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「冬に帰省したら、実家の浴室が相変わらず激寒!どうにかしなければ」と古い浴室をリフォームしようと決意した人いませんか? 春夏は浴室リフォームを計画するのにぴったりな季節。今から計画を進めれば、寒い季節になるまでに暖かい浴室が実現できるからです。「でも、リフォームとなると資金が気がかり。どうプランニングすればいいのか分からない」という人のため、浴室リフォームのプランとコストについて紹介します。
凍えるような古い浴室は命の危険を招く
断熱が不十分な浴室は、屋外の冷気が窓・壁・床から伝わり、冬は凍えるような過酷な環境となります。築40年以上になる筆者の実家も数年前にリフォームするまで、入浴がつらい状況でした。編集部のKさんの築25年の実家も「何の修行だ!?と感じるほど寒い」と、お正月に改めて感じたそう。そんなお宅は意外と多いのではないでしょうか。
脱衣室でブルブル震えながら服を脱ぎ、ヒヤッと冷たいタイルの浴室で掛け湯をして……。そんな浴室は心身両面に大きな負担が掛かるばかりでなく、ヒートショックによる命の危険すら生じます。
ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が急上昇もしくは急下降して心筋梗塞・脳梗塞・脳貧血などを誘発してしまうこと。特に高血圧の人、高齢の人、飲酒後に入浴する人は要注意。暖かい居間から寒い脱衣室で衣服を脱ぎ、浴室で熱いお湯に入るという急激な変化は大きなリスク。寒くない浴室へリフォームすることは、より快適な入浴タイムを過ごすためだけでなく、命の危険を回避するために大切なことなのです。
浴室がそれほど寒くないという家でも、築20年を目安にリフォームを考えたいもの。この目安時期を過ぎると建物や設備の劣化が加速し、維持費がかさむことが考えられるからです。「浴室にヒビ割れ・浴槽にさびが生じている」「カビの付着がひどくなってきた」「排水が流れにくい」「脱衣室の床がたわむ」などの症状が見られたら、浴室を一新することを考えましょう。
また、古い浴室は、「入口に段差がある」「ぬれた床が滑りやすい」「手すりがない」「浴槽のまたぎが高い」「水栓が使いづらい位置にある」など、断熱性能の低さだけでなく安全性も低い状態であることが考えられます。最新タイプの浴室にすれば、そうした危険も回避できます。
ほとんどの人がリフォームで「システムバス」を選ぶ浴室リフォームにはどんな方法があるのか確認しましょう。
東京ガスリモデリング、リヴィングモア東京東店店長で一級建築士の星明男さんにお話を伺いました。
「浴室は施工方法の違いによって主にシステムバス(ユニットバス)と在来工法の浴室の2種類に分かれています(図表1参照)。浴室のリフォームは、ほかの部屋とは異なり、劣化が進んでいるケースが多いため、部分リフォームではなく床・壁・天井・浴槽・配管等を丸ごと変える工事が一般的です。リフォームに当たってはシステムバス(ユニットバス)を選ぶ方がほとんどで、当社の場合、約95%以上となっています。そのうち約7割が『在来工法→システムバス』、約3割が『システムバス→システムバス』へのリフォームです」と星さん。
最新式のシステムバスは省エネ効果(断熱性・保温性・節水性)が高く、お手入れもラク。在来工法なら個性的でおしゃれな浴室をプランできます。最近は冷たさを低減したタイルも開発されています。
なかには、予算があまりないからと次のような部分リフォームを考えているという人もいるかもしれません。
しかし、前述したように築20年以上の浴室は劣化が進むので、数年後に全体をやり直さなければならなくなる可能性があります。星さんによると、浴室の床を剥いだら「土台が水漏れで腐っていた」「シロアリの被害が大きい」というお宅が20軒に1~2軒の割合で見られるそう。毎日水にぬれる場所だから見えない部分にも注意しなくてはいけません。ちなみに土台の補修は1~2万円程度の追加費用で済むことが多いそうです(被害が大きければもっと掛かります)。
また、浴室全体や浴槽の断熱性が低ければ、浴室暖房機を付けたとしても電気代やガス代ばかり掛かって、非効率的。寒くない浴室へのリフォームを考えるほうが建設的です。
目安とコストを押さえるコツは? 補助金も使えるの?浴室まるごとのリフォームはおおよそいくらかかるのでしょうか。
リフォーム費用は機器代金と工事費から成り、システムバス代金は50万~100万円程度、工事費は20万~40万円程度となり、元の浴室の状態によっても費用に差が生じます。
