更新日:2024年8月2日 / 公開日:2024年7月27日
「彩りの渓流で伊達なひととき」をテーマとした、宮城県にある星野リゾートの温泉旅館「界 秋保」に、俳優でフォトグラファーの染谷ノエルが訪問。そこでの体験を2回にわたってレポートします。1回目は約1500年の歴史ある奥州の名湯による源泉かけ流しの温泉、大名会席といわれる食をご紹介。「界 秋保」の魅力をたっぷりとお届けします。
東北地方では青森の「界 津軽」に次いで2軒目となる、2024年4月に開業した「界 秋保」。宮城県仙台市の奥座敷・秋保温泉に位置する全室リバービューの温泉旅館です。奥州三名湯の⼀つに数えられる歴史の深い秋保温泉は、 約1500年の歴史をもち、天皇や藩主が身体を癒した温泉だそう。
自家源泉によるかけ流しの温泉、牛肉と海の幸が同時に楽しめるご当地グルメ、歴史ある土地ならではの伝統工芸品…など魅力満載。春から夏は新緑、秋は彩鮮やかな紅葉、冬には雪景⾊と、四季が際⽴つ名取川の景色が望める、どの季節にも訪れたい宿です。
界 秋保の公式サイトをチェック >秋保温泉の中でも奥まった、自然豊かな場所にある「界 秋保」。敷地内の2本の源泉は、体がよく温まり冷めにくいのが特徴の、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉です。
大浴場に行くには、数歩ほど屋外を通り抜けます。入浴前、入浴後に外の風を感じることができて、心地いいです。
屋内へ入っていくと、大浴場へ続く長い廊下が現れます。
大浴場へ向かう廊下の絨毯は青く、流れのように見える模様がまるで川のよう、と思っていたら、まさにモチーフは川とのこと。左右のガラス窓の外には緑が生い茂り、名取川をイメージさせます。爽やかで気持ちがいい廊下です。
2本の源泉をブレンドした自家源泉かけ流しの「あつ湯」(写真左)、心身ともにリラックスできる「ぬる湯」(写真右)。
とても広く、開放感がある空間の内湯。
梁や露天風呂など一部は、「界 秋保」として改装する前から使用されているとのことで、歴史を感じます。
内湯にいながらも自然を感じられる造りになっており、空と緑、柔らかい光がゆったりとした気分にさせてくれます。いつまででも入っていられそう。昼間は濡れた床に風景が反射して、絵画のようです。
木立に囲まれた露天風呂は、天気が良ければ綺麗な木漏れ日の中で入浴できます。川の流れる音や、お湯が流れるトポトポという音、光が差し込みゆらめく水面に一層安らぎます。
実際に入ってみると見ためより広さがあり、深さもあって、とても気持ちのよい露天風呂です。適温に調整された42度ほどの露天風呂は優しく身体を温めてくれます。
お風呂上りに廊下を進んでいくと、暖簾がある空間が現れます。ここは湯上がり処で、暖簾のイメージは滝なんだそう。淡い光が透き通り、美しくゆらめきます。
埋もれ木をイメージしたチェアも、存在感を放っています。“埋もれ木”は約500万年もの歳月をかけて川底や地中に埋もれた樹木が炭化した化石のような木材。名取川に沈んでいる埋もれ木は、かつては宮中や公家、将軍家へ献上された特産品だったそうで、香木として使っていたとか。
丸太のようなテーブルも特徴的です。
無料で提供されているアイスキャンディーをいただきながら、湯上りのひとときをゆったり過ごせる空間です。
湯上がり処で「界 秋保」の湯守りが、秋保温泉の歴史や泉質、効果的な入浴法などを説明してくれる「温泉いろは」に参加。戦国時代には伊達政宗が癒やしを求めて足を運んだとされる「秋保温泉」らしく、筆まめといわれた伊達政宗公にちなみ、書状を使って説明されます。
手元には、蓋付きの桶があり、開けると中には笹に包まれた自家源泉おしぼりが。手に取ってみると、熱く、笹と温泉のいい香りがふわりと漂います。
