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後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり…後編です。
<<この記事の前編:愛の感じられない不倫相手。それでも彼女はセクシーな写真を送り続ける…

I子と彼が出会ったのは、会社の部署が開いた忘年会だった。たまたま隣になり、意気投合したとという。
二次会でも、I子と彼は話し続けた。彼が既婚者であることはすぐに知れたが、「そんなことより、彼の体がね」、とI子は恥ずかしそうに目を伏せながら話す。
I子にはもう何年も彼氏がいなかった。会社と家の往復で出会いもなく、単調な暮らしを続けながら、一方で高まる性欲に苦しむ日々を送っていた。はけ口にするのは、スマホで読める漫画や深夜にこっそり観る大人向けの動画。以前、インターネットのセキュリティについて質問されたとき、そういう界隈のものにアクセスしていることは知っていた。
そこで目にするたくましい男優の体が、I子の飢餓感をさらに深くさせた。恋もしたいけど、ベッドで快感を貪りたい。そんな出口のない欲で悶々としているときに彼と出会い、ゴルフで鍛えたという筋肉の乗った体に、まずI子は目を奪われた。
「でも、写真はマズいでしょ。どこに流されるかわからないのに」
そう言うと、「わかってるけど……」と返しながらI子の目が揺れる。顔がわかるこんな写真を不倫相手に簡単に渡してしまうことは、それだけ弱みを握られることにもなる。万が一、彼が危険な男だったら。
▶彼の肉体にのぼせ上がって
「せめて顔は写さなくてもいい?」とI子がお願いしたとき、彼は「顔が写ってないと興奮しないから」とあっさり却下したそうだ。こんな写真を求められるようになったのは、I子からホテルに誘い不倫関係になって数ヶ月後のことだった。
想像通り、彼とのベッドは「最高」だった。重量のある体に圧倒される快感は、ずっと男性と寝ていなかったI子の欲望を解放した。その頃から、I子の雰囲気は親しみの感じられる柔らかいものから、色気を含んだ女の「性」をにおわせるものに変わっていった。
「彼のことは、まぁ一応好きだけど」
と毎回断りを入れるが、I子から聞かされる話はいつもベッドの中のことだった。自分たちがどれだけ相性が良いか、どれだけ気持ちが良いか、そこに相手が既婚者という罪悪感はなく、純粋に性的な欲望を満たしてくれるパートナーのような感覚があった。
そして、「エッチな写真が欲しい」と彼からお願いされるようになったとき、I子はすっかり彼の肉体へのぼせ上がっていた。
離れている間も性的な刺激を求め合う快感が、I子から危機感を奪っていた。
請われるまま、布地の少ない下着を身に着ける。「着たままできるものがいいって」とはしゃぎながら話す姿には、彼の真意を疑う理性が見えなかった。そしてI子自身、そんな「オトコの欲を形にした下着」を普段から身近に感じることで、さらにベッドでの時間へとのめり込んでいった。
こんな関係がいつまで続くのか、それを危惧する瞬間も持てないまま。
▶一体、どこまでやるのか

「どこまでやるんだろうね」
食後に出されたコーヒーに口をつけながら尋ねると、I子は「さぁ」と肩をすくめた。
いや、「彼」じゃなくてあなたのことだよ、と思うがI子は気づかない。
「そのうちネタが尽きるよね」と笑う彼女だったが、ふと声が止まった。
見ると、両手を添えたコーヒーカップを覗き込むI子の顔は真顔だった。「馬鹿みたい」。ぼそりとつぶやく声は低く、視線はテーブルに置かれたスマホに流れる。
「写真なんかどうでもいいんだけどさ。どうせほかの女にも同じことさせてると思うし」
I子の様子に変化があったのは、彼に自分以外の女性がいることを知ってからだった。ホテルで過ごしているとき、スマホに通知や着信が来ると彼は決まってトイレに入った。一度気になって聞き耳を立てたそうだが、そのとき漏れてきたのは「お前だけだよ」とささやく彼の猫なで声だった。
▶「彼が付き合ってるのは私だけじゃない」
私だけじゃない、という可能性に気がついたとき、I子の中に生まれたのは嫉妬ではなく諦めだった。
どんな写真を送っても、彼から返ってくるのは短い言葉だけ。ベッドでの交わりを予感させてくれるものだけ。そこに「愛」は見えない。
「別に、そこまで彼のことが好きなわけじゃないしね。こうやって馬鹿なことして楽しめればいいやって」
投げやりな口調で言うが、そこには「いつか飽きられる」という不安が見える。だから複数の女性が彼の側にはいるのだ。
彼女たちとたたかうつもりはない。神経をすり減らしてまで恋愛したいわけじゃない。ただ、体の欲望を満たして欲しいだけ。
写真を送り続ける彼女からは、そんな押し殺した声が聞こえてくる。
お互いの「欲」はいつまで続くのか。強くコーヒーカップを握る指にI子のわずかな葛藤を感じながら、次はどんな姿になるのだろうか、とさきほど見せられた写真を思い出していた。
本当に肉体関係だけで続く不倫も、もちろんあるだろう。
お互いに都合よく欲望を解消できていれば、不満もないかもしれない。
だが、I子はすでに飽きられる予感を抱えてしまっている。きわどい姿を見せつけることで彼の欲求を引きつけても、いつか終わるだろうという虚しさが、彼女の中に生まれた本当の葛藤だった。
>>つづく
(本記事はリバイバル配信です)
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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