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夫婦共働き世帯が増え、「家事も育児も夫婦一緒に!」と考えているママやパパも多いのではないでしょうか。しかし、なかなか進まないとされている男性育休。総合住宅メーカーの積水ハウスが主催する「男性育休フォーラム2022」で公表された男性育休の現状と課題についてご紹介します。
「“わが家”を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョンに掲げている積水ハウスでは、男性が当たり前に育休を取得できる社会を目指しさまざまな取り組みが行われています。2018年には9月19日を「育休を考える日」に制定し、一般社団法人・日本記念日協会により認定、登録されました。
同社の男性の育休取得率は、驚きの100%。そこで得た知見を共有し男性育休の輪を広げたいという目的で、2019年より「男性育休フォーラム」が開催されています。
共働き世帯にとって、育休は非常に身近な問題。どういった課題があり、私たちにできることは何でしょう。マイナビ子育て編集部が男性育休フォーラムに参加しました。
昨年に続き、第4回目となる今回も積水ハウスが独自に調査した「男性育休白書2022」が公表されました。未就学児を育てる全国の20代~50代の男女9,400人を対象に行われた、男性の家事・育児力に関する実態調査の内容を抜粋してご紹介します。
最近は育児に協力的な男性が増えてきていると言われています。実際のところはどうなのか、白書では次の4つの指針を数値化し、都道府県別にランキングが公表されました。
1)男性が行っている家事・育児の数と、男性が子育てを楽しみながら、家事・育児に積極的に関与しているかという女性の評価2)育休取得日数を基準とした育休の取得経験3)女性から見た男性の家事・育児時間4)男性本人に聞いた家事・育児に参加による幸福感
気になる総合ランキングがこちらです。
男性育休白書男性の家事・育児力 全国ランキング2022(積水ハウス調べ)
1位は高知県で223点、2位は沖縄県で208点、3位は鳥取県で189点という結果に。人口が多い東京都は104点で31位、大阪府は130点で19位となっています。
議題となっている男性の育休取得経験の項目のみ調べてみると、全国平均は8.7日。最も長く育休を取得できているのが沖縄県で19.7日。東京都は14.8日で3位、大阪府は4.9日で37位、最下位は奈良県で2.4日でした。
地域によって大きな差があることがわかります。
育休の取得率を見てみると、今年は全体の17.2%の男性が育休を取り、昨年と比べると5%増えたとのこと。年代別では20代が24.9%と最も高く、ついで30代が21.1%となっています。
男性の育休取得率
取得日数も20代が13日、30代が10.5日となっており、若い世代ほど育休制度を利用しているようです。
男性の育休取得日数
コロナ禍によって新しい生活様式が提唱されるなかで、私たちの働き方も大きく変化していきました。リモートワークは男性の家事・育児時間を変える大きなきっかけとなったようです。
コロナ禍による家事時間の変化
コロナ禍による育児時間の変化
リモートワークの有無で比べると、家事・育児ともに20%以上もの差が開いていることが分かります。
またリモートワークを継続したい理由を調査したところ、約4割が「家事・育児に関与しやすいから」と回答。家事と育児に前向きな意見がある一方で、リモートワークをやめたい理由では約1割の人が「家事・育児に関与したくないから」という回答があったそうです。
リモートワークの有無と育休取得率にも大きな変化が。リモートワークをしていない男性の育休取得率が14.5%なのに対し、リモートワークをしている人は35%。リモートワークをしている人の方が育休を取りやすい傾向にあることが伺えます。
リモートワーク有無別、男性の育休取得率
リモートワークが男性の育児参加や育休取得に対してプラスに働く一方で、こんな声もあるそう。
実際にリモートワークをしている男女に「リモートワークで育休取得の必要性を感じなくなったか」を調査したところ、46.2%の男性が「必要性を感じなくなった」と回答。女性は27.7%と少なく、男女で考え方の違いが顕著にあらわれています。
リモートワークの実施で育休取得の必要性を感じなくなった
リモートワークがあれば育休は不要だと思いますか?夫婦の間で齟齬がないよう、お互いの考え方を共有するのもよさそうですね。
育休を取るかどうか悩んでいるとき、さまざまなことを不安に思う人も多いようです。今回の調査では、約6割の男性が「育休検討時に不安を感じた」と回答しました。
自分が育休取得を検討しているとき、不安を感じた
育休取得率が高かったのは20代と30代ですが、不安を感じる人が多かったのも同じ世代。「キャリアに響く」などの不安の声が一例として挙げられていました。
さらに育休に対する不安は、本人だけではありません。
