱなしにしがちな、文具や手紙、保育園の連絡帳などは、ダイニングにつながるキッチンのカップボードの一角に収納しているそう。
冷蔵庫横のパントリーには、ファイルボックスを並べてキッチンまわりのストックを一元管理。下段には燃える・燃えない・資源用などのゴミ箱を設置。生活感の出やすいゴミまわりを死角にまとめることで、キッチン全体が洗練して見えます。
リビング、ダイニング、キッチンに収まりきらないものは、玄関からリビング・ダイニングに通じる廊下に備えつけられた2つの収納スペースに収めているA邸。家全体の収納スペースを効率的に使い切ることで、狭い家でも片付けやすく、散らかりづらい環境が整っていました。
狭いからこそ実現できた、ワーキングマザーでもゆとりのある暮らし最後に、「コンパクトなお住まいで、『もうちょっと広ければいいな』と思うことはありませんか?」と尋ねると、「うーーーん」と考え込んでしまったAさん。
「強いて言えば、駐輪場? 夫婦の趣味がスポーツバイクなので大人用のバイクは4台あるのですが、子どもの自転車はまだありません。必要になったとき、どうしようか考えているところです」
駐輪場、ですか……。室内ではどうでしょう?
「室内だったら、クローゼットとか? 和室の押入れをクローゼット代わりにしているので、丈の長い衣類の収納スペースが限られています。子どもが大きくなったら、足りなくなるような気がします」
「長男が個室を欲しがる年ごろになったら、夫婦の書斎として使っている洋室を子ども部屋にしようかと思っています。それまでは今のままのスタイルで、狭くても快適な、ゆとりのある暮らしを楽しみたいと思っています」と微笑むAさん。コンパクトな住まいに、十分満足されているようでした。
Aさんはフルタイム勤務のワーキングマザーということで、取材当初は「いかに時間をやりくりするか」といった暮らしの”時短テク”についてもお伺いできると思っていたわたしたち。ところがAさんはさらりと「とくに忙しいということもないんですよ~」
家がコンパクトだから家事の負担が少ないうえ、ものが少ないから管理にかかる時間も最低限。夫も家事や育児に積極的にかかわってくれるから、仕事も家事も育児も、バランスよく楽しめているというAさん。部屋だけでなく、頭の中まですっきりと整理整頓されているAさんにとっては、コンパクトな住まいと家族との円満な関係こそが、快適な暮らしのベースなのかもしれませんね。
●参考この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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