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2024年住まいのトレンドワードは「断熱新時代」! 省エネ、健康面からニーズ高まり、学校断熱改修・DIY・等級6以上の高性能住宅の普及など断熱は次のステージへ

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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2024年住まいのトレンドワードは「断熱新時代」! 省エネ、健康面からニーズ高まり、学校断熱改修・DIY・等級6以上の高性能住宅の普及など断熱は次のステージへ

近年リクルートでは、さまざまな分野の「トレンド予測」を発表しているが、リクルートの住まい領域の調査研究機関である「SUUMOリサーチセンター」が2024年のトレンドキーワードを発表した。それによると、トレンドを予測するキーワードは「断熱新時代」だという。

【今週の住活トピック】
「SUUMOトレンド発表会2024」/SUUMOリサーチセンター

住宅性能のなかでも関心が高まっているのが「断熱性能」

世の中でカーボンニュートラルが求められ、住宅の断熱性能などの基準を高める動きが加速している。もちろん、こうした政府の取組や世の中の動きがある一方で、 “住宅”は個人の所有物なので、最後は住む人が、住宅をどうしたいかがカギになってくる。

SUUMOリサーチセンターによると、いま、住宅に住む人たちの断熱性能への関心が高まっているという。その理由は、主に3つ。

断熱性能が注目される理由(1)
断熱性が低いと冷暖房効率が悪い ⇔ 断熱性が高いと冷暖房の効きが良い

住宅は壁や床・天井で囲まれ、壁には多くの窓がある。断熱材で壁や床・天井をしっかり覆い、窓の断熱性能を高めることで、外気の暑さ寒さに対して、熱の出入りが少なくなる。つまり、断熱性能が高いほどエアコンなどの冷暖房効率が良くなり、室内の温度を保ちやすくなるのだ。

エアコンの使用で何より気になるのが、電気代の高騰だ。政府による補助金がなくなったことで、冷房が必要な6・7月で、前年よりも電気代が高くなる。SUUMOのリリース資料によると、たとえば、東京電力圏内で一般家庭の7月請求分の電気代は前年同月より1544円高い、8930円になるという。九州電力に至っては、2300円も高くなるというので、かなりの痛手だ。

岸田政権が、唐突に「酷暑乗り切り緊急支援」として8~10月の電気代の補助を行うと発表したが、補助がなくなれば毎月の電気代アップが積み重なることに変わりはない。

東京都内にZEH水準よりも上の断熱等級6相当のYさん邸(写真撮影/片山貴博)

東京都内にZEH水準よりも上の断熱等級6相当のYさん邸(写真撮影/片山貴博)

夫婦在宅ワークでも春~秋の電気代は7500円~1万円程度

夫婦在宅ワークでも春~秋の電気代は7500円~1万円程度。1~3月は電気代約1.8万円~2.3万円、UA値0.42W/m2・K、C値0.28cm2/m2、Q値1.25W/(m2・K)、BEI値(省エネルギー性能指標)0.59(提供/Yさん)

断熱性能が注目される理由(2)
住まい探しでの断熱への関心が高まっている

住まい探しをする際に、SUUMOのサイトで「ZEH」「省エネ」といった文言を含む問い合わせが、平均的な問い合わせ数よりも「新築マンション」で1.6倍、「新築一戸建て」で1.5倍、「賃貸」で1.8倍になったり、「ZEH」[省エネ]といった文言を含む物件掲載数が増加したりといった傾向が見られ、関心の高さがうかがえる。

断熱性能が注目される理由(3)
今住んでいる住宅の断熱改修に取り組む人が増えそう?

リフォームで重視したい項目を聞くと、「断熱」「省エネ」を選択した人が増えているほか、YouTubeでは、市販キットを使って断熱DIYする様子を紹介した動画が多く掲載されているなど、住んでいる住宅の断熱改善への興味の高さがうかがえる。

長野県上田市で開催された「断熱DIYワークショップ」の様子。市民の方も多く参加され、断熱に対する関心の高さがうかがえる。(写真撮影/嘉屋恭子)

長野県上田市で開催された「断熱DIYワークショップ」の様子。市民の方も多く参加され、断熱に対する関心の高さが窺える(写真撮影/嘉屋恭子)

