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食生活が欧米化して飽食の時代になってから子供の肥満が増え、現在では約10%程度が該当するといわれています。将来の生活習慣病に繋がりかねない子供の肥満は、どうしたらいいのか。そこで、小児科医の森戸先生に子供の肥満対策について聞きました。
(※画像はイメージです/PhotoAC)
子供の肥満のほとんどは、摂取エネルギーが消費エネルギーを上まわることで起こる「単純性肥満(原発性肥満)」です。つまり、バランスの悪い食事、早食いや食べ過ぎ、おやつやジュースなどの取りすぎ、運動不足などによって起こります。
もちろん、子供は少しぽっちゃりしていても問題ありません。特に乳児期は母乳でも育児用ミルクでも欲しがるだけ飲ませる自律哺乳が基本です。でも、それ以降は成長曲線の正常域を大きく逸脱したり、肥満度が高い場合は注意が必要になります。
なぜなら子供の肥満は、将来の糖尿病や高血圧、脂質異常症に繋がり、それが動脈硬化を進めることで、心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクを高めるからです。
子どもの肥満は、主に肥満度を使って評価します。肥満度は、標準体重に対して実体重が何%上まわっているかを示すもので、下記の式で計算されます(カッコ内は幼児の数値)。 肥満度=(実測体重-標準体重)/標準体重×100(%)
50%以上(30%以上) 高度肥満30〜49.9%(20〜29.9%) 中程度肥満20~29.9%(15〜19.9%)軽度肥満-19.9〜19.9%(-15.1〜14.9%)正常-29.9〜-20%(-19.9〜-15%)やせ-30%以下(-20%以下)高度のやせ
幼稚園や保育園、こども園、小中学校などの教育施設での身体測定や健康診断の結果に、肥満度が記載されている場合がありますので、ぜひ確認してみてください。
ちなみに、うちのクリニックのある東京・台東区では、小4と中1で「小児生活習慣病予防健診」が行われます。身長と体重から肥満度を割り出すだけでなく、問診や血液検査などを行うのです。肥満度の高い子はもちろん、見た目ではわからない家族性高脂血症や糖尿病が見つかる場合もあり、とてもいい取り組みだと思います。
子供の肥満は、できる限り早めに発見して対処することが大切です。それは、以下のような理由からです。
①子供も肥満により病気になることがあるから生活習慣病になりやすいのは主に将来ですが、過度に太っていると、子供でも生活習慣病になることがあります。子供であっても動脈硬化は進みますし、また糖尿病になることも。長い人生を考えたら、早めに対処する必要があります。
②生活習慣が定着するとやせにくいからジュースや清涼飲料水を水のように飲む、カロリーの高い食事、おやつなどを頻繁に食べる、大量の食品を食べる、運動をしないなどの太りやすい生活習慣が定着すると、変えることが難しくなります。子供のうちであれば、保護者によって生活習慣を変えることが比較的容易です。
③体格が決まってしまうとやせにくいから身長が伸びる時期であれば体重を維持するだけで自然とやせていきますが、その後では体重を減らす必要があり、大変な労力がかかります。しかも、子供時代から太っていると、基礎代謝の落ちる中年以降さらに太ってしまうというリスクも。
日本小児内分泌学会のウェブサイトにも、幼児期からの肥満の25%、学童前期肥満の40%、思春期肥満の70〜80%が、成人肥満に繋がると書かれています。
ですから、早めに小児科や肥満外来などで相談し、なるべく早くから生活習慣を見直しましょう。
小児科や肥満外来を受診する際、普段の食事やおやつや運動の内容、身長と体重(成長曲線)を記録していたら、ぜひ持参してください。問診で、医師からそれらのことを聞かれるからです。生活のことを詳しくお聞きするのは、肥満の原因は必ず食事や運動などの生活習慣にあるから。実際、うちのクリニックに肥満の相談で来るお子さんも、必ず生活習慣に何らかの問題があります。
たとえば週に何回もファストフードを食べている、肉と炭水化物しか食べない、ジュースや牛乳を水の代わりに飲む、全く運動をしない、などです。それは太りますよね。太れば太るほど、運動が苦手になり、ますます運動不足になりやすいのも問題です。
ですから、バランスのよい食事をとる、野菜や魚を多めにとる、食事の量を増やさない(おかわりはしない)、飲み物は麦茶や水にする、親子で散歩をする、なるべく通学や通塾などで歩く、エスカレーターやエレベータではなく階段を使う、などをおすすめします。
さらに体重を毎日計り、増やさないことを目標にします。中学生くらいまでの子供は身長が伸びますから、無理なダイエットをしなくても、体重を増やさなければ自然とやせていくからです。もしも体重が増えたら、そのあとの食事を少し減らします。こうすると、適量が見えてきますね。
小児科や肥満外来に定期的に通い、親子できちんと取り組んでいけば、子供の肥満は解消することが多いでしょう。子供だけで生活習慣を見直すことはできませんし、現在はもちろん、将来の健康にもかかわることですから、保護者の方がぜひ一緒に頑張ってあげてください。
お話をお聞きしたドクター 小児科専門医/どうかん山こどもクリニック院長森戸やすみ 先生 一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。どうかん山こどもクリニックTwitter
この記事の執筆者 大西まお 編集者・ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な担当書に、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。■Twitterこの記事のライター
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