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※前回のお話は「台湾セレブはアイメイク命!? 初レッドカーペット~國父紀念館~」でどうぞ
台湾最大規模のテレビアワード「金鐘獎」で助演女優賞に輝いた私は、これで台湾でも女優としてのスタートラインに立てたと喜んでいた。
でも、現実はそんなに甘くない。私の予想に反して、その後、お仕事の話はパッタリと途絶えてしまったのだ。お芝居の仕事のオファーどころか、オーディションの機会すら与えられない。そんな宙ぶらりんな生活が8カ月ほど続いた。
お仕事の連絡を待つ日々の中で思い知らされたのは、結局、私は日本人だということ。
どうにか中国語が話せるようになったといっても、所詮は生まれも育ちも日本。外国で生まれ育った人間が成人後に中国語を習得しようとしても、なかなか日本訛りはなくならない。台湾人ネイティブみたいな流暢な中国語を身につけるには、まだまだ相当な努力が必要だ。そうなると今の私に演じられる役は、中国語を話す日本人か、台日ハーフに限られてしまうわけで……。
次の仕事への期待値が否応無しに上がっていた分、“
ニーズがない”
という現実を改めて突きつけられ、すっかり落ち込んでしまった。
そんな時、あるニュースを目にした。
“
NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』 外国人女優が初のヒロインに”
NHK朝ドラ史上初めて、ヒロインをアメリカ出身の女優、シャーロット・ケイト・フォックスさんが演じることになったというニュースだった。しかもシャーロットさんは、日本に行ったこともなければ日本語も話せない頃に、この大役を勝ち取ったらしい。
そんなニュースをTVで眺めていたら、なんだか目頭が熱くなってきた。
事実は小説よりも奇なり。私だって、明日にはこんな展開が待っているかもしれない。まだチャンスが巡ってきていないだけで、未来のことは誰にも分からないじゃないか。
ならば、今やるべきことは、いつでもチャンスをつかめるように準備するだけ! 目の前の課題をひとつずつこなしていこう。
そう気持ちを切り替えて、まだまだ伸びしろのある中国語を強化すべく、発音のクラスに通い始めることにした。
前向きに中国語学習を再開させたら、不思議なことに、本当にチャンスも巡ってきた。久しぶりにオーディションを受けたところ、念願叶って連続ドラマへの出演が決まったのだ。しかも主演で!
アジアで女優の仕事がしたい。そんな夢を抱いて台湾に渡った私にとって、連続ドラマへの出演は日本出発前に掲げた大きな目標の1つ。そんな夢が主人公役で叶えられるなんて……。本当に跳びあがって走り回りたくなるほど嬉しかった。
こうして演じることになったのが『幸福不二家』のヒロイン、七海。台本を読み進めていくと、この役柄にも運命を感じてしまった。
主人公・七海は、一念発起して台湾に移住してきた日本人女性。新天地でなんとか自分の生きる道を見出したい。そんな目標を抱いていた七海は、挫折して人生の迷子になっている3人の台湾人と出会う。七海は、ひょんなことから自分を日本からやってきた彼らの家族だと偽り、4人で日本料理店を開くことに。そうして本当の家族よろしく、4人で力を合わせてお店を切り盛りしていく……というストーリーだ。
七海の境遇や負けん気の強い性格は、素の私にそっくり。シンパシーを感じてしまい、台本を読んでいるだけで七海ちゃんと化して一喜一憂してしまった。
1話90分、全14話からなる連続ドラマの主人公。
こんな大チャンスは滅多にやってこないと張り切って臨んだ撮影は、約5カ月に及んだ。
さらにドラマの舞台となった日本料理店はセットではなく、実際に営業している店舗。夜の営業後、翌日の昼まで店を借りて撮影していたため、完全に昼夜逆転の生活が続いた。
帰宅後も就寝前に、台本と向き合う日々。毎日3~4時間睡眠が続いたが、本当に楽しくて充実していて、撮影期間はあっという間に終わってしまった。
ちなみに、この撮影が行われた店舗は台北市内の林森北路という日本人街にある。日本人オーナーのお店や日本語が通じる飲み屋さん、美味しい日本料理店が軒を連ねているエリアだ。
残念ながら、もう七海役は卒業してしまった私だが、台湾生活の中でふと母国が恋しくなった時には、日本の味を求めてこのストリートを訪れる。台湾旅行中に、林森北路で日本料理を味わう私を見ても、どうぞ驚かないでくださいね(笑)。
【麻梨子的台湾案内⑨ 林森北路】
駐在の日本人サラリーマンにとっては憩いの場所とも呼ばれている、日本料理店が多いエリア。
台湾の滞在中、ふと日本料理が食べたくなったらコチラへ。私のような台湾移住者にとっても、気軽にふるさとの味が楽しめる大切なスポットです。日本語が通じる店が多いので、言葉の壁も感じずに過ごせますよ。(麻梨子)
<アクセス>
MRT淡水信義線、松山新店線 中山駅、MRT淡水信義線 雙連駅から徒歩
【Profile】
大久保麻梨子(おおくぼ まりこ)
1984年9月7日、長崎県生まれ。
2003年に「Sea Story Audition 2003 マリンちゃんを探せ!!」で初代グランプリを獲得し、芸能界デビュー。グラビアアイドルとして活躍する。2008年、女優業をスタート。CMやドラマ、映画で活躍するのと同時に、写真集を計9冊出版。
2011年、台湾に移住。中国語を学びながら、台湾の芸能界でタレント・女優として活動開始。2013年、日本人として初めて、台湾最大規模のテレビアワード「第48回金鐘獎」テレビ映画部門 最優秀助演女優賞に輝く。2016年TV連続ドラマ「幸福不二家」では主演を務めた。現在は次作ドラマの「四月望雨」を絶賛収録中。
目標は女優として幅広い役に挑戦することと、台湾アンバサダーとして日本と台湾の橋渡しをすること。
Text 大久保麻梨子
*次回は6/11(日)掲載予定です。
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大久保麻梨子 公式Instagramアカウント→
@marilog0907
MANAGEMENT : CHEERS MANAGEMENT CO.,LTD.
AGENT :
この記事のライター
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