なんと、犬を飼っている家庭でZEHへの関心が高い

そして、筆者が最も注目したのは、犬を飼っている家庭でZEHへの関心が高いことだ。SUUMOリサーチセンターの調査によると、ライフステージ別では子どものいる家庭で、ペット関連では犬を飼っている家庭で、今後賃貸住宅を探す場合に、ZEH賃貸住宅を「家賃が上がっても検討したい」と回答した比率が高かった。

「SUUMOトレンド発表2024」発表会資料より

「SUUMOトレンド発表2024」発表会資料より

これは、共働きが増えたこともあって、家で留守番をする犬のために、エアコンをつけたままで外出する家庭が多いからだろう。電気代のことを考えると、家賃が上がっても電気代を気にせずに済む賃貸住宅が良いと考えたのだと思う。

断熱性能を高めるメリット、電気代や快適な居住空間だけでなく「健康」にも注目

住宅の断熱性能を高めるメリットとしては、「少ないエネルギーで快適に暮らせる」、つまりエアコンの冷暖房効率が良く、快適な室温を保てることにある。ほかにも、住宅ローン減税の減税額や子育てエコホーム支援事業の補助額が引き上げられるなど「優遇が大きい」こともある。

さらには、室温が安定することで、ヒートショックや熱中症のリスクを軽減できる。窓や壁の断熱性能が高いと屋外の冷気の影響を受けにくくなるので、窓ガラスの結露が発生しづらくなる。結露を放置するとカビの原因にもなるので、健康被害を引き起こす可能性も軽減できる。このように、健康面でもメリットが大きいのが、断熱性能の特徴だ。

今回、SUUMOリサーチセンターが注目したのは、断熱性能による健康面のメリットが、高齢者にとどまらずすべての世代に広がることだ。

WHO(世界保健機関)は2018年に「住まいと健康に関するガイドライン」を公表し、寒さによる健康被害から居住者を守るための室内温度として18℃以上を強く勧告した。一方、冬の在宅中の平均居間室温が、WHOが勧告した18℃を満たしているのは、慶応大学名誉教授・伊香賀俊治氏作成資料によると、北海道、新潟県、神奈川県のわずか1道2県で、それ以外の都府県は18℃を下回るという結果もある。

室温が低すぎると血圧が上昇するなど、さまざまな健康リスクを引き起こす。断熱改修によって、冬に暖かく保たれた部屋の居住者では、血圧上昇が抑制されたり、心電図の異常所見が少なくなったりといったデータもある。また、健康リスクが懸念される高齢者だけでなく、子どもや女性の健康にとっても、室温の維持が重要であることがわかったという。

冬暖かく保たれた部屋の人ほど健康数値が高い結果に

※6 実測調査に参加した646世帯の子供1,041人のうち、居間床上1m室温19.7℃以上(暖かさ得点高群の室温平均値)の285世帯、414人の子供を対象として分析
※7 有効サンプル(女性)における知覚温冷感と各室室温平均値の対応は、温暖群:居間室温19.9℃、居間床近傍室温17.8℃、脱衣所室温17.1℃に対し、寒冷群:居間室温19.6℃、居間床近傍室温16.0℃、脱衣所室温15.4℃であった(「SUUMOトレンド発表2024」発表会資料より)

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スーパー高断熱や部分断熱、技術の進歩も追い風に

近年は、住宅の工法や建材、設備の進化によって、より高い断熱性能の向上が期待できるようになったことも追い風になっている。例えば、HEMS3.0(使用料の見える化や遠隔操作に加え、自動制御によってエネルギー消費の最適化が可能)を活用することで極めて高い“スーパー高断熱仕様”を実現することができたり、居住時間の長い部屋だけを断熱改修する“部分断熱改修”を実現できたりする。

施工前、施工後の間取り図

60代のご夫婦は将来は1階だけで生活することを考え1階の一部のみ部分断熱リノベを実施。床、壁、天井を解体し、窓は樹脂サッシに交換。床断熱・壁断熱・天井断熱に加え、床下・外周部・隣室との間には気流止めを施工。リフォーム後のLDKは、冬でも無暖房で17~18℃ほど。夏は冷房の効きが格段に上がり、電源をOFFにしてもしばらく涼しい状態が続くのだとか(「SUUMOトレンド発表2024」発表会資料より)

