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その人の国籍や人種、民族など、アイデンティティーにかかわる要素のみを理由に、攻撃的な言葉を投げかけるヘイトスピーチ。日本でもここ数年、関心が高まっている問題と言えます。そこで今回は、東京都が実施した「人権に関する都民の意識調査」をもとに、都民がヘイトスピーチについてどのように感じているのかを見ていきます。
東京都では、「人権に関する都民の意識等を調査し、今後の人権施策をすすめていく」ことを目的に、都内に在住する18歳以上の男女5,000人を対象に「人権に関する都民の意識調査」を実施しました。なお、10代の18歳、19歳に関しては合計150人程度として、20代から70歳以上の年齢層および男女比は概ね均等に配分されています。
「ヘイトスピーチを伴うデモ、集会、街宣活動等を見聞きしたことがあるか」を聞いた設問では、「テレビ・ラジオ、新聞等のニュース報道で見聞きしたことがある」が43.9%で最多でした。直接見たことがある人は、「インターネット上の書き込みを直接みたことがある」が15.9%、「デモや集会、街宣活動等を直接見聞きしたことがある」が9.7%などとなっています。
なお、「見聞きしたことがない」という人も41.3%と少なくありませんでした。
あなたは、ヘイトスピーチを伴うデモ、集会、街宣活動等を見聞きしたことがありますか。―東京都「人権に関する都民の意識調査」より
では、実際にそうした「ヘイトスピーチを伴うデモ等に遭遇した経験を持つ人に、「デモ等を見聞きしてどう感じたか」を聞いてみたところ、「不愉快(で許せない)と思った」(38.7%)、「日本に対する印象が悪くなると思った」(34.2%)という回答が上位2つを占めました。
しかし、「いろいろな考え方、受け止め方がありうるので、特段問題ないと思った」という回答も25.4%で4人に1人の割合と少なくありません。また、「自分には関係ないと思った」という人も9.7%見られ、ヘイトスピーチに関してあまり問題を感じなかったり、関心のない人もいるようです。
そのようなデモ等を見聞きしてどのように思いましたか。―東京都「人権に関する都民の意識調査」より
ヘイトスピーチは日本だけでなく国際社会の問題と言えますが、国際人権法による定義はまだ存在していません。これは「意見と表現の自由」と「差別の防止」「平等性」の観点などにおいて、議論が続いているからだと言われています。確かに、表現の自由も重要な概念には違いありません。しかし、その表現が個人の尊厳を傷つけたり、権利や生命までも脅かすような場合においては、やはり大きな問題です。法務省でも、「ヘイトスピーチは、人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせることになりかねません。多様性が尊重され、不当な差別や偏見のない成熟した共生社会の実現を目指す上で、こうした言動は許されるものではありません」としています[*1]。また、平成28年にはヘイトスピーチ解消法も施行されています。
子どもがヘイトスピーチを見聞きすることもあるかもしれません。「自分がヘイトスピーチを受ける立場だったら」と、子どもと一緒に考えるのも大切なことではないでしょうか。
[参考]ヘイトスピーチとは?国連は次のようにヘイトスピーチを定義しています。「ある個人や集団について、その人が何者であるか、すなわち宗教、民族、国籍、人種、肌の色、血統、ジェンダー、または他のアイデンティティー要素を基に、それらを攻撃する、または軽蔑的もしくは差別的な言葉を使用する、発話、文章、または行動上のあらゆる種類のコミュニケーション」[*2]
また、日本におけるヘイトスピーチについて、法務省では「特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの一方的な内容の言動が、一般に「ヘイトスピーチ」と呼ばれています」と説明しています[*1]。
[*1]法務省:ヘイトスピーチ、許さない。[*2]国際連合広報センター:ヘイトスピーチを理解する:ヘイトスピーチとは何か
■人権に関する都民の意識調査/東京都総務局人権部調査対象:都内に在住する満18歳以上の男女5,000人(18歳・19歳は合計150人程度とし、20代から70歳以上の年齢層及び男女比は概ね均等に配分)調査時期:令和5年8月24日~28日
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