約1500年の歴史があり「名取御湯」と呼ばれる秋保温泉。この「御」という字は皇室が利用する温泉にのみ与えられる称号だそう。
敷地内の2本の源泉は約60°ほどであることや、秋保温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉であること、pH7.7の弱アルカリ性のお湯で、皮膚を優しく覆い、保温保湿効果があること、抗菌作用となる成分も多いことなどを学びます。
界 秋保からほど近い秋保神社では、毎年「湯立て神事」という行事が行われるそうで、神楽を奉納した後、釜で源泉をもくもくと沸かし、その湯煙でお祓いを行うんだとか。お祓いで用いた笹は無病息災の縁起物として、参拝者に配られるとのこと。おしぼりが包まれていた笹も、秋保神社でご祈祷された笹。無病息災を祈って、用意してくださっています。
風呂敷を神社に持っていくと、ご当地部屋の「紺碧の間」と笹をイメージした絵柄に、神社名と神印を押印した限定御朱印が購入できます。
「界 秋保」に宿泊後に、秋保神社へ行くコースがオススメです。
「界 秋保」は、全室が名取川を望むリバービューのお部屋で、秋保温泉の渓谷、磊々峡(らいらいきょう)からイメージされた紺碧色がキ―カラーのご当地部屋「紺碧の間」です。
どの客室も、大型の窓から、移り変わる四季の景色を楽しめます。まるでフレームで切り取られた絵画のよう。
渓流を望むスタンダードタイプのお部屋では、薄暮になるにつれて緑が濃く見えるなど、時間帯によって色が変わって見えます。窓は一部を開けることができ、鳥の鳴き声や風の音も感じられます。
夕方には紫色の空も見えました。大きな窓なので、思わずボーッと眺めてしまいます。
定員3名の「紺碧の間」和室は、広縁の手前の壁側に、広めのカウンターがあるので、景色を見ながらコーヒーやお茶など楽しむことができます。
カウンター前に飾られているのは、渓流の流れやきらめきを表現したお皿。
全てのお部屋に、このような仙台ガラスの作品が置かれています。色の濃さや気泡の入り方は、一つひとつ全て異なるそう。地元の素材にこだわり、川から土や砂利をとって作られているというガラスのアート。薄いグリーンがこの界 秋保とよく似合っていて、とても素敵です。
広縁のソファは、宿泊者が思い思いに過ごすことができるようになっています。窓を少し開けて、響き渡る鳥の声を聞いて風を浴びながら、お茶を飲んだりアイスやお菓子を食べたり、そのあとは横になったり…、そんなプチ贅沢も叶います。
ルームキーのキーホルダーは仙台の七夕祭りをイメージしたもの。部屋番号が刻み込まれた秋保石と、七夕祭りの吹き流しをモチーフとした飾りが使用されています。
ベッドルームとリビングが分かれている、4名まで泊まれるお部屋です。
4つのベッドが並ぶベッドルームとリビングの間のふすまは、閉めると川の流れを感じるデザインになっています。
ベッドサイドの窓辺には、一枚板で作られたテーブルが特徴の小さな書斎が。名取川を眺めながら、自分だけの時間を過ごすことができる空間です。この部屋に泊まったら、この書斎でお仕事したり本を読んだりしたい、そんなスペースです。
渓流を望む、1室だけの特別室「三日月の間」は、窓際のソファに座った時に見える、伊達政宗の兜の三日月をモチーフとした照明が特徴。
大きな窓から、名取川がよく見えます。
内風呂と、2つのベッドルームとリビングに分かれたゆったりとした客室で、大人数での旅にぴったりです。部屋を隔てる障子を開けるとより広々とし、ベッドルームの窓の障子を開けることで、リビングにもより光が多く入ってきます。
夕食は、お食事処でいただく会席料理。伊達の陣羽織をモチーフにした先付や、塗りの脚付膳に並ぶ華やかな料理が、大名気分をもたらしてくれます。
先付は「牛テールのディップ 仙台麩」。牛テールは仙台味噌で味付けされリエットに。仙台麩は初めて食べたのですが、とても美味しく、お菓子感覚で軽く食べられました。
