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工藤阿須加(35)は俳優として10年以上活躍する傍ら、5年前から山梨・北杜市で農業も営んでいる。役者としてさまざまな作品に出演しながら、農業をしようと考えたきっかけは何だったのか。同時進行してみて気付いたそれぞれの楽しさ、共通点などについて語った。(高澤 孝介)
ブルーのセットアップから醸し出されるさわやかさは、本人の人柄をそのままに表していた。人当たりが柔らかく、写真撮影ではカメラマンの要望に応えながらより良い一枚のために立ち位置なども提案。記者の質問にも真っすぐなまなざし。真摯(しんし)な立ち居振る舞いが印象的だった。
父は、現役時代に西武や巨人などで活躍し、来シーズンは中日の指揮を執る工藤公康氏(63)。だが、意外にも「野球をする選択肢はなかった」という。長年、テニスに打ち込み「野球に関しては好きではなかったんです。今は大好きなんですけど、当時は好きになれなくて、たまたま僕は野球よりもテニスが好きでした」。自らが心躍ることに真っすぐ取り組んできた。
東農大在学中に「誰かのために行動できる人になりたい」という思いから俳優の道へ。「ものづくりがすごく好きで(作品を)見てくれた人に一瞬でもいいので、明るさや“陽”の気持ちが生まれてくれたら成功だと思っている。その人の人生を変えたいとか大それたことは思っていなくて(作品を見た)人が求めている何かを添えられたら十分」。着実に俳優としてのキャリアを積み重ね、存在感は年を追うごとに大きくなっている。
2021年からは、山梨・北杜市で農業にも注力。大学時代に農業への理解を深めたが、実際に着手するきっかけになったのは、コロナ禍で自分がやりたかったことを見つめ直したことだった。「俺って農業もやりたかったよなと思って。(世間では)よく『お金や時間に余裕ができたら…』って言うんですけど、そんなこと言ったら40、50、60歳になってもできない可能性もある。だったら借金まみれになってもいいから、今やっちゃえと思ったんです」。幼少期に母が農家と交友関係にあったことも影響し「農家さんに日本農業の現状やこれからについて、話を漠然と聞いていて『(農業のために)なんとかできたらいいな』と思っていました」。
現在は東京と山梨の2拠点生活を送っている。水質や災害リスクなど、農業を最優先に考えて場所を決めたが、山梨での活動を始めた当初、「一番苦労したのは、夜に街灯がないのでナビを見ていても迷うことがありました。『この道じゃなかったっけ…?』みたいな」。今では慣れ親しんだ場所となり、「最近はなかなか行けてないので、寂しいくらいです」とすっかり第二のふるさととなりつつある。
約5年間で大根やとうもろこしなど、20種類以上の野菜を栽培してきた工藤は、俳優と農業の共通点を「ものづくり」だと分析する。「農家は毎年気候が違う中で同じ商品を作り続けなきゃいけなくて(出荷する)数も決まっている。(多くの人が)自営業をして経理なども全部やらなきゃいけない。俳優はプロデューサーがいて一つの映画・ドラマを作るんですけど、作り手としてのゴールは一緒だと思います」
農業をやることで、芸能活動にも好影響をもたらしており「ものづくりのゴールはお客さんに喜んでもらうことだと改めて気づき、役者としても準備の大切さや人間関係、時間の使い方を見直すようになりました」。長距離移動や肉体労働で「正直きつい時もあります」と本音を漏らしながらも、「作った野菜を食べてもらい、『おいしい』という言葉が聞けた瞬間に全てが報われます」とやりがいの大きさを感じている。
自分のやりたいことをきっかけに始めた農業だったが、初の冠番組であるBS朝日「工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました」(水曜・後10時)や、日本テレビ系「有吉ゼミ」(月曜・後7時)では「工藤阿須加 楽しい農園生活」として企画化されるなど、思わぬ形で仕事にもつながった。番組では、収穫した野菜を使った料理を地元の人に振る舞うなど、自身の夢に向けて精力的に活動。「いずれ法人化したいと考えている。農福(農業と福祉)連携を含めて、いろいろ取り組んで行きたい」と、未来への展望も明確になってきた。
唯一無二の道を突き進みながらも、目標は意外とシンプルだ。「役者としては、求められているのであれば、それ(期待)に応えるように全力を尽くしたいし、たくさんの作品に関わっていきたい。その中で農業のことは続けられるまで続けていきたいし、どちらも『楽しい』『おいしい』をたくさん届けていきたいなと思います」。2つの現場で汗を流し“もの”で人々の心と体を満たしていく。
◆映画「ファーストボイス」今までと違う人間味ある役
公開中の映画「ファーストボイス」(前田哲監督)は、日本初のハラスメント裁判に挑んだ弁護士(綾瀬はるか)と上司からの嫌がらせで職場を離れた女性の勇気ある行動を描く。
バブル絶頂期の物語で「その時を生きてきた人たちが時代を築いて、その上に僕らが立っている。僕らの世代、下の子たちがどんな印象を受けるのかワクワクする」。被告側の証人として出廷する小松貴教役を演じるが「今まで、比較的明るくて真っすぐな役が多かったけど、(今回は)それとは違う、ある意味人間味があるような男性」と説明。「映画を通して日々の悩みが解消されて、小さな一歩になれば。勇気をほしい人には、ぜひ見てもらいたい」とアピールした。
◆工藤 阿須加(くどう・あすか)1991年8月1日、埼玉県生まれ。35歳。2012年、日本テレビ系「理想の息子」で俳優デビュー。18年にフジテレビ系「ザ・ブラックカンパニー」で連ドラ初主演。主な出演作に、TBS系「ルーズヴェルト・ゲーム」やフジ系「教場」シリーズなど。今年は映画「ファーストボイス」や「昨夜は殺れたかも」などに出演している。父はソフトバンク元監督で、来季は中日を指揮する公康氏、妹はプロゴルファーの遥加。
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スポーツ報知
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