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模試はテレビCMなどもバンバン流され、ママ友の間でも話題に上がったりするので、「受けさせないと乗り遅れる」と焦燥感に駆られ、受験を検討されている方も多いと思います。そこで本記事では、ベテラン中学受験指導家・宮本毅先生が「模試は受けた方がいいの?だめなの?」塾業界の裏話も交えて解説します。
そもそも、なぜ四谷大塚は、全国15万人が受験する大規模模試を「無料で」実施しているのでしょうか。莫大な投資に見合うリターンがないと、実施する意味はありません。塾側に一体どんなメリットがあるのでしょう。
公認会場に指定されている各塾のHPを見ると「住環境や経済的事由によって、子どもたちの学力向上の機会が奪われてしまうのを防ぎたい」とか「お子様が将来の夢や目標へ踏み出すための、大切な第一歩です」「夢に向かってがんばる子どもたちが、クラスメイトでありライバルでもある友と切磋琢磨することで、大きく飛躍する」といった美しい文言が並びます。
とても素敵な言葉たちですが、画面を下にスクロールしていくと、「全国統一小学生テストは入塾テストにかえることができます!」と書かれていて、なるほどと納得します。
つまり、大きな費用をかけるのは一種の宣伝効果を狙ってのことであり、塾側にとって大きなメリットがあるわけですね。ふむふむ。
では内容的にはどうなのでしょう。
さすがに10年以上続けられていますし、近年どんどん消費者の目が肥えて来ていますので、お粗末な内容であればすぐに炎上してしまいます。ですから、問題や成績表の質は充分保証されているといえます。問題はよく練られていますし、ミスは最小限に抑えられています。
成績表についても偏差値や順位はもちろんのこと、単問ごとの正答率や全国のライバルたちの中での自分の位置、取りこぼした問題のチェックなど、かなり詳しい内容となっています。「無料」であることを考えればその内容はかなり高品質と言えます。
では手放しでおススメできるかというと、そこはちょっと注意が必要です。
さきに述べた「塾側の思惑」としては、やはり「入塾につなげたい」ですよね。しかしお子さんの出来が素晴らしいものであったなら、親御さんは「これなら塾に入る必要なんてないわね」と思われてしまいます。
あるいは「この成績なら中学受験しても上位の学校を目指せそうだから、こっちの塾より合格実績の良いあっちの塾に入れましょう」となってしまいそうです。塾としては「ほら、お子さんはこの程度しかできていないですよね。これじゃあ中学受験には間に合いません。でもうちの塾に来ればなんとか受験レベルにまで持っていきますよ」といって自塾に入塾させたいですよね。
そのため、問題構成としては、簡単に解けるものだけではなく、中学受験塾に通ってきっちり学習していないと解くのが難しい問題も紛れ込ませるわけです。
そうすることにより、受験生は「まぁまぁ解けたけど、やっぱり学校のテストとは違い、難しかった」と、達成感と挫折感を同時に感じるわけです。その結果「オレ、塾で頑張ってみたい!」となるわけです。うまいですよね。
塾には塾の思惑があるからといって、無料で模擬試験を受けられるメリットがなくなるわけではありません。そこで、これをお読みいただいている皆様には「受けてみてもいいけれど、これだけは注意して」ということをお伝えしておきたいです。
テスト結果が返却される際、塾側はできていない部分を指摘して「中学受験を目指すなら、今から塾に通わないと間に合いません」的なことを言ってくるかもしれません。
もしお子様が小学校3年生以下なら、塾側の宣伝文句には決して安易に乗らず、まずはできていなかった問題が本当にその時点でお子様に必要なものなのかどうか、しっかりと見極めてください。
それがお子さんの学年の一般的な学力レベルよりも著しく高い場合、具体的には、その模試の問題全体のなかでも正答率が低く、特殊な勉強をしている子以外にはそもそも解くことが難しい問題だったと考えられる場合には、できていなくても気にする必要はありません。必要なことは「背伸びをさせる」ことではなく、「今を一生懸命生きる」ことです。
小さい時に過度に筋肉をつけすぎると身長が伸びにくくなるという話、聞いたことがある方は多いでしょう。
でもそれは、筋トレが何でもかんでもいけないという意味ではありません。実は、幼少期であっても適切な種類・方法で行われる筋トレは子どもの成長を助けるとされています。反対に、過度に負荷をかける高重量トレーニングは、まだ未熟な子どもの体を痛めてしまう恐れがあるのです。
学習に関しても同様で、その子の能力をはるかに超える学習をさせてしまうと、将来の学力の伸びの可能性を奪ってしまう恐れがあるのです。なんでも「ほどほど」がいいわけです。
実際にうちの塾でも、「全国統一小学生テスト」を受けてきて、あまりの出来のひどさに「こんなんじゃとても希望の中学には受からない」と、大量に課題を与え負荷をかける塾に転塾していった生徒がいました。
しかし残念な受験結果に終わってしまい、さらにその子は勉強が楽しくなくなって高校を中退してしまったのです。「過ぎたるは及ばざるがごとし」昔の人はホント、いいこと言いますね。
ですから、たとえ結果がよくなくても「今のうちの子の力はこんなもんか」と達観することを強くおススメします。また結果が良かったとしても「うちの子、神童かも!」と思わないようにお気を付けください。それもまた塾側の作戦ですから笑。
とにかく、模試の結果に一喜一憂せず、冷静に分析することがマスト。もし「そんなの無理!冷静な判断なんてできない!」ということであれば、あえて受験させる必要はありません。
小5・小6生に関しては、正直なところ受ける意味ってどのくらいあるのだろうと私自身は思っています。自分に子どもがいたら、小3までは受けさせるかもしれないけれど、小5以降は絶対受けさせないだろうな、と思います。
小5・6年生で中学受験を目指している子であれば、やはり普段通っている塾で推奨している模試を受験するべきでしょう。合不合判定や首都圏模試といった「中学受験生のみが受ける模試」の方がまぐれが少ないですし、正確なデータが出ます。
また、中学受験をしない小5・6生ならば、中学受験に出題されるような内容の問題が混じっている模試を受けることにほとんど意味はありません。中学生に上がれば算数は数学になりますし、学力判定の中心は英語と数学になるわけですからね。
ここまで、無料の模擬試験を受ける際のメリット・デメリットと注意点についてお話ししてきました。
まとめると、お子さんが3年生以下の低学年であれば、保護者の冷静な目があることを前提とした上で、受験を検討されるとよいかと思います。
高学年、とくに5・6年生の場合は、中学受験をする・しないに関わらず、メリットはあまり期待できないでしょう。とくに中学受験をされる場合は、有料になっても、志望校のレベルにあった中学受験のための模擬試験を受けることをオススメします。
価値観が多様化する今の時代、みなが「先へ先へ」「他の人が受けているから」と考えるのではなく、お子様の成長に合わせた教育を、ぜひ考えてあげて下さいね。
※中学受験ナビの連載『低学年のための中学受験レッスン』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています。元の記事はコチラ。
この記事のライター
マイナビウーマン子育て
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