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「スマホを見せすぎるのはよくない」とわかっていても、家事や仕事に追われる毎日の中で、頼らざるを得ない場面は多々ありますよね。だからこそ、「このままで大丈夫かな」と心のどこかで気になっている人も多いのではないでしょうか。
実は、そんなモヤモヤを抱える親にこそ試してほしいのが「昔ばなしの読み聞かせ」です。「時代遅れでは?」と感じるかもしれませんが、昔ばなし研究者として大学講師もつとめる沼賀美奈子氏は、「昔ばなしには子どもが自ら考え、想像し、落ち着きを取り戻す力がある」と語ります。
本記事では沼賀氏の著書から、昔ばなしが子どもの頭と心にもたらすメリットをご紹介します。
※本記事は書籍『本当の頭のよさが育つ昔ばなしの魔法』(沼賀美奈子:著/青春出版社)から一部抜粋・編集したものです
夕方になれば、コンロの火を気にしながら、足元でぐずる下の子をあやし、上の子には「ごめん、それは今できないから、ちょっとだけこれ見ててね」とスマホを手渡す。画面に釘付けになって静かになった上の子を見てホッとすると同時に、胸の奥にはチクッとした痛みが走ります。
無表情のまま、短い動画を指でスクロールし続けるわが子の姿を見る。そのたびに「こんなに見せ続けて、脳に悪い影響はないだろうか」「考える力が奪われているんじゃないか」私も、そんな得体の知れない不安に襲われる毎日を送っていました。
子育て中、どうしても手が離せないときにスマホやタブレットに頼ることは、現代の親にとって避けられない現実です。
長時間にわたる動画視聴、特にショート動画の連続視聴については、睡眠や注意力、感情調整などへの影響が指摘されています。最大の問題は、ショート動画特有の刺激の強さや完結までの速さです。
次々と切り替わる映像。強い効果音。すぐにオチがつく構成。こうした刺激に慣れすぎると、子どもは待つことや、何もない時間に耐えることが、だんだん苦手になります。
待たずに済む快感に慣れると、脳は受け身になりやすいのです。なぜなら、目の前の映像を、ただ受け入れるだけで楽だから。
また、自分で文脈を補完したり、次の展開を想像したりする必要がありません。その結果、子どもたちは、刺激のない時間や、答えが出るまでの間に耐えられなくなっています。思考力や想像力が育つのは、空白の時間なのに。
一方で、親子での読み聞かせには、子どもの言葉や想像力を育てるだけでなく、親子の間に安心できるやりとりを回復させる働きがあり、スマホ育児の影響をやわらげる可能性も示され始めています。そして、これらは私が長年、昔ばなしの読み聞かせの活動の中で実感してきたことでもあります。
寝る前のほんの数分でも、誰かの声で昔ばなしを聞く時間があれば、子どもは少しずつ落ち着きを取り戻していく。親子の空気まで、変わっていく。私はその場面を、何度も見てきました。
動画漬けの脳に、昔ばなしが効く理由はシンプルです。昔ばなしは、スマホが奪うものを、ちょうどそのまま取り戻してくれます。
自分で想像する脳を取り戻す
スマホの動画は、映像も音もそろった状態で届けられます。子どもはただ受け取るだけで楽しめます。でも昔ばなしは違います。基本的に、耳から入る声を頼りに、自分の頭の中で情景を立ち上げる必要があります。
やまんばの顔も、森の暗さも、お城も、自分で思い描かなければなりません。これは、脳にとってはかなり能動的な作業が必要になります。絵本にしても1枚のイラストを頭の中で動かし、補完しなければなりません。こうした時間が、受け身になりがちな日常のバランスを取り戻します。
私は、子どもたちが昔ばなしを聞いているうちに、ぼんやりしていた目が輝きだし、自分で世界をつくり始める瞬間を、何度も見てきました。
待てる心を育てる
ショート動画の快感は、速さにあります。3秒でオチが来る。次もすぐ来る。待たなくていい。その快感に慣れた脳は、少しでも間があくと耐えられなくなっていきます。
一方、昔ばなしには、間があります。「さあ、どうなるだろう?」という答えが来るまでのドキドキ。そのちゅうぶらりんの時間こそが脳に余白を与え、想像力の土壌になります。すぐに答えが出ない時間を味わうことが、落ち着いて耳を澄ませる力や、先を思い描く力につながっていく。私は、この待てる心こそが、考える力の土台になると感じています。
ぬくもりが興奮をしずめる
動画が与える刺激は、強くて、速くて、次を求めやすいものです。それに対して、身近な人の声で聞く昔ばなしには、まったく別の安心感があります。
近い距離で声を聞き、同じ時間と空間を共有し、共に物語に浸る。その体験は、子どもの緊張をゆるめ、語り手とのつながりを感じさせます。私が見てきた保育の現場でも、昔ばなしを読むと、荒れていた子の緊張が少しずつほぐれていくことがよくありました。
刺激の強い一日の終わりに、読み聞かせの時間があることが、子どもを心の安全地帯へ連れ戻してくれます。
スマホを完全に手放すことは、現実的ではありません。だから、一日の終わりにほんの少しだけ、昔ばなしを読み聞かせてほしい。寝る前に5分の「ちょい足し」昔ばなし。それだけで、子どもの毎日に、考える時間、待つ時間、安心する時間が、少しずつ戻ってきます。
ここまでの記事では、昔ばなしが子どもの頭と心にもたらすメリットについてご紹介しました。つづく関連記事では、「昔ばなしの読み聞かせ」の魅力をお届けします。
つづき>>「3回とも産後うつに」なった3児の母を救い、子どもを難関中学「御三家」→東大に現役合格へ導いた…子育てがうまくいくようになる「寝る前5分の習慣」とは?
著者:沼賀美奈子(ぬまが・みなこ)
昔ばなし研究者/大学講師。3児を育てながら、研究活動とITベンチャー経営に携わる中で、どんなに忙しい日々でも「寝る前5分」の昔ばなしが、子どもの心と頭を育ててくれることを実感する。小澤昔ばなし研究所に所属し、昔話研究の第一人者・小澤俊夫 に33年間師事。全国の昔ばなし大学受講者や研究仲間とともに、昔ばなしの力を現代につなぐ活動を続けている。大学では保育者を目指す学生たちを指導するほか、子育て中の保護者の相談にも数多く携わる。さらに、個人起業家や企業経営者のコンサルティングにも従事し、「人の可能性を育てる」ことを教育・子育て・ビジネスの現場で実践している。著書に絵本『じゅうにしのはじまり』(世界文化社)ほか。
この記事のライター
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