煮物椀は「三彩真薯」。この日は春のイメージで、花麩、はなびら茸、木の芽の三色があしらわれていました。花びら茸の食感がとても良かったです。
「宝楽盛り」は八寸とお造りと酢の物が、塗りの脚付膳に並びます。
お造りは塩締めの銀ジャケ、ホタテ、本マグロ、ブリ。とても濃厚ながら、魚貝の味を引き立てるお醤油でした。
季節の八寸は、「ずんだの黄身まぶし」、「鱒の木の芽焼き」、「白魚真砂揚げ」、「蕨のお浸し 胡麻白酢」。金色のお皿に盛られたずんだの黄身まぶしは、枝豆をすりおろしたずんだを丸く固めて、卵の黄身をまぶしたもので、少し甘めの味付けです。
酢の物は、「北寄貝と若芽 土佐酢和え」。さっぱりといただきます。
揚げ物は「車海老の東寺揚げと野菜の天麩羅」。東寺揚げは乾燥ゆばを細かくくだいて衣にしたもの。
メインは小鍋の「牛の山海俵鍋」。宮城県が海と⼭の幸が豊富な地であり、⽶どころでもあることから、俵型をイメージして巻かれた牛肉をトリュフが浮かぶ出汁にくぐらせ、雲丹を添えて楽しむお鍋です。牛タンと牛ロースの2種が盛られています
スープは、野菜やお肉を数日間煮込んだ後で取り出し、新たな出汁を入れて煮込み、旨みを引き出したもの。黒トリュフを先にお鍋に入れて風味を出し、お肉や野菜などをしゃぶしゃぶで楽しみます。
山のものと海のもの、そして牛肉に雲丹を添えていただく、大変贅沢なメニューです。
お食事は、伊達政宗をイメージした土鍋で炊いたごはんと大きな牛タンたっぷりの「牛タン柔らか煮」。仙台味噌が隠し味です。ビーフシチューのようでとても美味しい。
ごはんはもち麦入り。プチプチとした食感が楽しめます。牛タン柔らか煮とテールスープとともに。
デザートは「ずんだと蔵王ヨーグルトの松島仕立て」。ずんだのソースを海に見立て、中央に盛られたのが松島を見立てた蔵王ヨーグルトといちご。松島には梅の木、臥龍梅(がりゅうばい)の伝説があり、そのため梅のジャムが添えられています。お味は濃厚でした。
今回は、ご当地部屋「紺碧の間」や大浴場など施設の情報をたっぷりとご紹介しました。
「界 秋保」で体験できるアクティビティを紹介した記事も、併せてチェックしてみてくださいね。
界 秋保の予約はこちらから! ><住所>〒982-0241 宮城県仙台市太白区秋保町湯元平倉1番地
<TEL>050-3134-8092(9:30〜18:00)
<駐車場>あり
<車>東北自動車道「仙台南IC」から約25分
<電車・バスorタクシー>JR東日本「仙台駅」から路線バスorタクシーで約30分
※この記事は2024年7月の取材内容に基づき執筆されています。時期により、イベントや食事などの内容が変更になっている可能性があります。詳細は「界 秋保」にお問い合わせください。
星野リゾートの温泉旅館「界」をチェック >染谷ノエル(Noel Someya) / 俳優・フォトグラファー
東京都出身。演劇を学ぶため中学卒業後に単身渡英し、ノーサンプトンのBosworth Independent Collegeなどに通う。4年半後に帰国、上智大学にて英文学を専攻。在学中より劇団、東京ジャンクZに所属、舞台俳優のキャリアは15年目を迎える(2023年時点)。写真は留学中、"Photography"の授業がきっかけで本格的に取り組むようになった。旅や日常をドラマチックに切り取る表現を得意とし、雑誌やWEBメディアなどでの作品掲載多数。 撮影、執筆、被写体の三役をこなすキャリアを活かし、取材、連載などでも活躍する。
Twitter: @noel_engeki
Instagram: @noelle.s12
STAFF
Photo&Writing:Noel Someya
Edit:michill編集部
この記事のライター
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