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普段何気なく買っている市販薬。その選び方、使い方、本当に合ってますか…?そんな疑問をmichill編集部員が薬剤師の三上彰貴子さんに聞いて解決しちゃう企画がはじまります!第1回目の今回は、編集部の中でも使っている人が圧倒的に多かった頭痛薬の疑問に迫ります!
ドラッグストアにはいろいろな症状に合った薬がたくさん売られていて、手軽に使えますよね。普段何気なく買っているドラッグストアで売っている市販薬。
でもその選び方や使い方に迷ったことはありませんか?
そんな「お薬の疑問」、薬剤師の三上彰貴子さんに解決してもらいましょう!
編集M 三上さん、第1回目は頭痛薬の疑問です!よろしくお願いします!
三上さん よろしくお願いします!
編集M まずは頭痛薬の選び方からなんですが、編集部ではとにかく高いものや「プレミアム」みたいなのがついてるものが効きそうということで選んでいる人が多かったんですが、高い頭痛薬と安い頭痛薬、何が違って、何を基準に選べばいいのでしょうか?
三上さん そうですね。確かに選ぶポイントは価格が大きいですよね。でも、値段が高いから効いたり自分に合うというわけではありません。
それぞれそこまで大きな違いはないのですが、以下のような切り口で選んでいただくといいかもしれません。
①飲み慣れているかどうか
元も子もないですが、今まで飲んでいて特に問題がなく効いているようでしたら、同じ薬をずっと続けるのもいいでしょう。ドラッグストアによっては、同じ成分で安価なPB(プライベートブランド)が売られている場合もありますので、値段が気になるなら同じ成分のお手ごろな方に変更してもいいですね。
②15歳以上かどうか
市販の頭痛薬の成分で、15歳未満が飲める成分はアセトアミノフェンだけです。ですので、14歳までの頭痛や生理痛などの痛みには、アセトアミノフェンを主成分にしている製品を選びましょう。「ノーシンピュア」「バファリンルナ」「タイレノール」などですね。
コロナで耳にした人もいるかと思いますが、「カロナール」の成分も同じアセトアミノフェンです。
比較的副作用のリスクが低いので安全に飲める薬ですが、肝臓が悪い方は飲めませんので、医師に相談してみてください。
③痛み以外の症状に合わせて選ぶ
イライラしてしまう、眠気が気になる、胃が弱いなど他に気になる症状があるかがポイントになることも。
一概に言えませんが、「プレミアム」や「EX」などが名前についていると、鎮痛剤以外の成分が入っている場合があります。
イライラがある場合には鎮静成分が含まれているものを、生理痛があって眠くなるという人は、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロモバレリル尿素の鎮静成分が入っていないもの(鎮痛成分のみのもの)、または無水カフェインが入っているものがおすすめです。
④炎症からくる痛みの場合
歯痛、生理痛、のどの痛みなど炎症の痛みにはイブプロフェン、ロキソニン、アスピリンが主成分のものがおすすめです。アセトアミノフェンですと少し弱いと感じてしまう人もいます。
⑤「生理痛」で、生理の時に特にお腹が緩くなる人は
適応症が生理痛に特化しているのですが、エルペインコーワという薬があります。鎮痛成分のイブプロフェンと子宮収縮を抑えるブチルスコポラミンが入っています。
また、漢方でも生理痛に効果のあるものがあります。芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)などがありますが、生理痛になってからでは効いた感じがしないことの方が多いため、生理になる1週間ぐらい前から服用しておくといいようです。
肩こりからくる頭痛などには風邪薬で有名な葛根湯(かっこんとう)が効くこともあります。
生理痛に関する漢方は他にも当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)など、痛みの原因や体質に合わせて選ぶ必要がありますので、自分で買う場合には薬局で薬剤師に相談してみてください。
編集M よく「有効成分〇mg配合」みたいなCMを見るんですが、そもそも有効成分ってなんですか?多ければいいんでしょうか…というか多い少ないってどこで判断できるんでしょうか?
三上さん 有効成分の説明が後になってしまいましたね(笑)。
有効成分とは、文字の通り「効果をもたらす成分」ですが、この場合は「解熱鎮痛成分」のことです。もちろん、同じ有効成分でしたら多いほうが効果は高くなります(または持続時間が長くなります)。ただ、違う成分の場合は、量の多さだけで効果は比べられません。
解熱鎮痛剤の有効成分は、市販薬ではアセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェン、イロプロピルアンチピリン(IPA)などがあります。それぞれ多少の違いがありますが、医薬品として解熱鎮痛効果が認められた成分です。
量が多い少ないというのは、「処方薬と比べて」ということになります。
市販薬は処方薬と違って、使う人の判断で購入して飲める薬になります。そのため、副作用のリスクが少なくなるように、処方薬より有効成分量を減らしている製品が多いんです。
その後、安全性が確認されるなどで、徐々に有効成分量を増やして処方薬と同じ量にしている製品もあります。(1つの錠剤に含まれる量は処方薬より少ないままでも、1日に飲める量を処方薬と同じにしている成分もあります。)
同じ成分でしたら多いほうが効きますが、違う成分でしたら残念ながら量での単純比較はできません。
有効成分以外に含まれる成分(胃薬、鎮静剤など)も併せて自分の症状にあった製品をみつけましょう。
編集M よく頭痛ががまんできなくなって薬を飲むんですが、効いてくるのを今か今かと待ってるけれどなかなか良くならなくて…。通常飲んでどれくらいで効いてくるんでしょうか?
