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日本はセックスレス大国だ、とよくいわれる。一般的に、健康な男女のカップルに「1カ月以上、性交渉やセクシャルコンタクトがないこと」をセックスレスという。国内の既婚男女におけるセックスレス・カップルの比率が50%弱、つまり2組に1組がレスになっているとする調査結果もある。

数字だけ見るとセックスレスはちっともめずらしくない。双方ともにしたいと思っていなければ特に問題はないが、片方がしたいけどもう片方はしたくない、という場合が困る。セックスがないことでふたりの関係そのものに影響を及ぼすことも少なくない。
性生活に関する調査を見ると、「なぜしないのか」を訊ねる項目が必ずある。「面倒」「疲れている」などがメジャーな回答で、日本の労働事情を考えるとそれも無理はないと思わされる。
その一方で、なぜか「したい」理由を問われることは少ない。したいのは「性欲」ゆえだと思われているのだとしたら、とんでもない。したい人の背景だって、いろいろある。
サトミさん(40歳)と3歳下の夫とのあいだには、いまはまだセックスがある。いまはまだ、というのは、今後なくなってしまうかもしれないとサトミさん自身が予感しているからだ。現在は、月に1回あればいいほう。サトミさんはこのペースを不満に思っている。
「10年前に結婚した当初は、週2ぐらいでした。でも、夫にその気がなくなっちゃって」

「周囲の友人に聞くと、家事育児に追われている妻のほうがしたがらないっていうのがパターンみたいですけど、ウチは逆。まだ手のかかる子どもが2人いて私が育児に追われているぶん、夫は家事をかなり引き受けてくれます。仕事もフルタイムでしているうえでの家事労働なので、疲れているのが原因かも……。でも、夜中にずっとゲームしているときもあるんですよね」
そう話すサトミさんにも仕事がある。近隣にきょうだいが経営する飲食店があり、そこを手伝っているが、子どもを保育園に送ってから仕事、子どもを寝かしつけてから仕事、場合によっては早朝から仕事……といった調子で自分自身の時間はほとんどない。
「お互い忙しいせいもあるのか、夫とのあいだに子どもの両親としての会話はあっても、大人の男女としての会話はほとんどないですね。ふたりで出かけるのは3カ月に1度あるかないか。どこの家庭もそんなものなのでしょうが、こんな調子だからたまにセックスするときもムードはゼロで、『今夜する?』『ああ、いいよ』で始まって、終わったら『じゃ、おやすみ』といって寝る。私はもともとムードを必要としていないのですが、それでもあっさりすぎだなぁと苦笑することがあります」
ハウツー本には「話し合いが重要」とあるが、サトミさんの場合は

筆者はこれまでハウツー・セックス本を何冊か作ってきたが、そうした本では「セックスレスになってから復活させるのはとてもむずかしいので、そうならないように予防を」と書いてある。さらにはセックスレスにならないためにも、「ふたりでよく話し合いを」と続く。けれど、話し合うべきだとわかっていてもそう簡単に話せない、という声が多い。しかしサトミさんは、
「ウチは膝を突き合わせて話し合いましたよ、何回も。けれど、どれだけ話しても平行線。する日程をあらかじめ決めておこう、っていう案も出たんですけど」
忙しいふたりだから、その日に向けて予定を調整していくという考えなのだろうか。
「はい。でも、それって味気ないねって話になっちゃって」
そしてこの方法では、セックスレスになった理由の根本的解決にはつながらない。
「夫は、もう性欲がないそうですよ。私も結婚当初と比べると減ってきてはいますが、それでも週1ぐらいではしたい。いまのままでは欲求の持って行き場がないから不倫するしかない、と考えたこともあります。マッチングアプリを試したこともあるんですが、会うまでにも至りませんでした……それというのも、私が潔癖症だからです」

恋愛やセックスに対して潔癖で、それは子どものころの体験に根ざしているーーとサトミさんは自分のことを分析する。サトミさんの母親は、常に男性に依存して生きていた。家にもしょっちゅう男性を呼び入れ、子どもの前でもお構いなしでイチャイチャしていた。小学生だったサトミさんは、母と男とのセックスまで目撃している。
これだけでも虐待に相当するが、母の再婚により義理の父親になった男性から性虐待を受けた。サトミさんはそのときから男性を信じられなくなった。
「10代のころは意識して男性を遠ざけたこともありますが、そのうち彼氏ができ、セックスを知って潔癖症も少しはやわらぎました。だけどいまも、すごく性にとらわれてしまうところがあるんです。性虐待を受けた人によく見られる現象らしく、潔癖症になったり依存症になったりするそうです。私の場合はその両方。仕事にはずっと依存しているし、若いころからセックスにも依存してきました」
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OTONA SALONE|オトナサローネ
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