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外資系企業で働くAkiさんは30代のワーキングマザー。50m2、1LDK(LD10畳、洋室6畳)のマンションに、30代の夫と4歳になる男児との3人暮らしです。家族の都合で幼少期をドイツで過ごしたAkiさんのライフスタイルは「シンプル」そのもの。そんな彼女に、小さな家で快適に暮らす秘訣をお聞きします。【連載】狭くても快適に
「家が狭い=理想の暮らしはできない」。そう考えるのが一般的かもしれません。けれどもここで紹介する人たちは、数多くの選択肢のなかから、あえてコンパクトな住まいを選択し、狭くても快適に暮らしています。家族3人+愛犬1匹の4人家族で59m2という狭小スペースに暮らすライフオーガナイザー、さいとうきいが、そのヒミツに迫ります!視界と色でコントール! 狭い部屋を広く感じさせる3つのポイント
Akiさんのお住まいは50m2の1LDK。リビング・ダイニングは約10畳と聞いていたのですが、そこに足を踏み入れた瞬間に感じたのは……「広い!」
1番の理由は「借景」にありました。美しい植栽がよく見えるよう、カーテンではなく、天井ぎりぎりまで巻き上げられるシェードを採用。「借景」が部屋の一部のように見えるから、実際より部屋が広く感じられます。
第2の理由は、狭い空間でも視界が抜けるよう、目線より高い家具を置いていないこと。目線より下の限られたスペースを効率的に使うため、造作家具をオーダーしたそうです。
第3の理由は、床に近い位置に暗い色を、高い位置に明るい色をもってきていること。目の錯覚効果で天井が遠く見えるため、縦方向の広がりを感じられます。
コンパクトながら開放感のあるリビング・ダイニングには、狭くても快適に暮らせる収納の工夫もたくさん取り入れられていました。
子どもの遊び場でもあるリビング・ダイニングの造作家具の中には、おもちゃの収納スペースを確保。「IKEA」の「VARIERA(ヴァリエラ)」シリーズのボックスに、分類ごとにおもちゃをざっくりと収納しています。
子ども用のテーブルは直径70cm、高さ30cm。折りたたみ式なので、使わないときは部屋の隅に立てかけておけます。テーブルまわりで遊ぶパズルやお絵描きの道具などは、ほかのおもちゃと分けて造作家具の中へ。
子ども用の椅子は、ダイニングに置いている「イームズ」の「シェルチェア」に合わせたデザインのもの。窓下に吸着式ホワイトボード「マグエックス」を貼り、お絵描きやマグネット遊びが楽しめるようにしています。
書類や文具、夫婦の本、子どもの絵本などは、リビング・ダイニング備え付けの収納スペースへ。ファイルボックスを3つ並べて、家族それぞれの「書類の一時置き場」にすることで、夫の郵便物が届いたらここへ、子どものお手紙はそこへと、自然と整理整頓できているそう。
好きなものに囲まれて暮らすため、「持たないもの」を決める家族の都合で、3歳から11歳までドイツで暮らしていたAkiさんのライフスタイルは、幼いころに慣れ親しんだドイツ人の「シンプルな暮らし」がベースにあります。彼らの「シンプルな暮らし」とは、どういうものなのでしょうか?