男性の部下から育休取得を打診されたとき、不安を感じた上司/男性の同僚・上司が育休取得を検討しているとき、不安を感じた男女
男性の部下から育休を取りたいと打診された場合、上司も不安を感じるようです。女性よりも男性の方が不安に思う割合は高く、男性の同僚や上司が育休をとる場合も同様の結果となりました。
経営者や役員をしているマネジメント層(203人)は、男性の育休についてどう考えているのでしょう。白書にはマネジメント層が考える「男性社員が促進されない理由」も掲載されています。
男性の育休取得制度を「推進しない」理由(複数回答)
「企業規模が小さい」からと答えたのが43.3%、「他の社員の負担が大きい」からと答えたのが31%となっています。部下の男性の育休取得に対してなぜ不安に思うのか、その答えが見つかりそうですね。
ご紹介した内容は「男性育休白書2022」のほんの一部。育休の問題を考えるきっかけに、目を通してみてはいかがでしょうか。
男性でも当たり前に育休を取れるような社会にするためには、何をしたらよいのでしょう。フォーラム第一部の後半では、積水ハウスの仲井社長を含む5人の識者が登壇し男性育休の課題についてパネルディスカッションが行われました。
【登壇者】・ジャーナリスト/東京工業大学 准教授治部れんげさん・人事院総裁川本裕子さん・サイボウズ チームワーク総研 所⾧和田武訓さん・NPO法人 e-Education創業者/小布施町ゼロカーボン推進員税所篤快さん・積水ハウス 代表取締役 社⾧執行役員 兼 CEO 仲井嘉浩さん
「男性育休白書2022」では20代で4人に1人、30代では5人に1人が育休を取得している現状が公表されました。「特別なこと」ではなくなりつつあるなかで、子育て世代とその上の世代であるマネジメント層のギャップも浮き彫りに。育休を取る男性の上司などにあたるマネジメント層の意識や、態度を変えていかなければならないことも明らかになりました。
働く企業の中で何をしていけばよいのか、サイボウズ チームワーク総研から出された図を元にご紹介します。
組織から考えるマネジメント層へのアプローチ
サイボウズ チームワーク所長の和田さんによると、男性育休に対する取り組みは、企業のトップ層やマネジメント層だけではなく、一般社員の人々も意識を変えていく必要があるそうです。それぞれの立場になってできることを考えたとき、例えばトップ層は育休についてどう考えていくのかを社員に伝えることが大切。外部メディアにも発信していくことで社員の目に留まりやすい場合もあるそうなので、積極的に発信していった方がよいそうです。
マネジメント層は、実際に育休を取った男性社員の話を横展開していくことで、組織の中でより育休に対する理解を広げていくことが可能です。
子育て世代や若手社員の人は、SNSを使って男性育休について発信したり、声を集めるなどして、企業や社会へアプローチしていく方法もあるとのこと。
立場の違いがあっても自分にできることを考え行動することで、男性育休に対する見方は変えていけるのかもしれませんね。
本フォーラムを主催する積水ハウスは、2018年に男性育休を浸透させるプロジェクトを始動。本フォーラムの前身となる社内フォーラムを開催し、経営戦略として男性育休に取り組むと社長自ら宣言しました。
そのフォーラムには該当する男性社員とパートナー、さらに該当社員の上司も参加。約1,900人の社員とともに、有識者も交えた講演会などが行われたそうです。
男性社員の育休を分割で取れるようにしたり、育休中どのように過ごすかを家族で計画を立てる「家族ミーティングシート」を導入したりするなど、さまざまな取り組みの結果、積水ハウスでは男性の育休取得率100%が実現されています。
国家公務員の人事を担う人事院では、令和2年度から子どもが生まれたすべての男性社員が1ヶ月以上の育休を取得できるようさまざまな取り組みが行われています。
たとえば育休の対象職員がいたら、その上司に育休の取得計画に関するエクセルシートが届きます。育休が取得された場合にどうやって業務を進めていくかなどの項目を埋めていき、それが埋まらないとエクセルシートが閉められない仕組みとなっています。それらの業務を適切にされた場合、上司や関わる人自身の評価にもつながるとのこと。
男性の育休だからといって特別視せず、仕事の一環として取り組む様子が報告されました。
「男性育休フォーラム2022」では、男性でも育休を取得する人が年々増え、育休に対する不安とどう向き合うかに注目が集まりました。課題はいろいろとありますが、一人ひとりが前向きに検討し具体的な解決策を考えていくことで、気軽に育休が取れる世の中に変わっていけるのかもしれません。自分たちの子どもが同じ問題で悩まないよう、今自分たちにできることを考えていきたいですね。
(文:ライター みさと、編集:マイナビ子育て編集部)
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