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「加賀の伝統を新たな感性でもてなす」をテーマとした、石川県にある星野リゾートの温泉旅館「界 加賀」に、俳優でフォトグラファーの染谷ノエルが訪問。そこでの体験を2回にわたってレポートします。2回目は、日本独自の伝統技法「金継ぎ」や、ご当地楽「加賀獅子舞」など、「界 加賀」でしか味わえない体験のご紹介です。
【大浴場やご当地部屋の紹介をした1回目の記事はこちらから】
2023年4月19日には「金継ぎ工房」がオープンしました。金継ぎとは、陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる日本の伝統的な修復技法のこと。
「界 加賀」で使っている九谷焼などに欠けや割れが生じたときには、スタッフによる金継ぎで修復をしてきていて、これまでに修復した器の数は300を超えています(2023年1月現在)。
宿泊者限定で体験できる「金継ぎいろは」。経験豊富なスタッフが金継ぎの手ほどきをしてくれます。
金継ぎにまつわる文化を学び、実際に天然漆を使った伝統的な金継ぎ作業の一部分を教えてもらいながら体験。金継ぎには興味はあったものの、すごく難しいイメージがありました。ですが、丁寧に教えていただけたので心配は無用でした!
金継ぎ工房の中には金継ぎに使う道具の展示や、欠けてしまった食器たちを修復したものの展示なども。
スタッフにより修復された食器たちは、夕朝食の器や客室の茶器に使用されているので、実際に手で触れて使ってみることができます。丁寧な手仕事や器の奥深さに改めて感動します。
公式サイトをチェック >茶室を貸切で使用しながら、一人でゆっくりと自分の淹れたお茶を楽しむ「独服」体験。
小さな和室の中には、お湯が入った茶釜とお茶を淹れる道具、お菓子などが用意されています。淹れ方については手順を書いている紙があるので、その通りにすれば大丈夫。
いただくお茶は抹茶ではなく加賀で親しまれているほうじ茶、 「加賀棒茶」。茎を焙煎したお茶で、豊かな香りと自然な甘味が特徴です。
ここでは、浅煎りと深煎りの2種類が用意されているので、自分の好みはどちらなのか飲み比べを楽しめます。
こぽこぽ、と茶釜の中で沸くお湯の音。それを静かに掬い、お湯を注ぐ。お茶を蒸らす。お菓子を食べながら、自分の好きなお茶の味を探す体験。
ふと横を見ると、茶庭のやさしい緑。静かな空間で感覚を研ぎ澄ませ、お茶とも自分とも向き合える時間です。
「界 加賀」のご当地楽は、スタッフによる「加賀獅子舞」の華麗な演舞の鑑賞です。
客席後ろから大きな音と共に獅子舞が登場し、びっくり!大きな両眼が鋭く左右に広がった「八方睨」は、どの方向から見ても目が合います。見つめられると、ちょっと目を逸らしてしまいそうになるほどの迫力。
途中で獅子舞が頭をやさしく噛んでくれ、何か良いことが起きそうな予感…!
