更新日:2019年4月23日 / 公開日:2017年5月3日
もし、妻が勤務先を退職してしまったら、その後の税金の取り扱いはどうなるのか?普段あまり意識することがないかもしれませんが、「退職金は?」「年末調整は?」など、意外と分からないのではないでしょうか。そこで今回は、妻が退職した場合、夫の視点、妻の視点、それぞれからみた税金についてお話ししたいと思います。
まずは、夫の視点から見ていくことにします。
妻が退職した場合、真っ先に思いつくのが、夫の扶養に妻が入るかどうか、です。
つまり、税金の視点で言いますと、夫が税務上『配偶者控除』(注1)を受けられるかどうか、ということです。
もし『配偶者控除』が受けられるならば、夫は勤め先に報告して、それ以後の夫の給与計算にて、扶養親族に妻の分(1人分)を追加して源泉所得税を計算してもらうようにします。
毎月の給与から天引きされる源泉所得税が少なくなりますので、その分手取り額も増えます。
では、『配偶者控除』を受けられるかどうか、どのように判断するのでしょうか?
ここで大きなポイントになるのが、『合計所得金額が38万円』以下かどうかです。
妻が退職した時点で、その年の妻の給与収入が103万円以下ならば、
[給与収入103万円以下]-[給与所得控除65万円](注2)=[給与所得38万円以下]
となるため、夫が配偶者控除を受けることができる可能性があります。
ただし仮に給与収入が103万円以下であっても、妻が退職金をもらっている場合には、その退職金の額によっては、『合計所得金額38万円』を超えてしまい、配偶者控除を受けられないこともありますので(注3)ご注意ください。(他の所得がある場合も同様です。)
ではここで、簡単な例を使いながら、『配偶者控除』を受けられるかどうか見ていきます。
(以下、【例1】~【例4】での収入は、いずれも妻が退職した年のものと仮定して話を進めます。)
【例1】 退職した妻の給与収入100万円のみで、退職金その他は0円
→給与収入のみの場合は、単純に103万円以下かどうかで判断。
103万円>[給与100万円]なので、配偶者控除OK。
【例2】 退職した妻の給与収入110万円のみで、退職金その他は0円
→給与収入のみなので、上記【例1】と同じく103万円以下かどうかで判断。
103万円<[給与110万円]なので、配偶者控除NG。
(ただし、年末調整で配偶者特別控除(注4)は受けられます。)
【例3】 退職した妻の給与収入100万円+退職金100万円(勤務年数3年)
→給与収入以外にも収入がある場合は、合計の所得金額が38万円以下かどうかで判断。
[給与100万円]-[給与所得控除65万円]=[給与所得35万円]
([退職金100万円]-[退職所得控除40万円]×3年)×50%<0=[退職所得0円]
38万円>[合計所得金額35万円]なので、配偶者控除OK。
【例4】 退職した妻の給与収入100万円+退職金300万円(勤務年数3年)
→給与収入以外にも収入があるので、上記【例4】と同じく、合計の所得金額が38万円以下かどうかで判断。
[給与100万円]-[給与所得控除65万円]=[給与所得35万円]
([退職金300万円]-[退職所得控除40万円]×3年)×50%=[退職所得90万円]
38万円<[合計所得金額125万円]なので、配偶者控除NG。
もし夫が法人経営者あるいは個人事業主の場合、状況に応じて、次の事項を検討してみてもいいかもしれません。
・夫が法人経営者の場合、退職後の妻は法人の使用人として働いてもらい、法人から給与を支給する
→その法人の節税につながり得る
・夫が個人事業主の場合、退職後の妻は専従者として働いてもらい、専従者給与を支給する
→個人事業主である夫の節税につながり得る
ただし、これらを検討する際には、専門的な判断やタイミング等がありますので、必ず専門家に相談してから具体的な対策をたてるようにしましょう。
次に、妻の視点から見ていくことにします。
退職した妻が再就職をして年末まで在籍すれば、再就職先で年末調整をしてもらえます。
一方、再就職をしなかった場合、退職した元勤務先では年末調整を行っていないはずですので、確定申告が必要になります。
(なお元勤務先の給与から源泉徴収されていて、退職後に収入がない場合には、確定申告することで還付される可能性があります。)
例えば平成29年7月に妻が退職したとして、元勤務先の給与から住民税が天引きされていた場合で、その後も再就職しなかった場合について見ていきます。
まず、平成29年8月~平成30年5月分の給与から天引きされるべきだった住民税について。
この住民税は平成28年の所得に基づいて計算されたものになります。① 最後の給与から一括して天引き
② 再就職する場合は、再就職先の給与から天引き
③ 妻自身で納付する
の3パターンのいずれかで納税することになります。
今回の例は再就職しなかった場合ですので、①か③になります。
もし③を選択された場合には、ご自身で納付を行うことになりますのでご注意ください。
以上は平成28年の所得に基づく住民税の取り扱いでしたが、それでは、平成29年の所得に基づく住民税、すなわち平成29年1月~退職月の7月までの給与にかかる分の住民税の取り扱いはどうなるのでしょうか。
その場合は、平成30年6月から、妻自身で住民税の納付を行うことになります。
(年間の住民税額を、4期に分けて納付することが多いです。例えば6月、8月、11月、翌1月など。)
以上のように、住民税は後払いの性質のあるものですので、妻が退職した後であっても、十分に注意が必要です。
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