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東京の下町、台東区入谷。観光客でにぎわう浅草や上野に隣接するエリアだ。近隣のメジャーな街の陰に隠れがちで、ややマイナーな印象だが、いったいどんな街なのだろうか? 入谷をよく知るガイド役とともに、街を歩いてみた。
地元カフェオーナーと歩く入谷
今回、街を案内してくれるのは代々、入谷に住み続ける神谷僚一(かみや・りょういち)さん。神谷さんは、かつて玩具の街として栄えた地元の歴史を後世に残すため、入谷で昔ながらの玩具を取りそろえる「空想カフェ」を営んでいる。
さっそく、街を案内していただこう。
……と思ったら、開始早々、近所にある老舗の煎餅(せんべい)屋さん「花見煎餅」に立ち寄る神谷さん。まずは顔なじみの店主に、入谷の魅力について聞き込みをしてくれるようだ。
花見煎餅の店主さん「入谷って、今どんどん新しいマンションが建っているんですよ。これから歩けば分かると思うけど、浅草や上野に比べて落ち着いているし、生活にも便利な環境だから住みやすいんじゃないかな」
なるほど、これは散歩ががぜん楽しみになってきたぞ。
確かに店主さんの言うとおり、駅周辺、特に入谷駅前を走る昭和通り沿いには多くのマンションが立ち並んでいた。
花見煎餅の店主さん「昔、入谷には婚礼家具を扱う家具屋さんが多かったんです。でも、時代とともに需要が減っていき、今ではその跡地にマンションが建つようになりました」
マンションが増え、若いファミリーも増えているという入谷。神谷さんいわく、入谷は新入りにやさしい街だという。
神谷さん「入谷は朝顔市に代表されるお祭りが多いんですけど、新しい住民ってなかなか参加しづらいじゃないですか? そんなときは昔から住んでいる大家さんに町会を紹介してもらえばいいんです。というのも、この辺りは代々営んできた商店をたたみ、マンションを建てたケースが多いんです。街との結びつきが強い大家さんが、地元になじむきっかけをつくってくれると思いますよ」
下町には世話好きが多いとウワサに聞くが、入谷にもその文化はしっかり根付いているようだ。
入谷は、浅草・上野の「隠れ家的存在」?隣の浅草には観光客向けの飲食店や土産物店が多いが、入谷は生活のための商店がしっかりそろっている印象を受けた。街中のスーパーでは近隣に住む高齢者のために、購入した商品の宅配サービスを行っているそうだ。高齢者も多く暮らす地域に根差した、地元スーパーならではの心遣いである。
街のメインストリートでもある金美館通りには、新しい飲食店や、ドラッグストア、100円ショップも点在していて日々の買い出しに重宝しそう。なお、病院や保育園などの施設も徐々に増やしていく動きがあるそうだ。
ここで神谷さん、「休憩ならここがオススメです」と立ち止まった。「ジァン」という喫茶店で、行きつけだという。
コーヒー好きが高じて自らカフェを始めてしまった神谷さんだけに、気になった喫茶店には必ず立ち寄るそう。こちらも散歩中に見つけたのだとか。
静かな店内。コーヒーも薫り高く美味で、これは何時間でも入り浸ってしまう……。こうしたお店の存在も含め、にぎやかな周囲の街からエスケープできる場所が充実している。入谷って、なんだか隠れ家っぽい感じがする。
周囲の街の「おいしいところ」を享受できる神谷さん、今度は上野方面に向かって歩き始めた。
神谷さん「入谷の魅力って、となりの街の良さを享受できるところだと思うんです。上野・浅草はもちろん、鶯谷の周辺にも安くておいしい定食屋やラーメン屋、居酒屋が多い。ちょっとした散歩が、本当に楽しいんですよ」
鶯谷駅を通過し、東京国立博物館の脇を抜けて、たどり着いたのは上野恩賜公園の大噴水。入谷駅からは15分ほどの距離である。
神谷さん「上野公園にも歩いて行けるんですよ。園内では毎週末のようにイベントをやっていますし、夏は子どもたちが噴水で遊べるので親子連れにはもってこいです」
一方、上野と逆方向に歩くと浅草。こちらも徒歩圏内だ。
神谷さん「合羽橋というと調理器具のイメージですが、じつは食料品も豊富なんです。僕も散歩がてら、ここで買い出しすることも多いですよ」。ちなみに歩くのがしんどければ、バスを使うのも手。台東区内を循環するバス「めぐりん」は東西南北を網羅する4路線が運行。運賃も100円と安い!
入谷の家賃相場は?最後に気になる家賃相場をチェックしてみよう。入谷駅の一人暮らし向け賃貸物件の家賃相場は9.0万円。そこそこイイ金額だが、日比谷線のほかJR鶯谷駅も使える交通利便性や暮らしやすさ、環境の良さを考慮すると納得である。
というわけで、街歩きで見えてきた入谷の特徴をまとめると……
・世話好きが多く、新しい住民もなじみやすい
・昔ながらの味わい深い街並みは残しつつも、新しいマンションが増えている
・生活のためのお店がしっかりそろい、隠れ家的な喫茶店・カフェも多い
・浅草や上野など、徒歩圏内に魅力的な街が多い
改めてふりかえると、入谷はじつに「歩き甲斐のある街」だった。昭和通りを一本入った住宅街には古い民家や寺社なども多く、渋い銭湯も見受けられた。また、古民家を改装したようなカフェもあり、歩けば歩くほど、新しい魅力を発掘できる。街を探索し、深掘りしていく楽しみにあふれているのだ。長く暮らすほど好きになる、そんな街じゃないだろうか。
●調査概要この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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