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カツセマサヒコ×まついりょうすけインタビュー!vol.1

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Twitterの妄想ツイートが人気で「タイムラインの王子」と呼ばれるライターのカツセマサヒコさんと、「大人に向けたセーラー服」を中心にシンプルだけどどこか独特なデザインが人気のファッション・デザイナーのまついりょうすけさん。共に若い女性のハートをがっちりと掴んで離さない魅力があります。そんなお二人に「働き方」というテーマで対談していただきました。もともと友達というカツセさんとまついさん。和気あいあいのトークが繰り広げられました。

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目次

カツセマサヒコ【ライター】

1986年東京生まれ。明治大学を卒業後、大手印刷会社に入社。2014年に編集プロダクションに転職し、2017年からフリーライターとして活動中。

まついりょうすけ(松井諒祐)【ファッションデザイナー】

1989年兵庫県生まれ。慶應義塾大学、文化服装学院卒業。2014年に独自のブランド、ha | za | maを立ち上げる。

Twitterからスタートした仕事

──カツセさんはTwitterのフォロワーが10万人。まついさんは5万人。ツイートの影響力は考えていますか?

カツセ:まついさんなら服を売るため、僕なら記事を読んでもらうためにTwitterをやっているんだと思います。だから、まついさんなら服の世界観をツイートにも出さないといけないだろうし、僕なら記事の感覚を出さないといけない。そういうことは常に考えていますね。

今日も撮影してもらいましたけど、「あっ、この写真いいね」と思っても、「それ、ブランディング的にはどうなんだろう?」と考えることは、多いかもしれません。まついさんはどう?

ライター:カツセマサヒコ

まつい:僕の場合は、僕が何でも好きなことを言って、それでも残ってくれるフォロワーさんがいればいい、という考え方でやってますね。僕自身とブランドを分けない方がいろんな方に見てもらえる機会が増えそうだなっていうのと、そんなややこしい垢でも見守ってくれる方々が ha | za | maの根強いファンになって下さるのかなと。

アパレル業界ってどんどん衰退してる印象があるので、「元々ブランドの服になんの興味もない」って人にもアプローチしていく必要があると思うんですよね。だから極端な話、ブランドと関係ないネタツイから僕に興味を持ってもらって、そこからブランドのことも知ってもらうような、少し軟派な流れもあっていいのかなと。

デザイナーなら「服だけで勝負しろ」と言われそうですが、そしたら「服、自体に世間の興味が失せてきている現実を直視しろよ」と言いたい。こんなやり方が合うのか、ha | za | ma のお洋服を買ってくれる方には今までお洋服自体に興味がなかったという方も多いですね。

カツセ:それはいい形だよね。

まつい:あと、前にどなたかが「お客さんと個々の関係性を築いていくことが、今後のブランドの強みになっていく」というようなことを言っていて、僕もそれに同意見なんです。お客さんとの関係性を大切にするなら、自分のことをヘンに隠すより、ありのままでいい。例えば「疲れた」とか「ねむい」とか、そんなことでも気軽にツイートしちゃおう、という感じです。

ファッションデザイナー:まついりょうすけ(松井諒祐)

──それで一気にフォロワーが減ったりしませんか?

まつい:減ります。減ります。一気に減ります(笑)。
減るんですけど、それでも買ってくれる人は買ってくれる、と割り切っていますね。

むしろTwitterはフォローされてないけど、お洋服は買ってくれるという方もよく見かけます(笑)。それはそれで服だけでしっかり評価してもらえているような気がして嬉しいですね。あとは僕はアカウントを1つしか持っていないし、複数垢を運用できるほど器用でもないので、個人の息抜きからブランドの宣伝まで1つのアカウントで済ませられたら普通に楽だなって。

──やはり、Twitterの拡散力は無視できない?

まつい:従来であれば、知名度のある店舗さんに商品を置いてもらって、お客さんに知ってもらうという方法くらいしかありませんでした。それが今はネットを通じてお客さんと直接つながることができる。それを知らない取引先の方からは最初、「なぜ、そんなに売れるの?」って不思議がられることも多かったですね。

カツセ:ショップに置いて欲しくても「スペースがない」と言われることもある。それより、自分でやっちゃった方が早いということだよね。

まつい:そうですね。少し寂しい流れですが、今はどのブランドも店舗を減らす方に動いているのかなと感じます。僕が好きだったブランドも路面店はほとんどなくなってしまった。信用的な意味合いで1店舗は構えつつ、あとはネット通販をメインにしてしまうところも多いのかも知れません。ただ個人的には全国各地で展示会を行って、直にお洋服に触れてもらったり着てもらえるような直接のやり取りも大切にしたいです。

──でも、直接、つながることでの弊害もあるのでは?

