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「私の親は毒親だったから」「親ガチャ失敗した」そんな言葉をよく見聞きする昨今。変えられない過去・事実によって、今の自分が決定しているように思えますが、果たしてそうなのでしょうか。親に育てられた子、子を育てた親、それぞれの目線で考えてみましょう。
今回は、アドラー心理学に基づくカウンセリングを行うヒューマン・ギルドの代表で『娘が理解できません~大人になった娘のために、母親は何ができるか~』の著者、岩井 俊憲さんインタビューの後編です。
「自分の親は毒親だったのかも?」と思っている娘へ、そして子に対して「自分自身が毒親だったのでは?」と悩むお母さんたちへ、そんな疑問が浮かんだらやりたいことを教えていただきました。
※写真はイメージです
―――『娘が理解できません』は、母と娘がテーマとなっています。また、書籍の中で「長女はとくに母親の影響を受けやすい」と書かれていますが、これはなぜなのでしょうか。
岩井まず、親子関係の組み合わせには「母と娘」「母と息子」「父と娘」「父と息子」の4つのパターンがあります。私は様々な親や子にカウンセリングを行ってきましたが、この中で、最も問題が顕著に表れるのが「母と娘」の組み合わせです。
また、「1人目の沐浴のときは温度計できちんと温度を計ってからお湯に入れていたけど、2人目以降は手を入れて湯加減を確かめただけで入れた」ということがよくあるように、親にとって初めての子ども・初めての子育てとなる第一子に対しては、経験が浅いがゆえに手を多くかけ、神経質に考えがちになります。
加えて、親のターゲットになりやすい人の特徴に「従順」である意味「依存的」ということがありますが、これも第一子ほど強い傾向があります。
つまり、母と娘、さらに言うと神経質になりがちな第一子である長女に対して、母親が依存してしまうケースがとても多く、長女も親の影響を受けやすいということです。
―――きょうだい間でも、親の対応に差が出るということですね。ますます親への不満が募ってしまいそうです……。
岩井2人目以降は1人目のときの経験から、失敗が減っていくものです。1人目の間違いを2人目以降で活かしていると思うと、第一子はわりを食っていると思うかもしれませんね。
第一子で自分ばかり親に好ましくないことをされたと思うときは、「自分のときに失敗があったら弟や妹のときに減っていったのだ」「親もまだ未熟だったのだ」と考えを変えてみてください。
岩井健全な長女(姉)の場合、進んで弟や妹の世話をする人も多いですよね。一方、自分の親を毒親と言う人は、兄弟姉妹に対する関心が薄い傾向があり、人に貢献することができなくなっているケースが少なくありません。
なので、人に貢献するトレーニングをおすすめします。
アドラー心理学では「人生の意味は貢献にある」「幸福の尺度はテイクすることでなく、ギブすること」と言われています。人に貢献することが自分の喜びになり、成長につながるのです。
人に貢献するには、英語では「May I help you ?」と声をかけるように、助けが必要かどうか、まず相手に確認してください。
日本語ではこの辺の声かけが難しく、「大丈夫?」と聞くと相手は「大丈夫じゃない」とは言い辛くて「大丈夫、大丈夫」と返ってきたりします。ですから「何かお手伝いできることはある?」などと聞くとお願いしやすいでしょう。
自分で必要だと決めつけてやってしまうとおせっかいになるので、人に何かする場合は一言でもいいので了承をとる必要があります。貢献過剰も好ましいことではないので、相手の立場に立ち、了解を得たうえでの貢献を心がけてください。
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―――次は母親の立場からお聞きします。成長した娘が離れていき、自分に原因があるかもしれない、と思ったらどうすればよいでしょうか。
岩井自分は母としてよかれと思ってしたことでも、それが思い違いなどがあってボタンを掛け違ったようになっていることもあります。
まず、相手に確認することが必要です。「こんなことをしてしまったことがあったね」「あなたはそれをどう受け止めたの?」とお子さんに聞いてみてください。
岩井そして相手がよく思っていないことがわかったら、共感したうえで謝罪をしてください。自分がしたことが相手に迷惑だったら、謝るのは当然のことです。「あなたのためを思ってしたけど、そんな風に受け止めたのね。取り返しのつかないことをしてしまってごめんね」と謝罪をすることが必要です。
最後に、お子さんに「今後できることがあれば教えてほしい」と尋ねてください。
このときはただ「いいよ、別にないよ」と言われるかもしれません。親子関係の改善には時間がかかります。でも、お子さんが「お母さんがそんな風に思ってくれたんだ」とわかれば、次に親を試すことを始めます。心底反省して自分自身を再構築しようとしている姿勢が見えれば、親子関係を再構築する余地が出てくるでしょう。
―――「確認をする」「共感をもって謝る」「今後どうしていくか考える」ことが必要なのですね。
岩井原状回復つまり元に戻し、謝罪をして、再発防止をする……これが、失敗の責任を取る3つのステップです。再発防止に何をすればいいか、親子間ではスムーズに出てこないかもしれません。それでもこれからの関係のために、よりよくするにはどうすればいいか考えてみてください。
岩井自分を犠牲者だと思っていると、ひとつの道しか歩めません。人生はいつでも軌道修正が可能だと思えば一歩踏み出すことができます。あなたの未来はあなたが決めるのです。アドラー心理学では未来も変えられるし、過去も変えられるといわれます。なぜなら過去は自分の視点で見た物語になっていて、物語の書き換えはいつでも可能だからです。辛い経験も学びであり、自分自身のプロセスだと考えると、物語は変えられます。辛いことから卒業して、今も被害者でい続けるのではなく、克服するという立場へ踏み出してください。
―――時間はかかっても、まずは相手の意見を聞くところから始めて親子関係を改善してもらいたいですね。貴重なお話をありがとうございました。
『娘が理解できません』の著者・岩井俊憲さんに、自分の親が毒親だったかも?と思ったときや、自分自身が毒親と思われているかも?と思った場合の対処について教えていただきました。書籍ではアドラー心理学の考え方もわかりやすく紹介されています。ぜひ手に取って参考にしてみてください。
(マイナビ子育て編集部)
「なぜか娘が離れていく」と悩むあなたへ「なぜか娘から距離を置かれている」「何を言っても反発され、どうしたらいいかわからない」「娘のためによかれと思ってやっているのに」
新聞や雑誌の人生相談には、大人になった娘との関係に悩む母親の投稿がたくさん寄せられています。子育て後の母娘関係がうまくいかないケースは多く、娘目線の書籍は近年たくさん出版されています。
本書は、「大人になった娘が理解できない」と困っている母親に向けた本です。
著者はアドラー心理学の第一人者として、長年親子関係の問題に取り組んできました。アドラー心理学は「未来志向の心理学」といわれ、過去の原因追及やダメ出しをせず、現状を改善するための思考を重視します。著者は、読者が自分なりに精一杯がんばって子育てをしてきたことに共感を示しながら、豊富なカウンセリング体験や自身の体験をもとに、母娘関係の問題をやさしく紐解いていきます。
母親との距離感や関係性に悩んでいる。自分も娘に対して同じようになってしまわないか?と不安を感じている子育て真っ最中のママにも、役立つヒントが満載の1冊です!
この記事のライター
マイナビウーマン子育て
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