更新日:2018年11月9日 / 公開日:2017年8月4日
配偶者を社会保険(健康保険・公的年金)で扶養家族とする場合、「夫が妻を扶養」というイメージを持たれる方は多いのではないかと思います。 では、逆のパターン、社会保険で「妻が夫を扶養」することは可能なのか?社会保険労務士の浦野さんが教えてくれました。
職場での社会保険(健康保険、厚生年金)には収入が一定基準(年収130万円)未満であれば、配偶者を扶養家族とすることができます。
扶養家族と認められれば、健康保険では保険料負担ゼロ。
公的年金では、国民年金第3号被保険者として、年金保険料の負担ゼロで、年金を受給する際、公的年金の1階部分は加入年数に応じた金額を受け取ることができます。
実は、このルール、男女は関係ありません。夫が妻を扶養することはもちろん、妻が夫を扶養としても問題ありません。
妻が会社員(公務員)で、夫が専業主夫もしくは収入の少ないパートであれば、社会保険(健康保険・公的年金)に、夫が“妻に扶養される配偶者”として加入することができます。
収入の基準である年収130万未満ですが、社会保険では、「これから1年間で130万円未満か?」というのが基本的な考え方です。
ですので、夫婦共働きで、夫が離職してしまった場合、暦の1年(1月~12月)では年収130万円以上だけど、次の職場が決まっていないのであれば、これから1年の収入見込みが130万円未満ということで、社会保険では「夫が妻に扶養される状態」(夫が被扶養者)と申請することは可能です。
但し、失業保険を受給している期間は、収入ありとみなされてしまうので、原則、扶養家族とはなりません。
夫が自己都合退職の場合は、給付制限のかかる3ケ月は扶養家族、その後、失業手当受給期間は扶養から外れ、失業手当をもらいきって、それでも次の仕事が決まっていない場合、改めて扶養家族としての申請が可能になります。
また、病気・怪我が理由で離職し、在職中の健康保険からの傷病手当金、労災保険からの年金を受給している期間も「収入あり」ですので、社会保険では扶養とはなりません。
ちなみに、税では健康保険や労災保険からの給付は収入とみなされないので、社会保険とは考え方が異なっています。
妻が会社員、夫が個人事業主として起業した場合も、起業当初、生活に十分な収入を得ることが難しい場合、夫が妻の被扶養者となることができる場合があります。
基準は同じ年収130万未満。
但し、妻の健康保険が国が運営する「協会けんぽ」なのか、「健康保険組合」なのかによって、収入の考え方がかなり異なり、実質的な基準は違いがあります。
・国が運営する協会けんぽの場合、
年収130万円未満の「年収」は「売上-必要最小限の経費」というのが基本です。
気をつける点は、税では収入から差し引きできる経費と認められても、社会保険では経費とみなされないものがあります。
税の「所得」では「青色申告特別控除」(年最大65万円)を、所得から差し引くことは可能ですが、社会保険では認められません。
また、接待交際費や広告宣伝費も経費とは認められません。
実際のところ、売上から差し引けるのは原材料費・運搬費・人件費(自分以外)位のようです。
細かい基準については、申請前に、協会けんぽに確認されることをお勧めします。
・健康保険組合の場合は、基準は各組合により違っています。
配偶者が自営業の場合は扶養家族と認めないという基準の組合もあれば、協会けんぽ同様「売上-必要最小限経費」で130万円未満なら認める組合もあれば、経費は考慮せず、売上が130万円未満の場合のみ認める組合など様々です。
純粋な年間売上130万円未満かどうかで判断する組合が多いようですが、こちらも協会けんぽ同様、申請前に所属している健康保険組合に確認が必要です。
尚、夫が、個人事業主ではなく法人として起業した場合、法人は社会保険に加入する義務があるので、夫が妻の扶養となることは基本的に無理です。
市町村が運営する国民健康保険では、そもそも被扶養者という仕組みがありません。
国民年金第3号被保険者も第2号被保険者(会社員・公務員)の配偶者であることが条件ですので、妻が第1号被保険者の場合は、夫の収入が少なくても第3号被保険者となれません。
自分自身が加入している制度によって、配偶者を扶養家族とすることができるかどうか、基準は様々です。
まずは、自分がどのような制度に加入しているか?基準はどうなっているのか?確認するところから始めるとよいでしょう。
この記事のライター
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