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住民経営マンションを取り上げる本連載の第三回では、パークコート虎ノ門愛宕タワーを紹介する。虎ノ門ヒルズを中心とした大規模再開発や日比谷線新駅開業工事などが進み、虎ノ門エリアは近い将来さらなる発展が見込まれている。物件名どおり、このマンションもその一角にあり、エリアの注目度向上に比例して今以上に資産価値の上昇が期待できる。そんな立地上のアドバンテージをもつパークコート虎ノ門愛宕タワーではどんな管理が行われているのか。
住民総会の円滑な進行はアンケートの質がカギに
「今年竣工9年目で大規模修繕は3年後の予定です。管理組合としては、目下のところさほど大きな課題を抱えているわけではなく、穏やかな時期にあると思っています」と第8期理事長を務める塩見氏。とはいえ、もちろん管理会社に過多に依存することはせず、節目でしっかりと機能している。
2015年に、大規模修繕に向けた修繕積立金の増額を住民総会の議案に挙げ、可決させたのもその一例だ。
「管理会社からの提案に基づき、そうしたほうが大規模修繕を成功に導けると判断したため総会にかけることにしたのです。ただ、住民の負担が増すだけに否決される可能性も小さくない。そこで、このタイミングで議案化してもよいかを判断するため、事前に住民アンケートを実施しました」。
ポイントは、シミュレーションなどを交え、できるだけ分かりやすく、マンションの将来像をイメージしやすい書面になるよう推敲を重ねたことだと塩見氏は話す。優れたマーケティングには良質なアンケートが付き物であるのと同じ図式だろう。
また、2017年3月には共用施設のなかでも特に人気の高いゲストルーム「クラブスイート」の檜風呂浴槽を新品に交換した。クラブスイートは竣工以来ほぼフル稼働しており、浴槽が劣化したための更新だったという。
「組合の仕事は端的にいえば、必要と思われるモノやコトに予算を付けるか否かを決めること。住民の皆さんからお預かりした大切なお金だけに財布のひもは堅くなりがちですが、それでも檜風呂は住民に愛用されるこのマンションの“顔”のひとつであり、投資すべき対象だと考えたのです」
以前、ある住宅誌に掲載されたパークコート虎ノ門愛宕タワーの外観写真を見て、住民ながら『自分たちは美しいマンションに住んでいるんだな』と実感したという塩見氏。「この状態を維持して次期組合に託すために何を優先するべきか。それを心がけながら残りの任期を全うします」
●建築・住宅計画等を専門とする東京大学教授 大月敏雄氏が語る建築家の視点この物件が立つ一帯は寺社や古くから残る民家などが点在し、下町らしさが漂う。マンションが成熟していくためには周囲の既存コミュニティとの共生が必要だが、その点、管理組合が1階の約17m×3mのスペースを地元町会用「町会倉庫」として無償貸与しているのは良い話だ。しかも倉庫外観は、地域のカラーに即した格子状の和のデザインが施されており、内部には地域の祭りで使う神輿が保管されている。地元とニューカマーであるタワー住民の良好な関係を象徴している場所だと感じた。また、総合設計制度(※)が使われているためにつくられた公開空地では、管理組合の協力のもと定期的にイベントを実施しているという。今後も継続してほしい取り組みだ。
※建築物の敷地に、一般の人が自由に出入りできる「公開空地」を設ける開発者に対して、行政の許可で容積率等を緩和する制度
※この記事は『都心に住む』2017年7月号(5月26日発売)からの提供記事です
※管理組合のルールや方針は変更される場合があります
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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