まつい:これは過去に何度かセレクトショップさんにお洋服を卸させていただいて実感したんですけど、僕自身がTwitterでお客さんと繋がっていることが多いので、お問い合わせやクレームがお店の方に行かないで全部、直接、僕のところにきてしまうんですよね。もちろんクレームの場合は基本的に僕に非があります。でも、お店さんとのやり方にもよるんですけど、結局ほとんど自分で対応するとなると、正直あまり間を挟む意味がないなと…。

カツセ:お店がまついさんの負担を減らすクッションにはならないんだね。

──カツセさんはどうですか?

カツセ:ライターって専門性と取材力・文章力があれば仕事がたくさんきた分野だったのが、今は企画・取材・執筆・編集・拡散までワンストップでできるほうが、ニーズがあると思っています。ライターとして正しい文章を書くことはもちろんですが、マーケティングも考えなければいけない。それがSNSを使って仕事をしているライターの今の在り方、という気はしています。

──仕事は選別していますか?

カツセ:結構しています。僕のフォロワーは7~8割が女性。しかも10代後半から20代の中盤、と決まっているので、そこからあまりにも遠い案件はお断りしています。あくまでもフォロワーと親和性の高い企画を自分で考えていますね。

女性の働き方はもっと自由になるべき

──女性に対して「こんな働き方をして欲しい」というのはありますか?

まつい:女性に限らずですが、いい大学に行って、いい会社に入る、だけが方法ではないと思っていますね。自分自身がそういう流れの中で育ってきたので今はより強く思います。

カツセ:そうだよね。もっと柔軟であっていい。ライフイベントなど、いろんなことが多様化しているので、何時から何時まで働く、とかじゃなくてもいいし、自由な働き方が許される世の中になってもいいんじゃないかな、と。その意味では、僕は自分で働く時間を決められるフリーランスになってよかったと思っています。

フリーランスは、働いているのか、働いていないのかよくわからない、ということがけっこうあって、そこは悩みですけど…。

まつい:僕も一日中、常に仕事のことは考えてますね。仕事とプライベートが混ざりすぎている感じです。でも好きなことを仕事にしているので、基本的にはそれが苦ではない。いや、たまにちょっと苦かな…(笑)。ただ、だからよく「これで働いていると言えるのかな?」とは思いますね。

カツセ:一般的な会社に勤めると、月曜から金曜まで毎日、8時間以上働くと思うんですけど、一週間の大半は仕事をしていることになりますよね。その仕事が楽しくなかったら、めちゃくちゃしんどい。僕は社会人9年目なんですが、「どうしたら仕事を楽しめるか?」ということはいつも考えている気がします。そのためには「好きを仕事にする」ことも、大事だと思っています。

──カツセさんは仕事をするのは何時から何時?

カツセ:僕、朝に働くのが好きなんですよ。一番原稿が進むのが、午前中。極端な日だと、夜10時には寝て、4時に起きる日もあります。

まつい:最初、この話を聞いた時はかなりの衝撃でしたし、裏切られた気持ちでした(笑)。朝4時頃にTwitterを見るとよくカツセさんがタイムラインにいて、完全に昼夜逆転仲間だと思ってたので。「カツセさんも寝ないで頑張ってるんだから僕も頑張らねば」とよく励みにしてたのに…(笑)。僕は完全に夜型で夜中の12時くらいから「さあ、仕事するか」という感じですね。それで朝の6時か7時くらいに寝て、昼の12時に起きてます。

──決められた時間に仕事をしなくても、自分のペースで仕事をすればいい、ということですよね。

カツセ:だから、僕は今、生きることと働くことが近づいている、という感覚がすごく強いんですよ。「ああ、生きてるわ」って実感する。充実しているというのはありますね。

──でも、オンとオフの使い分けは難しくないですか?

カツセ:オンとオフはほぼないですね。スイッチはガバガバ(笑)。どっちかにすぐ、入っちゃうときがある。遊んでいてもアイディアが浮かんだらメモしていたり、記事で使えそうな景色はiPhoneで撮影していたり。まついさんも同じ?

まつい:そうですね。旅行に行ってても常にデザインのヒントを探してたり(笑)。

──それがカツセさんの言うように「好きを仕事にする」ことだし、まついさんの「好きなことを仕事にしていると苦ではなくなる」ということですよね。

カツセ:逆に、働きすぎることが怖いんですよね。僕はフリーランスを始めて2か月目で身体をぶっ壊したことがあるんですよ。何もしていないのにいきなり吐いた。そのとき、「あっ、これは限界だ」と思って、それからは意図的に抑えるようにしています。

まつい:でも、フリーランスは力を抜くことに対して恐怖心があるじゃないですか。力を抜いて、もしお客さんが減っちゃったら次取り返せないんじゃないか、と思うから常に全力にならなきゃと思う。

でも全力でやった分は、良くも悪くも全部自分に返ってくるんですよね。そこには自分で自分の首を絞めてしまう部分もあるのかなと…。

──というと?

