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子どものありのままの性格や特性を受け入れられない親が増えているようです。「こういう人間になってほしい」「こうあるべきだ」と願うのは、かわいい我が子だからこそのことでしょう。しかし、その期待が強すぎると子どもは苦しくなり親を受け入れなくなってしまうことも……。
児童精神科医の第一人者である佐々木正美先生は、半世紀以上にわたり、子どもの臨床にたずさわりながら、さまざまな親子に寄り添ってきました。佐々木先生の著書『【新装版】抱きしめよう、わが子のぜんぶ』(大和出版)では、思春期を迎える前に今から知っておきたい子どもへの接し方について、さまざまな親子のエピソードとともに解説しています。
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今回も「思春期には、こんなまなざしが大切」より、一部抜粋してお届けします。
※画像はイメージです
現代人は自己主張が強くなり、自己愛的な傾向が強くなっています。
たとえば、私は乳幼児健診を30年間やってきたのですが、最近では、1歳半健診のときにお宅のお子さんには知的発達障害があるとか、自閉症ですなどと伝えるのが、とてもむずかしくなっています。
いつの時代の親にとっても、自分の子どもに障害があるという事実を受け入れることは悲しくつらいことです。
できることならば、健康であってほしいと願うのは自然なことでしょう。しかし、避けて通ることができない、わが子のもっている事実であれば、それを理解し、受容してやるというのが、本当にやさしい愛情でしょう。
そうした事実を受け入れるための強さが、私たち現代人からは、個人差はありますが、徐々に失われてきたように思います。
このことを、私は乳幼児健診の仕事に長年たずさわってきて、強く実感しています。
このようなやさしさや強さを失いつつあるのは、何も障害をもった子どもの保護者だけではなく、乳幼児健診の現場からは、そういう事実を通してそのことに気づかされます。
何事にもいやなことを受け入れる忍耐力を、私たちはどんどん衰えさせているということです。
利己的ないし自己中心的な生き方と背中あわせの感情でしょう。
乳幼児健診の現場で、「お宅のお子さんにはこういう発達障害がありますよ」と説明すると、「でも、うちではこうしていますから、そんなことはないと思います」という返答が返ってくる。事実を納得できない、受け入れられないのですね。
「じゃあ、念のため、来月また」ということを繰り返しながら、やっと不承不承認めることになります。
今の親は、子どもが自分の望まない性格や特性をもっていると、認めたがらないようです。むしろ、自己主張が強くなったぶん、
親が子どもに向けて、こういう子どもじゃなきゃいやだとか、こういう子どもに なってほしい、という要求がどんどん強くなってきました。
親の支配や期待が強すぎる子どもは、自立への一歩を踏み出す思春期を迎えると、その縛りから逃れようと親を受け入れなくなります。
汚い言葉を投げつけたり、暴力をふるったりして抵抗するようになるかもしれません。
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学校のなかでのいじめを見ていても、感じることがあります。
いじめる子どもの親が、「うちの子はそんな子であるはずがない」とか「いじめられている子のほうが、うちの子にいやなことしたんじゃないですか」と突き返す。
社会全体が、自己中心的で、非常に硬直した人間関係のなかにいると思えてなりません。
「私の子なのだから、私のもの」
どこかでそう思っているところはありませんか?
子どものありのままの性格や特性を受け入れられない根底には、子どもは自分のものだという意識があるからです。
かわいいわが子だからこそ「こういう人間になってほしい」「私の子なのだから、こうあるべきだ」と思うのでしょうが、子どもは親のものではありません。親の思いどおりにはならないのです。
このことを受け入れ、子どものありのままを認めるだけで、親子の関係はずいぶんと変わってくるはずです。
人はだれかに全面的に受け入れてもらえることで安心して自立していけるのです。
全面的に受け入れてもらえるということは、ありのままの自分を認めてもらうということです。
それは、子どもにとって「自分はこのままでいいのだ」という安心感、つまり自信につながります。
十分に受け入れられて育った子どもは、それだけ他人を受け入れ、認められる感性が育っていますから、人からも受け入れられやすく、友だちもたくさんできます。
反対にそれが少なかった子どもは、思春期になっても友だちをつくるのが苦手で、孤立してしまうことが多いようです。
どうぞ、ありのままの子どもを受け入れてください。
他人との比較のなかで、自己を確立してゆく思春期にこそ「あなたはあなたのままでいい」というメッセージを十分に伝えてあげてください。
受け入れられ、認められながら育った子どもは、健全な自尊心をもつことができるのです。
私は常日頃から、子どもに対してこんなまなざしで見ています。
子どもが努力をせずに成功した。これは親としてうれしくありません。だけど、努力をコツコツとしている姿を見ていたら、それで十分だと思うのです。結果は関係ありません。
こんなふうに考えていますから、折にふれて、自分の息子にはこういっていました。「君が努力をしていれば、お父さんはその結果は問わないよ」と。
お父さん、お母さん、それでいいじゃありませんか。結果を追求すると、自分も苦しくなります。何より子どもが苦しみます。
親が結果にこだわらなければ、子どもはのびのびといろいろな物事に向きあえるでしょう。
このことは、子どもに対してだけではなく、自分自身に対してもこういう姿勢でいられると楽になれるのではないでしょうか。
私は生き方として、何事も一生懸命努力をしていれば、ただそれだけで最高の人生だと思っています。
がんばってよい結果が得られたらうれしいものですが、がんばっていれば、たとえ結果に結びつかなかったとしても喜びなのです。
子育ても同じです。子どもを一生懸命育ててきて、自分の望みどおりになれば最高にうれしいでしょう。
でも、望みどおりにならなかったとしても、あなたは精一杯がんばっているのだから、それで十分です。立派です。
この本を手にとっていただいたということは、子どものために真剣になっている証拠です。どうしたら子どもが幸せになれるだろうと必死に考えている、ゆたかな愛情の持ち主です。それはすばらしいことです。
あなたはそのままで十分に立派なお父さん、お母さんです。どうぞ、子どものことを受け入れるのと同じように、自分を認めてあげてください。
お父さんお母さん、あなたも自分を肯定していいのです。あなたはあなたのままでいい。十分がんばっているお父さんお母さんです。
この記事は、佐々木正美著『【新装版】抱きしめよう、わが子のぜんぶ』(大和出版)より一部抜粋・再編集したものです。
この記事のライター
マイナビウーマン子育て
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