また、近年は省エネ基準の義務化やZEH住宅の推進などを受けて、地元の工務店の断熱施工技術が向上していることも、断熱性能向上が広がる要因にもなっている。

夢・建築工房のコンパクトな部分断熱リノベ

夢・建築工房のコンパクトな部分断熱リノベ

夢・建築工房のコンパクトな部分断熱リノベ。60代の夫婦が将来は1階だけで生活することを考え、1階の一部のみに部分断熱リノベを実施した施工例(写真提供/夢・建築工房)

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「学校よ、お前もか」。学校や公共施設の断熱改修も進む

断熱性能への関心は住宅にとどまらない。というのも、年間の熱中症のうち4.7%(総務省「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」より)は、教育現場で発生しているからだ。また、夏季の教室の体感温度が高い学校ほど、体調不良の訴えや集中力欠如の発生率が上がるが、断熱改修など環境改善を行うことで、これらの数値は改善することがわかっているという。

特に学校では、事業者が行う断熱改修だけでなく、「断熱DIYワークショップ」など、子どもたちが参加してワークショップ形式の断熱改修DIYイベントも行われているという。

断熱ワークショップマニュアル

学校断熱ネットワーク信州では地球温暖化の問題や、実際行ったDIYをモチーフに手順なども詳しく紹介した「教室断熱ワークショップマニュアル」を発行している(出典/学校断熱ネットワーク信州)

長野県・上田染谷丘高校では生徒が主体となり、断熱ワークショップを実現(撮影/窪田真一)

長野県・上田染谷丘高校では生徒が主体となり、断熱ワークショップを実現(撮影/窪田真一)

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遅れている日本の断熱、省エネ制度にも変化が…

EU諸国では、EPC(Energy Performance Certificates)という共通基準を設け、20年近く前から住宅の断熱・省エネを厳しく運用している。イギリスでは2020年から低品質な住宅の賃貸が禁止されたほどだ。遅ればせながら日本でも、住宅性能表示制度における断熱等性能で2022年4月から「等級5」=ZEH水準、10月から「等級6・7」が新設された。

住宅性能表示制度の省エネ等級

「SUUMOトレンド発表2024」プレスリリースより

さらに、欧米では一般的な、住宅の省エネレベルを不動産広告に表示する「省エネ性能表示制度」が、日本でも2024年4月にスタートした。
(詳しくは、当サイトの「2024年4月スタートの新制度は、住宅の省エネ性能を★の数で表示」を参照)

Mさんが神奈川に建てた家は2022年に新設された断熱性能高水準の等級6。60平米の1LDKと30平米のロフト部分をエアコン1台で管理(撮影/桑田瑞穂)

Mさんが神奈川に建てた家は2022年に新設された断熱性能高水準の等級6。60平米の1LDKと30平米のロフト部分をエアコン1台で管理(撮影/桑田瑞穂)

こういった背景を受けて、SUUMOでは、省エネの観点が大きかったこれまでとは異なり、健康や快適な暮らしなど身近に住宅の断熱性能を感じられる、新しい時代「断熱新時代」がやってくると予測しているのだ。

断熱新時代

「SUUMOトレンド発表2024」発表会用資料より

トレンド発表会の場では、記者から断熱性能を引き上げるには投資も必要となるが、どう考えたらよいかという質問があった。これに対して、発表者の笠松美香『SUUMO』副編集長は、「断熱等級5から6に引き上げるには、サッシの性能を引き上げることになるので80万円程度コストアップするが、メリットが大きいので投資を敢えてするという考え方が広がりつつある」と回答していた。

たしかに、断熱性能の高い住宅を建てたり改修したりするには、それなりに費用もかかる。しかし、断熱性能を向上させると、そこに住む人の日々の快適性や電気代の軽減、健康の維持など、さまざまな恩恵が受けられる。国や自治体も省エネ性の向上に力をいれており、減税や補助金などの優遇措置も取っている。

トレンドキーワードどおりに、日本の場合は今が転機となって、断熱性の高い住宅が当たり前の時代がやってくるのかもしれない。

●関連サイト
・「SUUMOトレンド発表会2024」トレンドワードは「断熱新時代」~健康でエコな新しい住まい水準へ~
・連載「断熱新時代」

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この記事のライター

SUUMO

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