/
今年の部屋探し&引越しシーズンもいよいよ終盤。大学進学や就職といったタイミングで、地方から東京に移り住む人も多いはず。しかし、土地勘や家賃相場が分からずに、部屋探しに苦戦してしまう人も多く、「花の東京ライフ、こんなはずじゃなかった……」と後悔してしまうケースもしばしば。
そこで今回は、今まで地方出身者へ80回以上引越しのアドバイスを行ってきた街選びアドバイザー・土井直樹(どい・なおき)さんに「東京の賃貸事情と、上手な部屋の探し方」について、聞いてみました。
春から東京生活スタート、ワクワクしながら新居探しをしている方も多いでしょう。ただ、東京という広大な都市での住まいを探す上では、内見前におさえておきたいポイントがいくつかあります。私自身も兵庫県の離島出身というバックグラウンドをもっているので、大学進学で上京した際、都内での家賃の高さや駅の多さに目の玉が飛び出たことを思い出します。
エスカレーターでの立ち位置、話し方など、関西人には当初慣れないこともたくさんありました。しかし都内の街を歩き尽くして得た知識や経験のおかけで、今まで80人以上の方へ街選びのアドバイスができたのだと思っています。
今回は、地方出身者の方に向けて、「東京の家賃相場」「初めて東京に住むならどこがいいのか」「地方出身者がお得に東京で部屋探しをするコツ」という3つのポイントをご紹介します。
地方に比べて、東京は家賃相場が高い!一般にもよく言われる「東京は家賃が高い」という話ですが、実際のデータではどれくらい高くなっているのでしょうか?
都心と言われる山手線の内側にある駅に絞ってみてみましょう。安い順に並べてみても、1位は雑司が谷駅と田端駅の7.8万円。
●山手線の内側で家賃相場が安い駅これに対して、例えば、私が現在住んでいる仙台駅から15分圏内の駅で家賃相場をみてみると、一番家賃相場が安い駅は、なんと3.4万円なのです。雑司が谷や田端の家賃相場と比べると、4.4万円も安くなります。
都心の家賃の高さはデータからもしっかりと見て取れます。住まいを探すにあたって、この東京の相場はまず頭に入れておきたいですね。
●仙台駅まで15分以内にある家賃相場が安い駅東京の賃貸は、地方と比べれば「どこも高いやんけ!」という声も聞こえてきそうですが、東京にしかない魅力もいっぱいあるんです。ここからはそんな東京の魅力を含めて、初めて住むならどこがいいか、ご紹介していくことにしましょう。
初めて東京に住むならどこがいい?[1]東京はエリアによって街の雰囲気が違うので、自分にあった街を選ぶことが重要
地方出身者がはじめて上京すると、ザ・大都会という感じがする東京駅や新宿駅に圧倒されることが多いと思いますが、実際に暮らし始めると「都会が連続して続いている感覚」に驚くことになるでしょう。
先月、twitterでも「関西地方の民が感じた東京」というツイートが話題になっていました。電車に乗っていると「どこまで行っても街が続くという感覚」を覚えるのですが、地方出身の私にとっても、これは東京でしか味わえない感覚でした。
地方都市、例えば大阪であれば、栄えているのは梅田・難波・天王寺。福岡であれば、博多・天神と、都心エリアはごく限られているのですが、東京はそうではないのです。東京では、山手線を中心として、東西南北にさまざまな街が広がっています。
山手線でいえば、東京駅、上野駅、品川駅などを中心とした東側エリア、新宿駅、渋谷駅、池袋駅を中心とした西側エリア。そして、これらのターミナルからは私鉄沿線が放射線状に連なっていきます。繁華街が限定されている地方都市と異なり、それぞれの街で大きく雰囲気が違うので、自分のライフスタイルにあった街を見つけることが最も重要なポイントです。
[2]学校・職場がある沿線から検討するのが王道、「相互直通運転」を忘れずに
さて、ここからは具体的な街選びの方法についてですが、学校や職場がある駅につながっている路線から検討するのが王道です。例えば、職場が渋谷なら、JR山手線、JR埼京線、東急田園都市線、東急東横線、京王井の頭線、東京メトロ銀座線、東京メトロ半蔵門線……と渋谷に乗り入れがある沿線から探していきましょう。
そして、ぜひチェックしたいのは、地方と東京の鉄道の大きな違いである「相互直通運転」について。路線図を見ると一見別の路線に見える電車が、そのまま一本でつながっていることが多いのです。これが、東京における鉄道の大きな特徴。
