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子どもが「ほめられ依存」に…アドラーが指摘した「ほめる子育て」のリスク

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目次

子育て雑誌「AERA with Kids」元編集長・江口祐子さんがベストセラー&名作の子育て本を100冊厳選。数々の取材で学んだ知識を1冊にまとめました。子育てするうえで知っておきたい「子育ての基本」や「新しい教育観」を『子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)からご紹介します。

『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』のほかの記事はこちら

(×)なんでもほめよう(○)ほめかたを工夫する

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成長を褒められ続けると

ある難関私立中学校の先生の話です。

「うちの学校に入ってきた子の中には、自分のアイデンティティーが『成績がよくてほめられてきたこと』であることが多いんです。そうすると、中学校に入って勉強についていけなくなると、自分自身を見失ってポキッと折れてしまう。だから、中学校に入ってから新しい価値観を持たせることが急務なんです」

子育てにおいて「ほめて伸ばす」は基本のように思いますが、実は「ほめる」という行為は諸刃の剣なのです。「ほめる」には、知らずしらずのうちにほめる側の「こうあってほしい」という主観が入ってしまいます。それによって、ほめられた方は、「そうあらねばならない」というメッセージを受け取ってしまうのです。

つまり、成績ばかりほめていると「ママはぼく(私)が成績がいいから好きなんだ」と刷り込まれてしまい、成績が落ちたときにその自己肯定感まで揺らいでしまうのです。

まずは無条件に愛情を注ぐ

ではどんなほめ方をしたらいいのか。それを具体的に解説した本が、『自分でできる子に育つほめ方叱り方』です。

目標は、子どもの行動の善しあしによってほうびを与えたり罰を与えたりする「条件付きの接し方」をするのではなく、行動の善しあしにかかわらず愛情を注ぐ「無条件の接し方」をすること。そしてほめるときは結果でなくプロセスを見て、できるだけ具体的にほめましょう、と提案しています。

子どもをしっかり観察しないと、「いいね」「えらいね」となんとなく言うだけの「おざなりほめ」になりがち。具体的なほめポイントが見つからないからです。

ほめるだけでそんなに労力を使うなんて大変!と思うかもしれませんが、自分に置き換えてみるとわかりやすいかもしれません。

晩ごはんのおかずを単に「おいしい」と言われるのと、「このサラダ、彩りがキレイでおいしい」と言われた時、どっちが嬉しいか。会社で資料を上司に提出した時、「いいね!」と言われるのと、「お客さんの立場に立って細かいところまで作り込んでいるね」と言われたらどっちがやる気が出るでしょうか。

ちなみに、「叱り方」も同様。結果だけを見て「ダメ!」「違う!」と言うのではなく、どこが悪いのかプロセスを見て、なるべく具体的に言うのがポイントです。

『自分でできる子に育つ ほめ方叱り方』試し読みはこちら

あの本も「ほめる」を否定

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2013 年に出版されて以降、ロングセラーを続けている『嫌われる勇気』。アドラー心理学の考え方を、哲学者と青年の対話で解説した本です。実は子育てにも役立つ考え方がたくさん入っています。

また、子育てに特化したアドラー心理学を紹介する本もたくさん出版されていて、『子どもをのばすアドラーの言葉』では、アドラー心理学を使って子どもにどう勉強させるかなども紹介されています。

実はアドラー心理学では、「ほめる」ことを否定しています(ちなみに叱ることも否定しています)。

なぜか。ごく簡単にまとめてしまうと、こういうことです。

ほめるという行為は、「ほめる人」と「ほめられる人」の間に上下関係を作ってしまう。「またほめられたい」と思ってやることは本人の自主性を奪い、「ほめられる」ことへの依存につながる、と。

しかし、これだけ言われると、親としては頭にハテナがたくさんついてしまうかもしれません。そもそも、親が望むことを、子どもがちゃんとできた。だからほめるわけで、それが達成できれば十分なのでは?それじゃダメなの?という意見です。

歯磨きが嫌いな子が歯磨きをしたらほめる。片付けを自分からしたらほめる。宿題をちゃんとやったからほめる。そのような日々の習慣につながるものはほめてやらせるのは決して悪いことではありません。

アドラー心理学で「ほめる」を否定しているのはもう少し深い理由からです。

つまり、子育ての最終目的は子どもを自立させること。いつもほめる、叱るを繰り返していると、子どもはいつまでたっても親の言葉に振り回され、判断を親に頼ってしまい、自分で決める力がつかないということなのです。では、ほめずに子どもをやる気にさせるにはどうしたらいいのでしょうか?

