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実家がゴミ屋敷になったら…あなたはどうする?  “汚屋敷育ちの娘”が得た教訓とは

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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実家がゴミ屋敷になったら…あなたはどうする? “汚屋敷育ちの娘”が得た教訓とは

時折ニュースでも話題となるゴミ屋敷問題。他人事としてテレビで眺めていられるうちは気楽なものですが、いざ身近にゴミ屋敷があったら大問題。隣近所、あるいは実家がゴミ屋敷と化したとき、あなたは冷静に対処できますか?ゴミ屋敷に住む母と奮闘するコミックエッセイ『母は汚屋敷住人』(実業之日本社)の著者・高嶋あがささんに、その凄絶な日々と経験から得た片付けの極意を語ってもらいました。
家族もお手上げ~主がいる限り何度でもよみがえる汚屋敷の恐怖~

――ゴミ屋敷で想像するのは行政命令による行政代執行(※1)の様子と、廃棄にあらがう住人の姿です。家族や近隣の住民は苦労しているんだろうなと思うものの、どこかテレビの向こうの話で現実感がないという人が大半だと思います。高嶋さんの著書内でも、家をゴミ屋敷にしてしまう人の家族がどれほど苦しんでいるか、切実な訴えでもなかなか理解してもらえないと書かれています。

※1. 国や自治体などの行政機関の命令(ゴミの処理など)に従わない人に対し、その本人に代わって行政機関側が強制的に撤去や排除をすること

高嶋さん 日本ではあまりゴミ屋敷の内情や、そこで生まれ育った子ども、一緒に生活している家族の様子って公にされないので、実態がなかなか伝わらないんですよね。そんな大げさなって。ゴミ屋敷本もどちらかと言えば、掃除代行業者の人が書いていたりしますが、実際にゴミ屋敷で暮らす家族サイドから発信されたものってほとんどないんです。実際に『母は汚屋敷住人』に対する反響なんかを見ると、同じように悩んでいる人は想像以上に多いんだなと気づかされました。

――かくいう私も部屋を散らかしがちなのですが、『母は汚屋敷住人』に描かれている生活は想像の範疇(はんちゅう)をはるかに超えていたので、読んでいて戦慄(せんりつ)が走りました。

高嶋さん 母も年を取ったので、今でこそ多少パワーは落ちましたが、怒ると手が付けられなくて本当に怖いんです。目をカッと見開いて、「人のものを勝手に捨てるんじゃない!!」って。新しい物を買ったら、もう使えなくなったもの、古くなったものは捨てるっていう概念が存在しないんです。尋常じゃない雰囲気ですごまれるともう何も言えなくなってしまいます。

「捨てる」というワードに過敏に反応する汚屋敷の主(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

「捨てる」というワードに過敏に反応する汚屋敷の主(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

――それでも一度は、その壮絶な汚屋敷の片付けに乗り出したんですよね。母親に悟られないようにゴミを捨てて捨てて捨てまくったものの、ついにばれて撤退。やがてたどり着いた「母は片付けられないのではなく、片付けたくないのだ」という結論には、長年の苦悩に対する諦観の念がにじみ出ています。

高嶋さん そのころ、ひとり暮らしをしていたのですが、経済的な事情と、ちょうど東日本大震災のあとということもあり、古い一軒家に母を一人にしておくのは心配という気持ちもあって実家で暮らすことに決めました。しばらく実家を離れていたので、ゴミ屋敷の記憶が薄れていたんですね。想像以上の物量で、引越しの荷物が入りきらない状態でしたから。そこからは『母は汚屋敷住人』に書いたとおり、母の目を盗んではひたすらゴミと格闘する日々です。

読者の方から「結局片付いてないじゃん」という突っ込みもありましたね。はたから見ると投げやりに思えるかもしれませんが、結局どれだけ片付けても、母がいる限り片付けは妨害されるし物は増え続けるので、家を掃除するどころではなく心身ともに疲弊しきってしまうんです。それでうつになる人も多いそうですよ。

私は「片付けられない人」について、海外の論文まで含めて調べていくうちに、母がいなくなるまでどうにもならないという結論に至りました。もちろん、なんとかしたいという気持ちもありますが、今はなるべく距離を置くようにしています 。ここまで来ると心が病む前に自分で予防線を張るしかないですから。

2年に及ぶ汚屋敷との闘いの果てに得た結論は悲哀に満ちて・・・(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