例えば、東京メトロ半蔵門線に乗ると、別の会社が運営する東急田園都市線の中央林間や、東武スカイツリーラインの東武動物公園まで乗り換えなしでそのまま向かうことも可能なんです(私も初めて上京した際、なぜ半蔵門線のホームに田園都市線の車両が止まっているのか、謎で仕方がありませんでした……)。このような「相互直通運転」は関西や福岡などの一部エリアでは実施されていますが、東京では非常に多くの路線で導入されているので、ぜひ注目してみてください。
地方出身者が、お得に東京で部屋探しをするコツは?さて、最後に実際に役立つ「お得に東京で部屋探しをするコツ」についてご紹介することにしましょう。
[1]「人気の駅」から1~2駅ズラせば、家賃は安くなる可能性も
SUUMOでも毎年住みたい街ランキングが発表されていますが、テレビや雑誌でよく取り上げられる「横浜」「吉祥寺」「恵比寿」などの駅が上位にランクインしています。これらの街は、地方出身の方もご存じの場合が多いと思いますし、「雑誌でよく見かける吉祥寺に住みたい」なんて憧れている方もいるかもしれません。
ただ、人気の駅はやっぱり家賃も高い、というのが現実でもあります。そこで、おすすめしたいのは、「人気の駅」から1駅~2駅範囲を広げてみること。例えば、吉祥寺駅から1駅隣の三鷹駅や井の頭公園駅を選べば、家賃相場もちょっと下がるのです。1駅~2駅ズラすと1カ月当たり数千円安く物件を探すことも可能な場合があります(年間換算すれば2万~3万円安くなることも!)。
同じように、横浜駅ではなくて、1駅隣の戸部駅、平沼橋駅など、少し範囲を広めてみることで、予算の中で希望の条件を満たせる可能性もグンと上がります。特に、地方と比べて・東京、首都圏は駅と駅の区間が短いので、1駅ズラしたとしても歩ける範囲であることも多いのがポイントです(自転車が使えるなら、なお不便さを感じにくいです)。
参考……家賃も手ごろで住みやすい? 住みたい街として人気の吉祥寺や恵比寿の「隣の街」はどんな街?
[2]契約時期や引越す時期を5月や6月にズラすことで、家賃が安くなったり、引越し費用が安くなったりすることも
先ほどは、「駅をズラす」というコツについてお話ししましたが、そもそも契約時期や引越す時期をズラす、というのもお得に家探しをする上では重要なポイントです。必ず3月4月に引越さないといけないというケースでなければ、繁忙期が終わった5月6月に契約したり引越したりすると、繁忙期より家賃が安くなっていたり、引越し費用が安くなったりすることもあります。
特に、神奈川・埼玉・千葉・茨城・群馬・栃木などに住んでいて、頑張れば電車で都内に通える範囲であれば、実際に入学する学校や新しい職場の環境を十分に知った上で引越すとミスマッチの可能性が減ります。
以前、私のところへ相談に来てくださった群馬県高崎市に暮らす新社会人の方がいたのですが、春に引越すかどうか迷われていたので、少しズラして5月のGWに契約&引越すことをご提案。結果、繁忙期を過ぎていたので、家賃も引越し費用も安くしてもらえたと喜んでいました。
最後に:東京を効率的に知るには、自転車がおすすめ今はネット上にパノラマ・動画などが掲載されている物件が増えており、地方にいながら物件に関する多くの情報を知ることができるようになりました。その一方で、本当に住みやすいかどうか(坂が多いか、駅の出口から近いかなど)の感覚は、やはり実際に足を運んで東京の街を感じてみないと、分からないケースが多いのです。
そこで、内見の前後のタイミングで、自転車に乗って街を巡ってみることを私はお勧めしています。徒歩では歩き回れる範囲に限界がある一方、車だとつい目的地にダイレクトで行ってしまい、見落とす景色が多くなりがち。加えて、坂を感じることが難しいというデメリットがあるので、実際に住み始めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔することもしばしば。
こんな背景から、効率的に街を巡り、エリアを知るには、自転車がお勧めです。東京には、気軽に利用できるレンタサイクルも数多くありますので、ぜひ試してみてください!
最後になりましたが、東京は、都市圏人口で3000万人を超える世界最大の都市です。一言で東京といっても、どの街を選ぶかで、あなたの東京ライフは大きく変わります。どんなライフスタイルの人も受け入れてくれる土壌があるので、ぜひ、あなたにあった「東京」を見つけてみてください!
住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナルこの記事のライター
SUUMO
173
『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
ライフスタイルの人気ランキング
新着
カテゴリ
公式アカウント