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【前編】ではシドニーのオージーらしい最新住宅デザインを紹介したが、実は今回オーストラリアへは“日本企業の海外事業”を実際に見るためにやって来ていた。シドニーからメルボルンにも渡って、その現場をレポートする。
住友林業がオーストラリア大手の会社に出資、年3000戸規模の販売計画
シドニーに次ぐオーストラリア第二の都市、メルボルン。英ヴィクトリア朝の歴史的な建築も残る、アートや文化を感じさせてくれる街。テニス好きの私には、全豪オープン開催都市としてなじみの都市。
メルボルンもシドニー同様、移住してきた多国籍民族の都市。7割強のアングロサクソン系にイタリア、ギリシャからも多く、アジア系など多様なコミュニティーが存在し食文化も豊か。世界的にも住みやすい街として人気が高い。
そのメルボルンで訪れたのは、“Australia’s NO.1 Builder”と看板を掲げたHenley(ヘンリー)社。
【前編】で紹介したシドニーのWisdom Homes(ウィズダムホームズ)社と同様、日本の住宅メーカーである住友林業が2009年から出資し子会社化したHenley社は、年間2000棟以上の住宅を建築販売するオーストラリアの大手ビルダー。
住宅価格が上がり続けているオーストラリアでは、購入後10年以内に売却し利益を得ようと考える人も多いらしい。
ただ、ビルダーのなかには仕事がいい加減だったり、倒産したりという問題もあるようで、ビルダーの信頼性をシビアにチェックして選ぶ人が多いということだ。
日本企業以外に、中国やシンガポールなど他国からも不動産開発への投資は盛ん。そんななかで、現地企業が日本企業をパートナーに受け入れる理由も、エンドユーザーのビルダー選びと同じく“Trust”信頼性であるとWisdom Homes社のVitalone社長が教えてくれた。
宅地造成からの街づくりを、日本企業が手がけるメルボルン中心地から35kmほど北に位置する「Annadale(アナデール)」住宅地は、日本のNTT都市開発と住友林業がタッグを組んで取り組む新規宅地造成地。
約1200戸の住宅と学校や商業施設などを兼ね備えた、豪州では中規模な住宅地。3000戸以上の大規模プロジェクトは地元豪企業が手がけるので、外資企業にとってリスクも抑えながらチャレンジできるのが、この中規模プロジェクトということだ。
日本でも新規造成したニュータウンに家がどんどん建ち、住民が増えて街となっていく過程は、経済成長の証だった。今、オーストラリアで同じことが起きていて、日本企業の進出もますます増えている。
積水ハウスはシドニーで、“街づくり+家づくり”に挑戦中住宅価格の高騰が顕著なシドニーでは、市街地ではマンション開発が中心。一般的な一戸建てを購入するとなると、中心地から50kmほど郊外の住宅地が主流。
シドニー中心部から南西に約45 km・車で約50分の人気エリアで、住宅地開発を一から手がけるのが積水ハウス。
ユーカリなどの既存樹木を残しながら造成する手法は、積水ハウスが日本で取り入れている“里山”思想。ここでも約4kmの“SATOYAMA”が街を縦断し、人々の交流の場になっている。
「豪州では、土地の起伏や既存樹木を残すような手間のかかる造成はしないのですが、われわれは何年も先になって分かる街の価値を大切にして住宅地開発をしています」と、お話を伺った積水ハウスオーストラリアの阿部社長。
積水ハウスは住宅地の造成開発だけでなく、住宅建築も日本の手法“プレハブ工法”(工業化住宅)で挑戦している。豪版「SHAWOOD(シャーウッド)」として開発した木造プレハブ住宅だ。
阿部社長にカートで街を案内していただいていたら、偶然、帰宅した入居者家族に出会った。
「Hi !」顔なじみのように笑顔で話しかけられた、その様子で「The Hermitage」の暮らしに満足していることが伝わってきた。
住宅デザインは日本のシャーウッドとは異なり、現地のニーズに合ったデザインや間取りを約5年試行錯誤して来たもの。「2階バルコニーの提案も増やしてみようと思っています」と阿部社長、チャレンジは続く。
建築現場では廃棄物の分別やリサイクルへの取り組みも、日本流を導入。エコ・ファースト企業の姿勢をオーストラリアでも実践している。
環境への取り組みとして高い評価を得たプロジェクトが、積水ハウスオーストラリアとフレーザー社との共同開発事業「Central Park」(全体完成予定2018年)。シドニー中心部の大規模再開発で、大きな公園を配した商業施設や住宅などの複合開発。
「以前、治安が悪かった地区でしたが、このプロジェクトによって環境が良くなり、シドニー市長から感謝いただきました」(阿部社長)
積水ハウスはオーストラリアで既に約9000戸の住宅を販売。分譲マンション事業においても、引き渡し前の内覧会や入居後の細やかなフォローなどカスタマーサービスを日本式に充実させて顧客評価を上げている。
日本の“おもてなし”文化が住宅販売でも活かされていることを聞き、何だか誇らしい気持ちになった。
ダイワハウス オーストラリアが現地企業と手がけるのが「Flour Mill of Summer Hill Project」。“Flour Mill=製粉所”の名前を残しているように、円筒の製粉倉庫サイロを残しながらコンバージョンするユニークなマンション開発。
販売センターを訪ねると事業主紹介のパネルには、豪企業EG社と並んで見慣れた大和ハウス工業の赤いロゴ。他、住友林業・コスモスイニシア4社による共同事業。
この開発のアイコンである、サイロ棟の完成模型。ナント、円形の住戸⁉
ダイワハウスが2011年に現地法人を設立してからは、このプロジェクトが初案件。今後も、現地企業などと共同で不動産開発事業を展開していく予定。
今回、日本の住宅メーカーがオーストラリアで展開するプロジェクトを回ったが、日本企業が現地企業や従業員から信頼されている様子を見ることができた。今後の事業機会は、そのような良い関係性によって拡大してゆくのだと期待できる現地視察となった。
※1オーストラリアドル=85円で換算
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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