更新日:2024年3月14日 / 公開日:2024年2月25日
「ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿」をテーマとした、北海道にある星野リゾートの温泉旅館「界 ポロト」に、俳優でフォトグラファーの染谷ノエルが訪問。そこでの体験を2回にわたってレポートします。1回目は世界的にも珍しい「モール温泉」や、アイヌ民族の伝統的住居から着想を得て作られたご当地部屋を紹介。旅を通してアイヌ文化に触れ、学び、感じてきました。
「界 ポロト」 は北海道の白老町を代表する湖である「ポロト湖」のほとりに建っています。湖にせり出したように設計された、とんがり屋根の湯小屋が目印。
敷地内にポロト湖を大胆に引き込んでいるため、全客室からポロト湖畔の美しい風景を望め、施設のどこにいてもポロト湖を身近に感じることができます。
また、世界的にも珍しい太古の植物由来の有機物を含有した「モール温泉」を楽しめる宿です。湯小屋では四季折々に変わる景色とともに、ポロト湖との一体感を感じながらの入浴を。
白老町は、古くからアイヌ民族の集落(コタン)があったことで知られる場所です。アイヌ文化を尊重した施設「界 ポロト」で、モール温泉を満喫しながら「ユコロカムイ=温泉の神」に感謝を捧げてみてはいかがでしょうか。
界 ポロトの公式サイトをチェック >天然植物由来の腐植質の有機物を含有した、独特な茶褐色の湯が特徴のモール温泉。 皮膚の再生を促進させる働きがある成分や、皮膚コンディショニング作用のある成分を含むため、“美肌の湯”といわれます。
「界 ポロト」では、世界でも希少な泉質を「△湯」と「〇湯」の2つの異なる大浴場で満喫できます。
△湯は、「とんがり湯小屋」の中にあり、内風呂と露天風呂があります。
このとんがり湯小屋は、アイヌ文化の建築的特徴である、丸太組みの三脚構造の「ケトゥンニ」を基本構造としています。
ケトゥンニは、狩猟民族であったアイヌ民族が狩りをするための小屋を作る際に使われていた構造。湯小屋内には、ケトゥンニ構造を思わせる三角形モチーフがたくさんあるので、探してみるのも楽しいかも。
△湯までは外にある小道を歩きます。雪の中、寒さを感じながら歩いていると、途中に誰かが作った雪だるまがちょこんと置かれていて、ほっこり。
内風呂は、源泉かけ流しの「あつ湯」と、心身を鎮静させる「ぬる湯」の2つの湯船があります。
内風呂の奥には三角形の入り口があり、ポロト湖を一望できる露天風呂へと繋がっています。
露天風呂は、ポロト湖にせり出しているため、北海道の大自然や四季折々の景色を眺めながら、まるで湖に浸かっているかのような一体感を楽しめます。
辺りが真っ暗になる夜に入浴すれば、空に綺麗な月とたくさんの星を見ることも。
入浴後は、とんがり湯小屋内にある湯上がり処で、大きな三角窓の前にあるソファーに座って、壮大なポロト湖を見ながら休憩。
見上げてみると、三角形に美しく組まれた、ケトゥンニの構造がよく見えます。
開放的な「△湯」とは対照的に、洞窟の中や地中にいるかのような落ち着いた空間の「〇湯」。大地から湧き出る茶褐色のモール温泉を実感できるように設計されています。
温泉に入る前には、「界 ポロト」の湯守りが、白老温泉の歴史や泉質、おすすめの入浴法などを説明してくれる「温泉いろは」へ。△湯の湯上がり処で、アイヌ文化・白老・温泉という3つのカテゴリのお話を聞きます。
アイヌ民族は、温泉に「ユコロカムイ」という神が宿っていると考えており、北海道の一部地域では、湯治の際には温泉の神様に挨拶をしてから行うのだそう。入浴の際、温泉の神様に感謝を伝える思いで入ってみて。
温泉いろはの途中では、2つの音声を聞いて、どっちがダイサギかシマエナガかを当てる鳴き声クイズなどもあり、楽しみながら学べる時間です。
アイヌ民族の伝統的住居「チセ」から着想を得て作られたご当地部屋「□の間」。全4タイプのご当地部屋がありますが、全ての部屋がポロト湖に面したレイクビューです。
□の間には、伝統的なチセの中心にあった四角い「炉(ろ)」をイメージしたテーブルが設置されています。
壁紙やクッションなどにアイヌ文様が施されていたり、アイヌ民族の生活から着想を得たアート作品を設えていたり、どの部屋もアイヌ文化を感じることができます。
ポロト湖を見渡すテラスと露天風呂がついた、3室だけの特別室。
テラスに併設している露天風呂。目の前には一面の雪景色が広がり、静寂に包まれ、自然の音だけが聞こえてきます。
「界 ポロト」ではお馴染みのダイサギが遊びに来ていたり、エゾシカやエゾリスなどに出会えることも。
ベッドルームの手前には、ワークスペースのような空間があります。
目の前には白樺があしらわれていて、日が差すと、壁に白樺の影が映り、優しい光に包まれます。