上下の関係でなく、横の関係になって、「勇気づける」。「頑張っているね」などプロセスを認めたり、「ありがとう」と感謝したり。「叱る」の場合も、行動を修正させたいなら威圧する必要はなく、言葉で丁寧に説明していきましょう、とあります。これ、仕事でも同じですね。

子育てコーチングのロングセラー『子どもの心のコーチング』では、子どもに教えたい3 つの力を「愛すること」「責任」、そして「人の役に立つ喜び」と定義しています。

人は本来、人の役に立ちたいと願っています。「ほめること」はその願いを殺してしまう、とあります。

例えば、子どもがお手伝いをしてくれたら、「いい子ね」「えらいね」とほめるのではなく、「お母さん助かったよ」「ありがとう」など、自分の働きが親にどのような影響を与えたかを教えたほうがいい、とのこと。

子どもに「人の役に立つ喜び」の種を植えるコツです。

ワンポイントアドバイス

いろいろな本の「ほめ方」を比べてみるのも面白い!

紹介した4冊

『モンテッソーリ 教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る自分でできる子に育つほめ方叱り方』(島村華子/ディスカヴァー・トゥエンティワン/ 2020)「プロセスほめ」「アクティブ・リスニング」など教育理論に基づいたほめ方・叱り方を紹介。子の対象年齢は3〜12 歳。具体的な声かけ例が多数。

『嫌われる勇気自己啓発の源流「アドラー」の教え』(岸見 一郎 、古賀 史健/ダイヤモンド社/ 2013)アドラーの教えを会話形式で解き明かしていく。舞台やTV ドラマにもなった社会的ベストセラー。

『子どもをのばすアドラーの言葉子育ての勇気』(岸見 一郎/幻冬舎/ 2016)『嫌われる勇気』の著者が、子どもと良い関係を築くためのアドラー心理学の使い方を指南。子どもに干渉するより、「援助」が大切なことがわかる。

『子どもの心のコーチング』(菅原裕子/ PHP文庫/ 2007)人材開発のコンサルタントである著者が、能力開発のための「コーチング」を子育てに応用。子どもの自立を最終目標に、親の役割から考えていく。

江口祐子『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)

『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』のほかの記事はこちら

<関連リンク>・【〇✕で解説】友達にやさしくできたとき「やさしいね」だけではダメ。どうほめるのが正解?『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』

【実はNGだった!】子どもに「さすがお兄ちゃん!」ってほめてない?『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』

【実は逆効果】「ごほうび=シール」はデメリットも! トイトレ時のOKなほめ方 『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』

『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』では、ほかにもママやパパに役立つ育児法などが紹介されています。ぜひ、書籍でもお楽しみください。

書籍『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』について

子育てのポイントがこの1冊で丸わかり!

子育て雑誌「AERA with Kids」元編集長が幼児・小学生を持つ親に向けた子育て本のベストセラー、名作の中から100冊を厳選しました。

絶対押さえておきたい「子育ての基本」や「新しい教育観」をキーワードに沿って紹介されています。自分の抱えている育児の悩みを解決できる本を探す際の索引としても使える、パパママ必携の一冊です。

江口祐子さんのプロフィール

編集者。「AERA with Kids」元編集長。1970年、埼玉県生まれ。浦和第一女子高等学校、日本女子大学文学部卒業。「自分の興味と仕事をリンクさせる」をモットーに、株式会社オレンジページで生活実用誌、転職した株式会社アスコムでは学習、健康系の雑誌、書籍等を数多く担当。2007年に娘が生まれたことにより、子育てや教育にいっそう興味が湧き、2009年から「AERA with Kids」(朝日新聞出版)の編集にフリーランスとして携わる。2018 年から編集長を務め、誌面だけでなく、イベントやインスタグラムを通じたファン拡大につなげる。取材した教育者、経営者、起業家等の数は700人以上。2021年に独立し、エディットプラン合同会社を設立。企業のPR活動、出版プロデュースなども行っている。


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この記事のライター

マイナビウーマン子育て

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