まつい:全力で行くとやっぱり売上は伸びるんです。一応前置きさせてもらうと、この点はもう本当に有り難い限りですし、買って下さるお客さんには感謝しかないです。ただ当然、売上が伸びると生産量が増える。配送量も大きくなる。もちろんマニュアル化できる部分をどんどん人に任せられるようにしていけば良いんですけど、僕のやり方だとそこに限界もあるんですよね。

最初の方にもお話ししたように、僕はお客さんとの直接的な繋がりというかアナログのやり取りを大事にしたい想いがかなり強いんです。ただそうなると自分の業務量が減らしきれないという…(笑)。商品と一緒に入れるお手紙も自分でちゃんと書きたいですし。だから実は今、これからの働き方にとても悩んでいるんですよ(笑)。

カツセさんは業務量の調整というか、この仕事は受ける、受けないの選択はどうしているんですか?

カツセ:最近はハッキリと金額を提示して、「これ以下なら受けません」と伝えるケースが多いかなあ。もちろん、「来月、仕事がひとつも来なかったらどうしょう」という不安はある。ライターは単発仕事だから、先が見えない不安も大きいです。でも、余力を作っておくことで、より大きな仕事がきたときに全力で取り掛かれる。一発入魂の記事を多く書けるというのはありますね。

仕事って、積み重ねだと思うんです。「この記事がバズったので、こういう仕事もできます」と言える案件が増えることは、ひとつの仕事から自分の将来を切り開いている感覚がある。今はそこに力を注いだ方がいいと思っているから、仕事を減らして精度を上げていきたい、という気持ちはあります。

それと、先ほど言ったとおりフォロワーに刺さりそうなものしか仕事を受けない。男性向けとか、高級車のPR記事を頼まれても、「フォロワーは興味ないんで」と断ることがあります。高額のギャラを提示されてもやらないですね…。

まつい:僕なら高額ギャラの案件はやっちゃいそう(笑)。カツセさんのブランディングを徹底した姿勢は本当にすごいですよね。

カツセ:クライアントが僕に期待しているのは「拡散」なことが多いんですよ。明らかに僕のインフルエンス力に期待して仕事を頼んできたな、とわかったときに、「あっ、商品的に絶対に刺さらないから、応えられない」と思うと「お互いに不幸なので」と言って別の人を紹介することもある。

まつい:カツセさんはどういう層にどういう内容が届くのか、ということを理解しているから、仕事もお金に惑わされないで選別できるんでしょうね。

カツセ:良くも悪くも、僕は今のところTwitterが生命線になってしまっているから…。ヘンな博打は打たずに、確実に数字を取っていくことが大事だと思っているんです。

もちろん、60歳のおじいさんまで届くコンテンツが作ることができればいいんだけど、まだ難しいと思っている。今いる人たちに向けて発信して、どこまで広がるかということを基本的に考えていますね。

あと、僕は「共感型」の人間だと思っていて、コンテンツはすべて「共感しました」というのが多い。だけど、その一方、「お前なんかに共感されたくないよ」と思うロックな自分もいて(笑)。「共感」って、安っぽくない?

まつい:共感ばかりされるようになったら怖いと思います。単純に共感だけを求めてしまうのはつまらないなと。お客さんに喜んでもらうことはもちろん大切なんですけど、それが目的になったらその創作は「仕事」なんですよね。もちろん仕事なのは当たり前なんですけど、創るってやはり遊びがあるからこそ魅せられるというか「仕事」になる「遊び」であって欲しい。これ意味わかんなくない?ってつくったもの見せてニヤニヤしたいです(笑)。

カツセ:そうそう。フォロワーにチヤホヤされることに甘んじていては危機感を覚える。そこを脱したい、というのは常にあって、それを思っているから続けていられるところはある。

まつい:フォロワーだけの人に見られるのってカッコ悪いじゃないですか。「そうじゃないぞ」というところを見せないといけない。めちゃめちゃ悩みますし、すごく考えます。フォロワーいないのに超ヤバイ仕事している人の方がカッコいい。

カツセ:カッコいいよね。一番、カッコいいのはTwitterやってない人。そんなのに頼らなくても行けちゃう人が一番、カッコいい。やっぱり、そっちの仕事人になりたいという思いはありますよね。

撮影:保井崇志

カツセさん、まついさんとなると、Twitterが話題の中心に。でも、そこにお二人の仕事に対するポリシーが感じられます。
Vol2に続きます。



この記事のライター

大橋博之

大阪生まれ。東京都大田区在住。アニメ雑誌『アニメージュ』(徳間書店)の特派記者としてライター・編集者をスタート。NECの関連会社でPRとweb制作に従事。webメディアの編集会社を経て2016年にインタビュー・ライターとして独立。webメディアと紙メディアの両方で活動中。現在は東京・五反田にあるコワーキングスペースを拠点として取材と執筆をする。フィールドは芸能人・著名人から企業トップまでと幅広い。趣味は散歩、人物撮影。

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