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「そんななし崩し的なやり方では、計画的に進まない」
「良いのか悪いのか決めずに、なし崩しに動き出せば、失敗するよ」
「貯金をなし崩し的に使い、あっという間になくなってしまった」
こんなふうに「なし崩し」を誤って使っている例、かなり頻繁に耳にします。どれも間違っています。あなたは「なし崩し」の意味を正確に説明できますか? まったくできない人も、あやふやに覚えている人も、今日こそ、正しい使い方をしっかり覚えましょう!
当たり前ですが「梨」ではありません。「成し」でもないのです。正解は「済し」です。「返済」の「済」です。元は借金を少しずつ返していくという意味なのです。
済し崩し
1 借金を少しずつ返却すること。元禄太平記「済し崩しの借銭」
2 物事を少しずつ済ましてゆくこと。「済し崩しに既成事実が出来上がる」
広辞苑第6版
1の「借金を少しずつ返却すること」から2の「物事を少しずつ済ましてゆくこと」ができました。ですから、お金のこと以外でも
というような意味になります。「少しずつ」というところがポイントですね。
なしくずし
物事を一度にしないで、少しずつ済ませてゆくこと
現代国語例解辞典
一般の国語辞典にもこのような表記が見られます。
文化庁「平成29年度『国語に関する世論調査』の結果について」によると、「新しい表現や,慣用句等の意味・言い方」の項目で、次のような問いがあります。
どちらの意味だと思うか<問 17>
(3)なし崩し 例文「借金をなし崩しにする」
(ア) なかったことにすること 65.6%
(イ) 少しずつ返していくこと 19.5%
(ウ) (ア)と(イ)の両方 1.3%
(エ) (ア)(イ)とは全く別の意味 5.0%
分からない 8.5%
「崩」のイメージが強いのでしょうか、(ア)の回答が65.6%と最も多かったのです。正解は(イ)です。正解者は19.5%。「分からない」を入れて、ほぼ8割の人が間違えて覚えている、またはしっかりと分からないという状態です。
年齢別に見ると、本来の意味とされる「少しずつ返していくこと」は、全ての年代で「なかったことにすること」を下回っていますが、20代と70歳以上で他の年代より高く、2割台半ばとなっています。
つまり、20代と70歳以上では、若干正解率が高いということ。言わずもがな、70歳以上の場合には、本来の正しい意味を最初から知っているということでしょう。20代の場合は、正しい知識を学校や塾で教わったことが予想されます。そう、その間の、いわゆる私たちの世代が、誤用している率が高いということです。
先日美輪明宏さんがテレビで、日本語の誤用乱用について、「これは言葉の変化ではなく退化です」と断言しておられました。
私もそれに同意します。
人間にとって「変化」は大切なものであり、このような言葉の変化は原因を探る必要があります。そしてその原因が「楽だから」「みんながそう使うから」「使っている人が多いから」という安易なことでしたら、本来の意味で踏ん張るべきだと考えます。しかしそうは言っても流されてしまいますよね。ですから、こんなコラムを読んだときに「ああ、なし崩しって、本当は、少しずつ返していく時に使うんだな」とちょっとだけ復習してくれれば嬉しいです。
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この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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