「この目安は標準タイプのものですが、設備のグレードや施工内容、浴室の広さ等によって費用は当然大きく変わり、より高機能なシステムバスならより高額になります。また、浴室が在来工法の場合、タイルを剥ぐなど解体費用がかさみます」(星さん)
「毎日の入浴時間が快適になるなら、この費用は安い」と感じる人もいるでしょうが、逆に「この予算では厳しい」という人もいるでしょう。では、より安く上げるにはどうすればいいのでしょうか。コストを押さえるには次の方法が考えられます。
●コストを押さえる方法数ある製品のなかからぴったりのものを選ぶのは大変ですが、リフォーム会社に依頼するときに予算と希望を伝えれば、それに見合った製品を選んでくれます。希望と合致しないものを勧めてくるような会社の場合は相性が悪いと思うので、別の会社にも依頼してみましょう。リフォーム会社のなかにはパッケージプランとして割安な費用を提示している会社もありますが、見積もりの内容を複数社できちんと比較してみることが大切です。
さらに、リフォーム費用を押さえるポイントとしてチェックしておきたいのが、リフォームに対する補助金制度と減税制度。補助金制度は自治体によって内容が異なるので、事前に確認しましょう。リフォーム会社に相談すると詳細を教えてくれる場合が多いです。
減税制度を活用する場合は確定申告が必要です。支払った工事費の一部が戻ってくるので、ぜひ利用してください。
「自治体の補助金は年度毎に予算枠があるので、申請時期が遅いと枠がいっぱいになり受付終了になることもあります。余裕をもって計画しましょう」(星さん)
断熱材は? 窓は? 見積もりで要チェックなのは?見積もりを確認する際に知っておきたい点について、星さんに伺いました。
「まず、ご注意いただきたいのが製品の価格について。メーカーのカタログに掲載されている製品価格はメーカー希望小売価格で、実際の代金と異なる場合があります。リフォーム会社はそれより安く販売している場合が多いです。『家電のメーカー希望小売価格と店頭価格』のようなものですね。メーカーによっては『カタログ掲載価格は高めだが、製品によっては割引率が50%』という会社もあれば、『カタログ掲載価格は比較的安いが、ほとんど割引しない』という会社もあります。カタログだけで予算を考えずに、必ずリフォーム会社で見積もりをとって確認してください』(星さん・以下同)
「また、浴室の断熱性能を左右する断熱材と窓については、見積もり確認時に意外と見落とされがちです。システムバスの壁の裏側には断熱材が入っている製品がほとんどですが、製品やメーカーによって厚い・薄い・入っていないなど状態がさまざま。きちんと断熱材入りのタイプを選んだほうがいいですね」
「窓は二重窓にするのが一番断熱性を発揮して価格も安いですが、浴室によっては設置できない場合もあります。二重窓がNGな場合は複層ガラスのサッシに丸ごと交換となりますが、割高です。既存の窓枠を活かして設置するカバー工法という比較的割安な設置方法もあります。いずれも見積もり時にきちんと確認しましょう」
「リフォーム会社は見積もり作成のため家を訪れて、空間サイズの計測、機器や部材、躯体の劣化状況などを確認します。これを現地調査(略して現調)といいますが、その際に次の点を心掛けると、工事費が若干安くなる可能性が生じます」
●現地調査の際にしておくこと「工事費は実は細かいことの積み重ねで成り立っています。『え、こんなことで?』と思うかもしれませんが、現地調査の時点で工事が進めやすい現場だと示しておくと、それが工事費に反映されて安くなる可能性があります。例えば、工事に邪魔になる場所に洗濯機や収納棚等が置かれている場合、手間はかかりますが現地調査のときにどかしておくと、意外と効果的だったりするんですよ」(星さん)
最後に、「それでもタイミングや費用の関係で冬までにリフォームできない」という場合の寒さ対策について、星さんに伺いました。
「そうした場合は、ファンヒーターを用いるのが一番手っ取り早いですね。脱衣室にヒーターを置いて浴室に向けて回しておくと、狭い空間だからすぐ暖まります。また、窓にブラインドを設置すると、窓からの冷気の侵入を多少防ぐことができます。試してみてください」
古くて寒かった筆者の実家浴室でもヒーターは必須でしたが、新しいシステムバスに替え、浴室暖房機・二重窓・断熱材・ひんやりしない床材等を導入したことで、一年中入浴が快適になりました。
リフォームは暮らしを快適にしてくれます。高齢の親が住む実家の、入浴がつらい浴室を「いつもほっとできる場所」に変身させるために、今から「浴室あったか計画」を立てませんか。
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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