三上さん そうですね。個人差がありますが、だいたい早くて15~30分、遅くても2時間ぐらいで効き目を感じるとは思います。でも、痛くて飲んでいるのに、なかなか効かないと辛いですよね。
鎮痛薬は服用するタイミングが大事です。「痛くなりはじめたな」「痛くなりそうだな」と感じたら、早めに服用しましょう。痛みが酷くなってから飲むと効くのに時間がかかり、効かないように感じてしまうことがあります。
痛みは、痛みを感じさせる物質(ブラジキニンなど)が作られて、それが神経から脳に伝わって痛い!と感じます。鎮痛剤は、その「痛みを感じさせる物質」が作られるのを抑えることで、鎮痛効果をもたらします。
そのため、痛みを感じさせる物質がたくさんできてから薬を飲んでもなかなか効かない感じがしてしまうのです。
ただ、同じように早めに飲んでいても、なかなか効かなくなってきたり、痛みが酷くなってきている場合には、何か病気が隠れている可能性がありますので病院に行ってくださいね。
編集M よくお酒を飲むと頭痛がするんですが、そういう時に頭痛薬って飲んでいいんでしょうか?アルコールと一緒に飲むのはよくないっていうのは何となく知っているんですがお酒を飲んでからどれくらい時間が経てばいいんでしょうか?
三上さん 飲酒での頭痛は、お酒により血管が広がることで神経に触ってしまい痛みを感じてしまったり、血管の周りの組織などがむくんで神経を圧迫してしまうことが一因です。
お酒を飲んでいるときに頭痛を感じたら、頭痛薬として解熱鎮痛剤を飲みたくなるかもしれません。が、前述の有効成分として紹介した解熱鎮痛薬はお酒を飲んでいる状態では飲まない方が良いですね。
お酒との同時摂取により成分が変わってしまう可能性もありますし、解熱鎮痛成分は胃を荒らす副作用もありますので、ただでさえアルコールで胃壁が荒れてしまうので胃にもとても良くないです。
お酒を飲むと起こる頭痛には、「五苓散(ごれいさん)」という漢方をお勧めします。体内の水の巡りに関係して、頭痛や吐き気などに働きかけますし、二日酔いなどにも効果があります。
ただ、そもそもお酒を飲んで頭痛がするようでしたら、その時の体調もあるかと思いますが無理をなさらずにお酒を控えてくださいね。
そして、翌日の二日酔いの頭痛には、解熱鎮痛剤を使ってもいいですが、胃が荒れていると思いますので、水分を多めに飲んでください。胃が弱い人は、特に胃薬を一緒に飲むといいですね。
なお、二日酔いはアルコールによる脱水も一因。飲酒の際に、一緒に水分を摂りながら、または飲酒後に水分を多めにとると症状が軽くなるようです。
編集M 頭痛薬を頻繁に使っていると耐性ができてしまうと聞いたことがあるんですが、本当ですか?どれくらい飲み続けるとそうなるんでしょうか?
三上さん そうですね。生理痛や頭痛、歯痛など短期の痛みで1か月に数日~一週間程度使うなら、個人差はありますがそこまで問題にはならないでしょう。1か月に10日、特に14日を超えて使うと薬剤性頭痛といって、敏感になりすぐに頭痛になってしまったり、なかなか効かないと感じることが多くなる可能性が高まります。
そもそも1か月に10日以上頭痛が起きたり、続いたりする場合には、自己判断で市販薬を飲まないで、一度きちんと受診をしてください。生理痛もだんだん薬が効かない、飲む回数が増えるようであれば医師に診てもらいましょう。
痛みは体が発する危険信号です。何か根本的な疾患がある可能性も考えられます。
「薬は体によくないと言って、ひどい生理痛や頭痛でも薬を飲まずに我慢してつらそうな人を目にすることが多々あります。鎮痛薬は1か月に数日正しく飲むのでしたら特に問題はありません(その薬にアレルギーがある人以外)。
痛くてイライラするより痛みを止めて快適に過ごした方が自分も周囲も楽になるでしょう。
もちろん、ドラッグストアなどで気軽に手に入る鎮痛薬ですが、使い方によってはとても危険なことがあります。また、痛みは何か原因があって起こることですので、痛みを止めるだけでは原因が解決しないこともあります。
鎮痛剤を飲んでも痛みが何日も治まらない、痛みが酷くなる、いつもと違う痛み、という症状があれば、必ず受診をしてくださいね。
薬を購入する際にも、分からないことがあれば、薬局の薬剤師や登録販売者に気軽に聞いてお薬と正しくお付き合いしてください。」
今回は頭痛薬の疑問に薬剤師の三上彰貴子さんに答えていただきました!
普段ちょっと疑問に思っていてもそのままにしてしまっていたことも、プロに聞いてスッキリ解決!
安心で安全なお薬ライフをおくりたいですね!
三上彰貴子/薬剤師
外資系製薬会社勤務後、慶應義塾大学にてMBA取得。卒業後、朝日アーサー・アンダーセン(現PWC)にて主に医療分野のコンサルティングを手がける。2005年より独立し、株式会社A.M.C代表取締役となり、製薬会社・化粧品会社関連のマーケティング、人財育成セミナーなどを行う。現在は、薬科大学博士課程にて研究も行う。 その他、薬局薬剤師、登録販売者向けの講師、薬科大学非常勤講師としても活躍中。
この記事のライター
薬剤師
三上彰貴子
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外資系製薬会社勤務後、慶應義塾大学にてMBA取得。卒業後、朝日アーサー・アンダーセン(現PWC)にて主に医療分野のコンサルティングを手がける。2005年より独立し、株式会社A.M.C代表取締役となり、製薬会社・化粧品会社関連のマーケティング、人財育成セミナーなどを行う。現在は、薬科大学博士課程にて研究も行う。その他、薬局薬剤師、登録販売者向けの講師、薬科大学非常勤講師としても活躍中。
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