2年に及ぶ汚屋敷との闘いの果てに得た結論は悲哀に満ちて・・・(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

引越すたびにゴミ捨てだけで数百万円!?驚愕の汚屋敷遍歴

――高嶋さんはご自身を汚屋敷育ちの娘と表現していますが、実際にはいつごろからゴミ屋敷だったのでしょうか。また、自分の家が一般的な家庭と違うということに、いつごろ気が付いたのでしょうか。

高嶋さん 両親は新婚当時、父の仕事の都合で海外で暮らしていたんです。私が生まれたのも海外暮らしの最中です。その当時は家にお手伝いさんがいたので、母の壊滅的な家事能力のなさは露見していなかったそうです。朝晩の食事は料理好きの父がつくっていましたし、私の食事も母乳や離乳食で済んでいましたから。

しかし私が幼稚園児のころに母が弟を身ごもり、さすがに子ども2人を海外で育て続けるのは大変だろうという判断で日本に戻ってきたそうです。社会的にファミリーファーストの文化が根付いている海外と違って、当時の日本では、まだ深夜残業や休日出勤は当たり前でした。父が家にいられる時間が少なくなったこともあり、母が「物をため込む」「掃除をしない」という状態が続き、家の中はゴミだらけでひどい有様でしたね。

当時住んでいた団地は購入したものかと思ってたんですが、実は叔母に借りていたそうです。借りている家をよくもあそこまで汚く使えたものだなと唖然としましたね。その後、より都心に近い一軒家に引越したんですが、団地を引き払うときにゴミ捨ての費用だけで数十万円かかったそうです。

そんなわが家の惨状に気付いたのは、小学校に入学して比較的早い段階でしたね。女の子って成長が早いので、そのころからお互いの家に呼び合うんですよ。「○○ちゃん、次はうちね」みたいに。でもあるとき、ふとわが家には呼べないと気付きました。友だちの家に行くと、みんなどこを見てもキレイで。これはわが家がとてつもなく異常なんだなと思いましたね。

――弟さんいわく、高嶋さんは姉というより同じ汚屋敷で生き抜いた戦友とのことですが。

高嶋さん あの家でご飯を食べたくないという思いは同じでした。母の料理がまずい以上に、あの汚い台所でつくった食べ物を口にしたくなかったんです。私は塾やバイトで家にいないことも多く、大学に入学してからはルームシェアを経てひとり暮らしをしているので、歳が離れていることもあって弟と接する時間はあまりありませんでした。

弟はそのころが一番悲惨で、目が死んでいましたね。団地で暮らしていたころ、弟はかわるがわる友人の家に遊びに行っては食事をごちそうになっていたのですが、引越しでそのネットワークが使えなくなったんです。当時はまだ携帯電話もなく、友だちの家も子どもの足で通える距離ではなくなってしまいましたから。それからは給食だけで食いつないでいたので、夏休みなどは冗談抜きに餓死寸前まで追い込まれたそうです。

――今なら児童保護の対象になりそうなものですが……

高嶋さん 保護してもらえればよかったですが、ゴミ屋敷もネグレクトも当時はまだあまり知られていませんでした。保護された子どもの境遇なんかを見ると、保護される前の環境は本当に悲惨。それに比べればわが家はまだマシだと思えますから、保護の優先順位を考えれば、今の時代でも私たちが保護してもらうのは難しいんじゃないでしょうか。

もっとも、最終的には母と別居することを決めた父と一緒に、弟も汚屋敷を脱出しています。汚屋敷育ちの反動からか、今では大のキレイ好きになっていますよ。自分の荷物をまとめたら段ボール3箱で収まると言っていました。

――三つ子の魂百までとも言いますが、大人になっても片付けの習慣は身に付くのですね。

高嶋さん 親が片付けられないと、高確率で子どもも片付けられない大人になるという統計データがあるそうです。私も物は捨てられるのですが整理整頓はあまり得意ではないので、いつか母のようになってしまうのではと恐れていました。母が汚屋敷住人となった年齢を通り過ぎて、思ったより自分はひどくないなと思えたとき、気持ちが少しだけ楽になりました。

初めてルームシェアをしたときは片付けや掃除の頻度が分からなくて、同居人に注意されたりもしました。いろんな片付けのノウハウ本や、片付けエッセイも読みましたが、掃除の仕方は書いてあっても頻度とか汚れの目安ってアバウトなんですよね。

