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LGBT、つまり同性愛者や両性愛者、性同一性障害者などいわゆる性的マイノリティを尊重する条例が、渋谷区で2015年3月31日に誕生した。なかでも同性パートナーを結婚に相当する関係として証明書を発行する点が話題になっている。その背景には、同性カップルは賃貸住宅が借りづらいといった事情もある。
同性カップルなどに「パートナーシップ証明」を発行する点に注目渋谷区が条例を定めた目的は、「区、区民及び事業者が、それぞれの責務を果たし、協働して男女の別を超えて多様な個人を尊重しあう社会の実現を図るため」としている。学校教育などの場においても、性別による役割分担意識を変え、性的マイノリティに対する理解に取り組むなどとされ、区の事業者は男女の別や性的マイノリティによる差別を行ってはならないとしている。
男女平等を掲げる条例は多いが、性的マイノリティの尊重に対して言及し、区長が、「公序良俗に反しない限りにおいてパートナーシップに関する証明(「パートナーシップ証明」)をすることができる」と踏み込んだ条例は、これまでにないと注目を集めている。
そもそも、同性カップルは法的な婚姻関係が認められないため、賃貸住宅が借りづらい、病院での面会などが認められないといったことが言われてきた。今回の渋谷区のパートナーシップ証明により、こうした問題が減少することが期待されている。
なぜ同性カップルは、賃貸住宅が借りづらいのか?賃貸住宅を借りるには、賃貸住宅の貸主と合意のうえで「賃貸借契約」を結び、入居して住み続けることになる。標準的な賃貸借契約では、貸主の許可なく、借主が勝手に誰かを同居させたり、不在期間に又貸しをしたりしてはいけないことになっている。賃貸住宅の管理に支障が生じたり、想定以上に住宅が傷んだりといったトラブルのもとになるからだ。
同居人がいる場合は、契約書にあらかじめ記載することになっている。日本の場合、家族や婚約者であれば認められるのが一般的で、同性パートナーが認められるケースは少ない。パートナーシップが早期に解消された場合に、単独では賃料が滞るリスク、近隣とトラブルになるリスクをできるだけ避けたいといった理由なのだろう。
ルームシェアが可能な賃貸住宅であれば、同居の点は問題にならないが、対象物件が少ないうえ、それぞれ個室に住むといったことになり、家族として暮らすという生活イメージとは異なるだろう。
賃貸借契約は、あくまで貸主と借主の合意によるものなので、貸主が同性カップルの同居を認めてくれれば問題なく借りられるのだが、なかなかそうはいかなくて困っているというのが実態だろう。
同性カップルの区営住宅への入居が可能にさて、今回の渋谷区の条例成立で、同性カップルが区営住宅に入居できるようになり、さらに渋谷区の区民や区の事業者である賃貸オーナーは、パートナーシップ証明を最大限配慮しなければならないとされているため、同性カップルを理由に同居を認めない事例が減少することが期待される。
これを機に、渋谷区に転入しようという同性カップルが多くなるかもしれない。ただし、パートナー証明については、相互に任意後見人とする公正証書を作成するなどの条件があるほか、細かい手続きについては今後策定する規則で定めるとなっており、本格稼働するにはまだ少し時間がかかる。誰もが快適に住める街になるのか、今後も注目していきたい。
住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナルこの記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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