「界 加賀」は目を引く朱色の外観も見どころです。細かな木を縦と横に組み合わせた加賀地方の伝統的な 「紅殻格子(べんがらごうし)」を取り入れた伝統建築棟は、国の登録有形文化財です。
紅殻格子は、中から外はよく見えるのですが、外から中は見えにくいのが特徴。
夕方になり陽が落ちてくると、照明が灯され、伝統建築棟の風情が際立ちます。
伝統とモダンの融合を体現した3つの庭、前庭、中庭、茶庭。
前庭は、伝統建築棟に調和した、「あられこぼし」や「延段」など庭師の伝統技術を用いた、上質で洗練された空間です。
中庭は、加賀友禅をイメージしたタイル張り、兼六園に由来する徽軫灯篭(ことじとうろう)、能登半島に多いアカマツ、紅殻を使用した赤壁など、石川県の文化が凝縮された庭園です。
茶室へと続く茶庭は、山中を思わせる落ち着いた空間。中庭、前庭へと続く流れの上流部にあたり、豪快な滝石組みがあり見応えのある庭園です。
腰をかけて休める場所もあり、晴れの日は木漏れ日を、雨の日はしっとりした空気感を楽しめます。
玄関の暖簾を潜って中に入ると、広々としたスペースがあり、天井から加賀水引のオブジェ「光降る」が吊るされています。
はらはらと降り続ける金沢の牡丹雪をイメージしたもので、あわじ結びで作られた水引珠は約2500個、長さは7mにおよびます。水引の幻想的な世界が堪能できる圧巻の作品です。
トラベルライブラリーの窓からは茶庭を見渡せます。大きな窓ガラスから差し込んでくる木漏れ日の美しさは、つい時間を忘れて見惚れてしまうほど。やさしい陽の光に包まれて心が緩んでいきます。
地域にまつわる本や工芸品が並べられている本棚もあり、その上には大きな屏風が。
そしてダイナミックに書かれた「いろはにほへと」の文字。北大路魯山人が書いたものですが、途中でお酒を飲んで眠くなったため、「ね」までしか書かれていないのだとか。ここでも北大路魯山人の世界観に触れることができます。
ロビーに併設したSHOPでお土産探し。九谷焼のお皿やマグカップなど可愛い食器類がたくさんあって迷いましたが、職人によって丁寧に描かれた、九谷焼の犬の箸置きを選びました。
犬を飼っていたこともあり、また、色使いの可愛さにときめきました。ニュアンスや顔付きも一つひとつ違うので、お気に入りのものを選んでみて。
素敵な豆箱に入ったお菓子「しみみ」は、お土産に贈ると喜ばれること間違いなし。かりっとした食感のおかきの内側に、しゅわりとチョコレートがしみ込んだ、新感覚の和洋菓子です。
オリジナルのパッケージは「界 加賀」の玄関の絵と、獅子舞の絵の2種類。こちらも九谷焼の職人によって絵付けされていて、温かさを感じるお土産です。
「界 加賀」の印象は、やさしい・やわらかい・静か。
館内は工芸品や調度品に溢れていますが、気づけばそっと近くにいるという感じ。そして器一つからも、北大路魯山人の教えや、丁寧に金継ぎしたスタッフの想いなどが伝わってきます。
独服体験など一人で楽しむ前提のアクティビティもあるので、一人旅にもおすすめ。静かに自分と向き合うための時間を過ごせます。
深い歴史を感じるものに触れたり、体験したりする中で、自分の“好き”が見つかることでしょう。
界 加賀の予約はこちらから! ><住所>〒922-0242 石川県加賀市山代温泉18-47
<TEL>050-3134-8092(9:30〜18:00)
<駐車場>あり
<車>北陸自動車道「加賀IC」から約15分
<電車・タクシー>JR西日本北陸本線「加賀温泉駅」からタクシーで約10分
※この記事は2023年4月の取材内容に基づき執筆されています。時期により、イベントや食事などの内容が変更になっている可能性があります。詳細は「界 加賀」にお問い合わせください。
星野リゾートの温泉旅館「界」をチェック >染谷ノエル(Noel Someya) / 俳優・フォトグラファー
東京都出身。演劇を学ぶため中学卒業後に単身渡英し、ノーサンプトンのBosworth Independent Collegeなどに通う。4年半後に帰国、上智大学にて英文学を専攻。在学中より劇団、東京ジャンクZに所属、舞台俳優のキャリアは15年目を迎える(2023年時点)。写真は留学中、"Photography"の授業がきっかけで本格的に取り組むようになった。旅や日常をドラマチックに切り取る表現を得意とし、雑誌やWEBメディアなどでの作品掲載多数。 撮影、執筆、被写体の三役をこなすキャリアを活かし、取材、連載などでも活躍する。
Twitter: @noel_engeki
Instagram: @noelle.s12
STAFF
Photo&Writing:Noel Someya
Edit:michill編集部
この記事のライター
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