「例えば、和食も洋食も中華も食卓に並ぶ日本では、大きな食器棚にさまざまな食器がたくさん並んでいるのが一般的ですよね。でも、ドイツ人の家庭の食器棚はガラガラなことが多いんです。家ではバラエティに富んだ料理をつくらず、食べ慣れた定番のレシピを繰り返しつくって食べるもの。そんな風にシンプルに考えているから、食器も基本的なものだけで足りるんだと思います」
そう話すAkiさんのキッチンでも、食器はシンク上のつり戸棚に収まるだけ。バリエーションを求めず、自分の「定番」を確立していくと、自然と暮らしがシンプルになり、持つものもシンプルになっていくのだとか。
「単にシンプルなだけだと味気ないと感じることもあります。だからこそ、持つと決めたものは“ちょっと好きなもの”ではなく“すごく好きなもの”を選ぶようにしています」というAkiさん。一つひとつのものに対する満足度が高くなると、少ないものでも豊かな気分で暮らせるのかもしれませんね。
キッチンの背面に置いたスチールラックの天面は、作業スペース。広く使えるよう、電気ポット以外は何も置いていません。家族3人分のトレーが収まるスペースが確保されているから、料理をつくって盛り付け、配膳までがスムーズ。この家事動線を確保するため、炊飯器やトースターは「持たない」と決めました。
Akiさんが「持たない」と決めたものは、それだけではありません。リビング・ダイニングのテレビもそのひとつ。見ていないときでも場所をとるテレビ本体を持たなくても、造作家具の中にプロジェクターを設置することで、大迫力のホームシアターが楽しめているそうです。
6畳寝室は“快適に眠るための場所”として、2台のベッドと空気清浄機以外のものを「持たない」と決めました。「今ある収納に収まる量=持ち物の上限と考えると、本当に日々の暮らしに欠かせないものだけが手元に残ります。案外、なければないで暮らせることも多いものですよ」とAkiさんは言います。
量より場所! 適材適所の収納が自然と片付く家づくりの秘訣収納スペースの“大きさ”よりも“場所”が重要だと考えるAkiさんの家では、動線を意識した収納の工夫もあちこちに見られます。
玄関横にあるシューズインクローゼットには、紙ゴミ用の紙袋とシュレッダーを設置。帰宅したらすぐダイレクトメールやチラシなど不要なものは処分し、宛名はシュレッダーへ。あとで見返す必要のある保育園のお便りや献立表などは、スマートフォンで写真を撮ってから処分しているそうです。
洗面所と寝室の間にあるウォークインクローゼットには、洗面所側に夫の衣類を、寝室側にAkiさんの衣類を収納しています。朝の身支度や帰宅後の着替えなどは、洗面所に近いほど動きやすいと考え、Akiさんよりも片付けが苦手な夫に洗面所側のスペースを譲っているそう。
夫婦の衣類(上の写真左)の向かい側下段(写真右)には、子どもの衣類を。低い位置にあるハンガーポールを子ども用にすることで、小さな子どもでもひとりでお着替えできるようになりました。
洗面所内、洗濯機の向かいにある収納スペースには、棚板を増やしてボックスを入れ、家族それぞれの肌着類を収納。ハンドル付きボックスなら、引き出しのように使えます。乾燥した肌着類はたたまず、洗濯機から直接ボックスへポンッ! 最下段には洗濯カゴを置いて、洗濯物を洗濯機に入れる動線も短くしています。
自由であることを邪魔しない、今の暮らしに合った住まいAkiさんが結婚してから最初に住んだのは、約42m2のワンルームマンションだったそう。その後、30m2のワンルームに引越しても快適に暮らせていたことから、現在のお住まいを選ぶときも「広さ」の優先順位は低かったといいます。
新居に求めた条件は、1)住み慣れた立地、2)建物の優良性(住戸数、施工会社や管理会社の質など)、3)窓からの見晴らし、4)広さではなく間取りの使いやすさ、5)手ばなしやすさ。
「小さいころから引越しが多かったせいか、定住思考が低いんです。仕事で海外勤務の話があれば受けたいし、子どもが成長したら通学に便利な所に引越したい。そんなとき、大きすぎる家にたくさんのものを持って暮らしていては荷造りが大変だし、手ばなしづらい物件なら住み替えもままなりません。住まいが足かせになって動けなくならないように、自由であることを邪魔しないコンパクトな家に暮らしたいと思っています」
今は“今の自分”に合った家で暮らし、将来は“将来の自分”に合った家で暮らす。そんな風にシンプルに考えれば、いずれ必要になる“かもしれない”ものやことのために、はじめから大きな住まいで備えなくてもいいのかもしれません。
バラエティの豊かさを追うのではなく、一つひとつのものへの愛着を極める、Akiさんの「シンプルな暮らし」。身軽でありながら、ていねいな暮らしぶりは、小さな住まいに暮らす人たちのお手本になりそうですね。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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