/
今まで事務しかやったことがなく、自分をどうPRすべきかポイントがわからない…。転職を考える女性が突き当たる一つの壁。今回の回答は事務職しか経験がない人はもちろん、あらゆる職種の人にとって有益なアドバイスになりそうです。キャリアの「裏」を知り尽くした松本利明さんの回答とは!?
今回の悩み人 Aさん 33歳。
育休明けと同時に、社員数30名のIT企業事務職を退職。
現在、再就職先を探し中
印象面でしか判断してもらえないのはもったいない
人事の立場で、職務経歴書のチェックや面接に立ち会うと感じることですが、応募してくる人は「自分がやってきた仕事内容」を話し、「これが得意です!」と自己PRばかりしてきます。90%以上の人が同じようなことを言ってくるので、印象や記憶に残らないのが実態です。なので「なんとなく感じがよかった」などといった印象面でしか判断してもらえないのはもったいないことなのです。
では、どうすればいいか。
やってきた仕事の内容そのものではなく、その仕事を通して「どう喜んでもらえたか」、どんな「ありがとう」を言ってもらってきたかを話せばいいのです。
・いつも作業を速く行ってくれてありがとう
・いつもちょっとした工夫をしてくれて、みんなの作業を楽にしてくれてありがとう
・いつもちょっと先回りして気を利かせてくれてありがとう
など、人によってこれまで周りからどう「ありがとう」と言われてきたかは違うものです。
この「ありがとう」が、あなた独自の「提供価値」、簡単に言うと「持ち味」になります。
自分がどんな「ありがとう」を提供できるかはもちろんですが、企業側が求める「ありがとう」も様々です。
企業側がどんな「ありがとう」を探しているかは、業界の特徴を調べたり、googleでその会社のことを調べたり、その会社に知人がいなくてもSNSなどを通して内情を知ることはできるので、探ってみるといいでしょう。
企業側が求める「ありがとう」と、あなたが提供できる「ありがとう」が違うなら、入社しても肌感覚が合わず、企業側が期待するほど、あなたのパフォーマンスが出せない可能性が高くなります。自分の持ち味を活かせそうな会社を探しましょう。
次に、その「ありがとう」と言われてきた根拠を示す必要があります。
「仕事がいつも速くてありがとう」と言われてきたのか、「仕事がいつも正確でありがとう」と言われてきたのかでは、その裏付けとなる根拠は異なります。
まずは、「ありがとう」と言われてきた裏付けを、事前に洗い出して整理しておくことをお勧めします。ぶっつけ本番では中々出てこないものです。
「正確でありがとう」と言われてきたなら、
・誤字脱字が一度もなかった
・ミスコピーは3年間で3枚しかなかった
などの、事実をたくさん洗い出しておくことです。根拠を表す時は「形容詞は禁句」です。
・いつもそうでした。
よりも、
・正確性においては、社内で一番で3年間で2回社内表彰された
というように、事実を示す時は「数字(3年間で2回)」や「名詞(社内表彰)」を入れると相手の信頼感は高まります。
あなたが入るとどう役に立つのか(どんな「ありがとう」を言ってもらえるのか)と、その根拠を書類の自己PR欄の一行目に入れると人事の目に確実にとまり、書類審査が合格する率も高まります。面接の時も同様です。人は第一印象で、ある程度判断されてしまいます。最初に「自分はどう役に立てるのか」と、「その根拠」を30秒くらいで伝えておくと、そこから話が広がったり、深まったりするので、あなたにとって有利な状況で面接を進めることができるのでお勧めします。
ご自身が経験してきた職務内容を説明することも自己PRと同様です。やってきた仕事の中身を順番に全て説明することは必要ありません。事務作業で担当した作業について話を聞いても、面接官はこの人が入社後どう活躍してくれそうなのかイメージが掴めないからです。
大事なことは、やってきた職務内容そのものではなく、それによって「どんな結果」を出してきたかです。
その職務を通して「どんな結果」を出してきたのか、「どんなありがとう」を言われてきたかに重きを置いて話すといいでしょう。
繰り返しになりますが、自己PRとなると、「社交性が高い」などと形容詞で表現しがちです。
「かわいい」と言っても、人によって判断が異なるように、形容詞では面接相手にはこちらの意図が正しく伝わりません。
逆に面接する側から見ると、「社交性が高い」「いつも明るい」などと形容詞で自分を褒めるようなことは、ある意味「私は美人で可愛くてスタイルがよく…」などと言っているような印象を持たれてしまいます。
経営者や人事は、形容詞で表現されるPRではなく「どう役に立ち、その根拠がしっかりしていて、この人と働きたい」と事実を伝えてくれる人を採用したいと考えています。しかし、大多数の応募者は「私は美人で可愛いです系」のPRをします。人はいきなりふられると形容詞でアバウトに表現してしまうものです。数字、事実、名詞で語るには事前に準備が必要です。今回お伝えしたコツを使えば、頭ひとつ抜け出すことは実は簡単なのです。
※写真はイメージです。
この記事のライター
松本利明
457
人事コンサルタント。東京ワーキングママ大学アドバイザー。PwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系人事コンサルタントを経て現職。日系、外資系の大手から中堅企業の600社以上の人事プロジェクトに従事。5万人のリストラと6千人のリーダー選抜に関わる人事の目利き。人事の裏を知る視点からのキャリア論がオリジナルで好評。特にワーキングママ向けのキャリア・アドバイスの講座は常に満席。寄稿、出版、講演多数
ライフスタイルの人気ランキング
新着
カテゴリ
公式アカウント