『母は汚屋敷住人』を描いてからは、片付けられない悩みを相談されることもあるのですが、「物が腐ってなければ大丈夫。片付けたいと思えるなら大丈夫」と言っています。それから、家をきれいに保つには第三者の目が大事ですね。頻繁に来客があると、やっぱり片付けなければという気持ちになります。

同じ境遇で頑張っている人がいると分かるだけでも気持ちは和らぎます。私も汚屋敷で暮らす家族を取り上げるアメリカのドキュメンタリー番組や、インターネットの片付けサイトや掲示板のコメントに励まされました。心のよりどころを見つけるのも、片付けを継続するためのポイントかもしれません。

自分と同じように苦しい思いをしている人がいると知るだけで、心が救われることもある(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

自分と同じように苦しい思いをしている人がいると知るだけで、心が救われることもある(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

汚屋敷育ちの娘がたどり着いた片付けの極意

――実家の片付けに挑んで約2年、断念しながらも得た教訓などがあれば教えてください。

高嶋さん 部屋の広い狭いにかかわらず、汚屋敷住人の多くは物を目いっぱいため込んでしまうそうです。知人はあえて狭い部屋に引越して、溜め込める量を減らしたそうで、全部捨てても30万~40万円で済むだろうと言ってました。我が家の場合は確実に1桁増えるでしょうね。

日本では財産権の都合で、どんなにゴミとしか思えないものであっても、持ち主が所有権を主張する限り、たとえ家族でも勝手に捨てたら犯罪ですから、私のように隠れて捨てていたことがばれて、弁護士に相談されたら法律上は私が有罪になってしまうんです。

そんなリスクを背負ってまで手間暇かけてコツコツ片付けても、それに倍する速度で物が増え、しかも処分する度に必要経費を負担していては経済的に立ち行かなくなってしまいます。それに狭い部屋に引越したら、一軒家の処理と引越し代に加えて、確実に汚屋敷化する引越し先もお金をかけて処分することになりますよね。それなら住民が不在になってから一括で処理してしまう方が負担は少ないですよね。

インターネットがなければ、「母は片付けたくない人なんだ」という結論にたどり着くこともなく、心身ともに擦り切れていたんじゃないかなと思います。実家を離れた今でも、当時の汚屋敷の写真を自分への戒めとして時々見返しています。

なかなか私の実家ほど汚くすることはできないですが、整理整頓が苦手な人は収納に要注意です。隠れ汚屋敷や汚屋敷予備軍は意外と多いらしいので。よく片付けのノウハウ本に書かれているとおり、見えない物は無いのと一緒というのは本当にそのとおりで、母も普段は見える部分しか意識していませんでした。汚屋敷を片付けていたときも収納の奥から片付けていくことで、しばらくはゴミ捨てがはかどりましたから。

――裏を返すと奥行きがあったり、引き出しが深くて物を積み上げられるような収納は不要な物をためこむ原因になるということですね。物が隠れて見えなくなったら危険信号と覚えておきます。

それからマンションやアパートでも共用廊下に物を置いてある家はゴミ屋敷の可能性が高いそうです。私も整理整頓が得意ではないので、自分で管理できるキャパシティを把握するまでに、引越しては物を処分するを繰り返しました。

――まずは、どれくらいの広さの部屋で、どれくらいの物量までなら自分で片付けきれるのかを把握することが大切なんですね。「片付けたい」という思いを「片付けよう」という意志に置き換えるだけで部屋はキレイに保つことができるのかもしれませんね。

「ちなみに祖母の家を片付けた際には、田舎ということもあり、大量の家具などを外で燃やしました。東京だと無理ですよね」と苦笑する高嶋さん。ワイルドですね……(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

「ちなみに祖母の家を片付けた際には、田舎ということもあり、大量の家具などを外で燃やしました。東京だと無理ですよね」と苦笑する高嶋さん。ワイルドですね……(C)実業之日本社/「母は汚屋敷住人」高嶋あがさ(画像提供/高嶋あがささん)

『母は汚屋敷住人』を読むと、片付けたい以上に片付けねばという危機感に襲われます。同時に、「片付けが苦手な自分でもできるかもしれない」という勇気も湧いてきます。不要な物やゴミをため込む前にコツコツ片付けることが、部屋をキレイに保つ一番の近道なのかもしれません。片付けや整理整頓が苦手な人も、「片付けたいと思えるなら大丈夫」を合言葉に、キレイ好きを目指してみませんか?

●取材協力
・高嶋あがさ氏
・実業之日本社 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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この記事のライター

SUUMO

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