特別室にしかない、「アットゥシ」と呼ばれるアイヌ民族の織物から着想を得た装飾品。樹皮でできており、衣類に用いられているそう。
ふわふわした見た目ですが、木でできているので、触ってみると木の硬さを感じます。
一面の窓や露天風呂からポロト湖の景色が楽しめる、定員3名の、露天風呂付き洋室。
お風呂は、部屋の中にあり、開け閉めできる窓付きの半露天風呂。お湯に入るまでは窓を閉めておいて寒さを凌ぎ、入ったら窓を開けて露天風呂感を楽しむ、というようなこともできます。
露天風呂からは、とんがり湯小屋も見えます。
モール温泉に何度も入浴しているうちに、どんどんお肌がしっとりし、ツルツルになってくるのを感じます。
部屋の壁には、アイヌ文様モチーフの彫刻が施されたオールが飾られています。ポロト湖に漕ぎ出していくような気持ちになって欲しい、という思いで飾ってあるそう。
手彫りなので、よく見ると部屋ごとに少しずつ違うそうで、あまりにも繊細な手仕事に、思わず見入ってしまいます。
夕食は、半個室の食事処で、北海道らしい食材をいかした会席料理をいただきます。
食事処は、木に囲まれた秘密基地のような空間で、穴の空いた壁と照明でキラキラとしていて、まるで星空のよう!物を大切にするというアイヌ民族の精神性に倣い、穴が空いて廃材になってしまうような木を使用しているのだそう。
わざと開けた穴もあるそうですが、ここでもアイヌ文化を感じることができます。
よく見ると、数々の穴にはハートの形をしたものが3つ潜んでいます。運良く発見できれば、いいことがありそうです。
チャーミングな熊と一緒に運ばれてくる先付は、じゃがいものすり流しにいくらがのった「馬鈴薯海宝盛り」です。
熊はアイヌ民族の中で「キムンカムイ=山の神」として大切な存在と捉えられていたので、最初の料理と一緒に。
華やかな見た目の宝楽盛りは、アイヌ民族が交易の際に使用していた丸木舟「イタオマチプ」をモチーフとした船形の器で提供されます。
メインはインパクトのある見た目の「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」。北海道を代表する食材である毛蟹や帆立貝を思う存分いただける、まさに贅沢な一品。
魚介を煮込み、裏ごしした濃厚なブイヤベーススープがたまりません。
締めはチーズとご飯を入れて、リゾット仕立てにして。食材の旨味がぎゅっと詰まったスープを余すことなくいただきます。
デザートは「北のブランマンジェ」。小さなバケツのような器にブランマンジェがたっぷり!ラベンダーとハスカップのソースが添えられています。ソースをかけて、鼻から抜ける花の香りを楽しんで。
ハスカップはブルーベリーのような見た目で、酸味が特徴の果実。アイヌ語の「ハシカブ」が語源で、北海道の特産品です。
今回は、ご当地部屋「□の間」、「モール温泉」が楽しめる大浴場など施設の情報をたっぷりとご紹介しました。
「界 ポロト」で体験できるアクティビティを紹介した記事も、併せてチェックしてみてくださいね。
界 ポロトの予約はこちらから! ><住所>〒059-0902 北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
<TEL>050-3134-8092(9:30〜18:00)
<駐車場>あり
<車>道央自動車道「白老IC」から約6分
<電車>JR北海道「JR白老駅(北口)」から徒歩で約10分
※この記事は2024年1月の取材内容に基づき執筆されています。時期により、イベントや食事などの内容が変更になっている可能性があります。詳細は「界 ポロト」にお問い合わせください。
星野リゾートの温泉旅館「界」をチェック >染谷ノエル(Noel Someya) / 俳優・フォトグラファー
東京都出身。演劇を学ぶため中学卒業後に単身渡英し、ノーサンプトンのBosworth Independent Collegeなどに通う。4年半後に帰国、上智大学にて英文学を専攻。在学中より劇団、東京ジャンクZに所属、舞台俳優のキャリアは15年目を迎える(2023年時点)。写真は留学中、"Photography"の授業がきっかけで本格的に取り組むようになった。旅や日常をドラマチックに切り取る表現を得意とし、雑誌やWEBメディアなどでの作品掲載多数。 撮影、執筆、被写体の三役をこなすキャリアを活かし、取材、連載などでも活躍する。
Twitter: @noel_engeki
Instagram: @noelle.s12
STAFF
Photo&Writing:Noel Someya
Edit:michill編集部
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