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変化の激しい時代を生き抜かねばならない子供たちを育て、
遠い未来だった「老後」が少しずつ現実味を帯びてきているオトナサローネ読者にとって、
自分たちの将来はもちろん、子供たちが生活する未来の姿を想像するとなおさら不安が押し寄せます。
そんな永遠に解消されないような不安の中で生きている私たちに、よりどころとなるような未来のお話があります。
新刊『池上彰の未来予測 After 2040』(主婦の友社刊)で、池上彰先生がつづっている未来の話から、
自分たちが、日本が明るい未来を迎えるためには、今後どう行動していけばいいのかを、一緒に考えていきましょう。
「未来はこれから創るものです。そう悲観的にならなくて大丈夫ですよ」。帯に掲げられた、池上彰先生のこのメッセージに心が少し救われます。
これからの子供たちを育てる教育法について考えるとき、ぜひ心にとどめておきたい過去の日本の教育にまつわるこんな興味深いエピソードがある。
「『ゆとり教育』も、私は基本的に大賛成です。
ゆとり教育を始めた直後の03年、経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査「PISA」の成績で日本の順位が下がり、「ゆとり教育のせいで学力低下が起きた」と騒がれたことがありました。しかしこのとき日本の順位が下がったのは、それまで参加していなかったオランダや香港が参加してきたからで、日本の子どもたちの学力はさほど下がってはいませんでした。
因果関係がはっきりしない中で『ゆとり教育は失敗だった。詰め込み教育のほうがよかった』などと、徹底的に否定されたのは残念でした」
いわゆる“ゆとり世代”と言われた若者たちは、そんな誤解のなかで、社会人になったときも大人たちから揶揄される対象となった。しかし池上先生はこう続ける。
「今はゆとり世代が社会に出て、社会貢献を目指した起業をしたり、スポーツの世界で異次元の活躍をしたりしています。これまでの日本社会ではあまり見られなかったような、想像力豊かな人生の切り開き方をする人たちが増えているのは、ゆとり教育のおかげかもしれないと感じます。
ゆとり教育では、『総合的な学習の時間』が設けられ、一人ひとりが自分の頭で考えることを重視するスタイルの授業も進められました。週に3時間ほど、教科書を離れて先生たちが自由に授業をすることになり、先生たちにとっては突然自分の力量が試されることになりました。知識をひたすら詰め込むのではなく、自分で考え意見を述べ合い判断する、そんな力をつけるための取り組みが教育現場で進められたことに意義があると思います」
詰め込み学習だけでなく、自分で考えディスカッションする時間が設けられたことで、自分らしく、過去の常識にとらわれない人生の切り開き方をする人が増えてきたという。変化のはやい時代に必要な能力であると感じる。
都市部では、中学受験が過熱しているというニュースをよく見かけます。
ただ私立中学の受験が過熱しているのは、全国的な現象ではなく、首都圏や関西圏、および広島県くらいで、それ以外の地域では基本的に公立志向なのだそうです。
「中学受験のために小学生の頃から塾に通う都市部の子どもたちと、公立志向のために地元公立小・中学校に通い、高校受験で公立高校を目指し、大学受験で地元国立大学を目指すという地方の子どもたちとでは、見ている世界が大きく違ってくることになります。
公立であれ私立であれ、質の高い教育を受けられるのならば、問題にはなりません。ただ2040年に向けて、教員不足がこのまま続き、公立小・中学校の教育の質の低下が起きてしまうとすれば問題です。高い教育費をかけられて私立の学校に通い高度な教育を受ける都市部の子どもたちと、地方の子どもたちとの間で、教育格差が大きくなってしまうことになるのです」
教育の質に差が出てきしまうなら、より質が高いところに行かせたいと親がのぞむのは当然。ただ、それには私立中学に通わせる学費だけでなく、高額な塾の費用も必要になってくる。
「つまり親の経済力の格差が、子どもの教育格差に直結する。日本が格差社会、階級社会になってしまいます。
しかし教育に『課金』すれば必ず東大に行けるというわけではありませんから、「親の所得が高い子どもが東大に入る」現象には別の理由も隠れています。
高所得層の親の多くは規則正しい生活習慣をしていて、朝ご飯を子どもにしっかりと食べさせ、親自身が家で読書をしていたり、政治経済や社会問題に関するニュースに日頃から触れていたり、仕事や趣味に関する勉強をしたりしています。子どもが親のそうした文化的習慣を見て『自ら学ぶ力』を得、東大に入れるレベルの学力に行きつく、というわけなのです」
冒頭でもお伝えした通り、これから未来を生きていく子供たちにとって、「詰め込み学習で得た知識」だけでは足りない。変化のはやい時代においては、幅広い教養と、変化する社会に対応するために学び続けることが大事になってくる。
そのためには、自分の意思が伴わない強制的な学習だけではなく、好奇心や興味から生まれる主体的な学習をできるか子供に育てることが重要だ。
そう考えると、遊びの中で育まれる観察力や好奇心を育てることもポイントであり、かつ一方で教育格差が生まれていることも事実なので、遊びと勉強のバランスを意識することが親としてできる最良のことなのかもしれない。
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『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰著/主婦の友社刊)


<著者プロフィール>
1950年、⻑野県松本市⽣まれ。慶應義塾⼤学卒業後、1973年にNHK⼊局。報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者・教育問題などを担当。1994年からは11年にわたりニュース番組のキャスターとして「週刊こどもニュース」に出演。2005年よりフリーのジャーナリストとして執筆活動を続けながらテレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い⼈気を得ている。また、5つの⼤学で教鞭をとる。『池上彰が⼤切にしているタテの想像⼒とヨコの想像⼒』(講談社)『池上彰のこれからの⼩学⽣に必要な教養』(主婦の友社)など著書多数。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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