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『泌尿器科医ママが伝えたい おちんちんの教科書』(誠文堂新光社)の著者でもあり、助産院でママパパ向けの「おちんちん講座」を開催している泌尿器科医の岡田百合香先生にお話をうかがうシリーズ。第2弾のテーマは、「おちんちんの皮をむくべきかどうか」です。諸説ありますが、はたして……?
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――「赤ちゃんのおちんちんの皮を早めにむくべきか、むかないほうがいいのか」という疑問がよく話題になるのですが、保護者から聞かれることはあるでしょうか?
岡田百合香先生(以下、岡田)はい。赤ちゃんのおちんちんの亀頭をおおっている包皮を小さいうちに保護者が下げたほうがいいかどうか、というのはとてもよく聞かれる質問ですね。
――「早めにむいてあげたほうがいい」という説、「無理にむく必要はない」という説の両方をよく耳にするのですが……。
岡田過去には専門家の間でも意見が分かれていた時期もあったのですが、現在では「無理にむくべきではない」という意見が主流です。日本小児泌尿器科学会においてもそれが基本的な考え方です。
――そうなんですね。海外ではどうですか?
岡田日本だけではなく、アメリカやイギリス、オーストラリアなどの公的な医療情報サイトでも、子供のおちんちんの包皮を無理にむくべきではないと書かれています。
※画像はイメージです
――どうして包皮をむかないほうがいいのでしょう?
岡田まず大前提として、生まれたばかりの赤ちゃんはほとんどの子が亀頭が包皮に覆われた「真性包茎」です。まだ小さいために包皮の開口部が狭く、亀頭と包皮がしっかり癒着しているからです。けれども、多くの場合は成長するにつれて癒着は自然とはがれ包皮口も緩んでいきます。
――なるほど。最初は真性包茎で当然なんですね。
岡田はい。生理的な癒着を無理にはがして包皮をむこうとすると、亀頭に細かな傷ができ、そこから菌が入って炎症を起こしたり、再癒着したりすることもあります。お子さんの性器に苦痛を伴う介入をするのはプライベートゾーンの観点からもいいことではありません。
――確かに。自然な成長に任せたほうが痛い思いをさせなくて済みそうです。
岡田多くの場合は自然とむけてきますから、排尿障害や感染を繰り返す等の理由で医師から指示を受けているようなケースでなければ、成長に任せても大丈夫です。亀頭を洗うときも、皮をむくのは「無理なく下がるところまで」でOKです。保護者の方が「どうしてもむいてあげたい」と思われた場合でも、本人が嫌がったり痛がってたりしているようなら無理をしないようにしていただけたらと思います。
――おちんちんの皮を無理にむこうとすると戻らなくなったりすることがあると聞きますが、本当でしょうか?
岡田あります。先にもお伝えしたように小さな子供の包皮は開口部が狭いため、無理に押し下げると「嵌頓包茎(かんとんほうけい)」といって、おちんちんが包皮によって締め付けられて血流やリンパの流れが悪くなり、むくんだ状態になります。
――そのままにしておくと、どうなるんでしょうか。
岡田放置すると、どんどんむくんで血色が悪くなり、最悪の場合は壊死してしまうことも。ですから、自力で戻せなくなったら、必ず早急に泌尿器科を受診しましょう。圧迫することで元に戻せる場合もありますが、手術が必要になることもあります。
――とても怖いですね。予防策を教えてください。
岡田何より「おちんちんの包をむいたら必ず元に戻す」ことが大切です。お子さんが自分のおちんちんをいじって遊んでいるうちに嵌頓包茎になってしまう場合もありますし、普段から元に戻すよう教えておくことも大切ですね。
――ある程度の年齢になれば、嵌頓包茎になるリスクは減りますか?
岡田体が成長すれば包皮の開口部も広くなりますから、小さな子供よりに比べたらリスクは下がるでしょう。でも、やっぱり包皮を戻すのは基本です。年配の方が介護時に包皮をむかれ、元に戻されなかったために嵌頓包茎になるケースもあります。
――そうなんですか。女性は特に知らない方が多いんじゃないでしょうか。
岡田男性でも知らない方も多いと思います。YouTubeの番組などで「包茎じゃなくなるよう、おちんちんの皮をむきっぱなしにしておこう」と伝えていたりするものもあり、危険です。
※画像はイメージです
――そう考えると、どうして赤ちゃんのおちんちんの皮をむかなくてはいけないと思ってしまうのか疑問ですね。
岡田健康上の心配だけではなく、包皮の状態で優劣をつけるような悪習が関係していると思います。パパたちの中には、ご自身が包茎に関して若いころに嫌な思いをしたため、お子さんに同じ思いをさせたくないと包皮をむきたがる方もいます。根深い問題ですね。
――男性同士の中で、包茎じゃないほうが「すごい!」とされるという話は聞いたことがあります。
岡田一部の医療機関が宣伝のために、包茎を「よくないもの」「不潔なもの」「女性に嫌われるもの」というイメージになるようアピールしてきたせいもあると思います。実際のところ、包茎かどうかを気にする女性は少ないでしょう。だけど、そのイメージにとらわれてしまう男性は少なくありません。
――大人になる儀式としての「割礼」のイメージも関係しているのでしょうか。
岡田世界のさまざまな国で、おちんちんの皮を切除する「割礼」が宗教的な儀式として行われてきましたから、影響は残っていると思います。ただ、現在では子供の自己決定権を優先すべきという意見も強くなってきています。
――なるほど。包茎に対するマイナスなイメージが薄れていくといいですね。
岡田そもそも日本人の8〜9割は包茎です。「真性包茎」で、おしっこがうまくできない、性行為に支障がある、清潔を保つことが難しいなど日常生活に支障があれば泌尿器科の受診をお勧めしますが、そうでなければ少なくとも思春期前に治療が必要になることは限定的です。「仮性包茎」であればなおさらで、清潔にできて炎症を繰り返すなどがなければ問題ありません。社会に蔓延している誤ったイメージやメッセージを変えていくことも大切だと言えそうですね。
(解説:岡田百合香、取材・文:大西まお)
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