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あなたが交渉中の相手が、生意気な態度で交渉を取り下げてきました。あなたが「いま、取り下げるならあなたと会うことは二度とないわ」などと言ったとしましょう。それに対して相手は「私は、この会社の敷居をまたぐ必要はもうないの」なんて、芝居がかったことを言います。数カ月後、「すみませんでした。やっぱり契約してください」と相手が戻ってきたら、あなたはどうしますか。
① 契約しない
② 契約はするが自分に有利な条件にする
③ 前と同じ条件で契約する
まず、①の場合。プライドのために、契約をしないという選択もありますが、誰も得をしません。不快な思いをしたのに、お金はもらえない。
そうすると、不快にされた分をお金で取り戻せるように、②の自分に有利な条件を設定するのが良いかもしれません。相手には負い目があるので、その条件でも喜んで契約するかもしれないし、「いやなやつだな」と思うかもしれない。
ただ、自分のことを嫌な奴と思っている相手と仕事をするのは、あまり健康的ではありません。
もっともおすすめなのは、③の前と同じ条件で契約することです。相手は通常より感謝するでしょう。あなたに敬意を持って仕事をしてくれます。もし、あなたにトラブルがあっとき、親切に対応してくれるかもしれません。
そこで、相手があなたにとって良い取引先で、今後も取引を継続したいのなら③を、どうでも良い相手なら②を選ぶとよいでしょう。
価格決定においては、行動経済学の分野に多くを学ぶことができます。
では、あなたがもし傘を売るなら。次ページ
① 晴れの日と同じ
② 晴れの日の3倍
③ 晴れの日の10倍
晴れの日より安くするという行動は合理的でないので省きましたが、どれを選択するのが良いのでしょうか。需要と供給を考えれば、雨の日の傘の値段は高くなります。それをどのくらいの金額にするかが、ビジネスの難しいところです。
アメリカのウーバーは、その時間帯の需要と供給の差によって、価格を変動させていました。アルゴリズムは非公開ですが、最も高いときで通常価格の10倍だったそうです。これは州によって問題とされ、売上の一部は寄付されることになりました。
ウーバーの主張としては、価格を上げれば運転手が増えるので、ユーザーにとっても利益があるとのことでしたが、運転手の供給がないので10倍になったわけで、運転手が10倍の金額になっても増えなかったことを証明しています。
相手の弱みにつけこんで商売をするのは、「商売上手」と褒められる一方で、非難されるリスクがあります。あなたが何も考えていない呑気な人間か、長期的な戦略を取るのであれば①を選ぶ可能性もあるでしょう。
アメリカの予約困難なレストランでは、週末の価格を平日の1.25倍にしているそうです。これは、とても良心的な値段です。それでも週末は満席、平日は若干の空きがあり客は満足しています。きっと週末は3倍の料金にしても客は来るでしょう。
しかし、そのレストランが恐れているとすれば、「3倍の料金を支払ってでも食事をしたい」と思うことと、食べ終えてから「3倍の価値があった」と思うことは別だということです。
そのレストランでの食事の価値は、値段に関わらず一定です。需要と供給のみで価格を決定すると、商品価値より割高になり、客の満足度が下がってしまいます、レストランは、長期的に考えてそのような手法は損失を生むと考え、週末の価格を1.25倍に留めたのです。
日本では、スポーツのチケットで、購入日によってチケット価格が変動するダイナミックプライスを採用しています。同じ日の試合でも、購入日で価格が変わりますが、悪い話は聞きません。良心的に運用されているようです。
傘の選択では、継続して取引するのであれば①を、一見さんであれば②を、あなたにとってどうでも良く何の発言力もない相手なら③を選ぶと良いでしょう。
SNSが普及し、口コミが大きな影響力を持っている時代です。ユーザーにとって利点のない、不満に思うような販売方法は企業の価値を著しく下げます。賢いビジネスマンは、目先の金銭だけでなく見えないものにも思いを馳せて価格を決定しています。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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