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広尾駅徒歩約3分ながら東京ドーム1.4個分、約6万6000m2のスケールを誇る。こんな都心住宅は広尾ガーデンヒルズ(HGH)で最後のはずだ。築30年超だが、分譲時の価格を維持するどころか上回る住戸もある。 “住民経営”という本連載の骨子に通ずる取り組みが今日の評価を導いたと考え、第1回に取り上げる。
理事会と専門委員会が両輪となって取り組む
第34期理事長の国安氏が言う。「各ヒルは約160 戸から330 戸台などいずれもかなりの戸数があります。ヒル別に管理組合があってもおかしくない規模ですが、当初からの仕組みで組合はひとつに統合されていました。各ヒルからの独自の意見も出てきますが、やはりHGH全体としての整合性が優先されます。その点で単体の管理組合は奏功していると思います」
質の高い管理会社はもちろん信頼しているが、判断する主体はあくまで管理組合だと国安氏は念を押す。「判断基準となる建築資材、設備などの最新情報を独自に集め、それに基づいて管理会社と折衝しています。このやりとりを強力にサポートするのが、理事を務める各分野の精鋭の皆さんです。建築、法曹、金融、広告、不動産……豊富な経験を活かした的確なアドバイスが継続してもたらされたからこそ、今日のHGHがあります」
三世代で住む例も。子どもたちの故郷となるマンションを目指してさらに、理事会を補佐する各種委員会の存在も欠かせないという。
「例えばコミュニティ活動委員会では、防災訓練、日赤医療センターの協力によるインフルエンザ予防接種、早朝のラジオ体操などを行っています。また、高齢者を対象にした倶楽部では観劇、美術・音楽鑑賞会、食事会など多岐にわたる企画を運営しています」
こうした活動を契機に、近年では子どもの七夕祭り、大人のワインパーティーや花壇の植え替え、近隣の清掃作業などが行われるようになったという。傑作ヴィンテージ・マンションでのほっこりした光景に、住民による資産維持の原点を見る思いだ。
次なる課題のひとつが、管理組合に新たな風を入れることだと国安氏。40代の住民を中心に理事就任を依頼して、少しずつ世代交代を進めている。「分譲時に購入した住民の二~三世代目が別住戸に住む例も増えています。HGHがその子どもたちの故郷となるよう『100 年住宅』を目指します」
●建築・住宅計画等を専門とする東京大学教授 大月敏雄氏が語る建築家の視点バブル期前の都市型大規模再開発では、既存樹を残す、環境共生などの発想は乏しかったが、HGHは真逆だ。歴代の管理組合はデベロッパーが整えた樹木、植栽を重要な付加価値として“広尾の森”をつくった。
ただ、敷地内のメインストリートは当初から渋谷区道であり、沿道のケヤキは区がいかようにもできる。伸びた枝葉を根元から切断し、マッチ棒のような無残な姿に変える「強剪定」を行う自治体もあるなか、HGHが継承する姿勢に寄り添い、渋谷区が手間暇かけて繊細に剪定していたのには拍手を送りたい。樹木などを管理する植栽分科会は、環境専門委員会の下部組織から委員会に格上げされると聞いた。今まで同様に豊かで美しい森の存続に期待できる。
※この記事は『都心に住む』2017年5月号(3月25日発売)からの提供記事です
※管理組合のルールや方針は変更される場合があります
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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