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薬剤師の三上彰貴子です。インフルエンザが今年も流行ってきましたね。テレビでもインフルエンザの注意や薬について耳にしていると思います。今回は、インフルエンザと分かって直ぐに1回だけ服用するゾフルーザという新しい薬について紹介します。
インフルエンザの症状は、一般的に39度以上の高熱が出る特徴があります。発熱のため、身体がガタガタ震えたり、関節が痛くなったりします。
ただ、筋肉があまりない人やインフルエンザウイルスの種類によっては、高熱が出ない場合もあります。
周りにインフルエンザになった人がいて、自分も寒気がする、一気に熱が上がってきた、関節が痛い、熱で頭が痛い、などの症状がありましたら、受診をお勧めします。
もちろん、周りにインフルエンザの人がいなくても、人ごみに行ったりしておかしいなと思ったら、受診してくださいね。
インフルエンザの薬がない時代は(すみません昭和生まれです)、水分をとって安静にしたり、解熱剤を飲んだり、5日ぐらい寝ていました。
最近は、インフルエンザの薬がありますので、飲むのが一般的になってきました。飲まなくて治す…という方法もありますが、高熱で体力を消耗したり、重症化したりする可能性もありますので、早めに薬を飲むようになってきましたね。
ただ、症状やその人の状態によっては、インフルエンザの治療薬を積極的に使わない場合もあります。薬が必要かどうかは、医師の判断に従ってくださいね。
インフルエンザの薬には、主に以下のようなものがあります。
・タミフル 1日2回 5日間 内服
・リレンザ 1日2回 5日間 吸入(吸うタイプの薬です)
・イナビル 1回 吸入 (成人は2本で4吸入、小児は2吸入)
・ラピアクタ 1回 点滴(医療機関での点滴になります)
・ゾフルーザ 1回 内服 (成人は20mg錠を2つ、80kg以上は4つ)
その他、アマンタジン(シンメトレル)、ファビピラビル(アビガン)、麻黄湯(マオウトウ)などを使うこともありますが、ここでは触れません。
上記は、インフルエンザになってから48時間以内には飲んでいただきたい薬です(※)。そのため、インフルエンザのような症状だなと思ったらすぐに病院に行ってくださいね。
使い分けは、もちろん医師の判断によりますが、錠剤が飲めるかどうかもポイントです。吐き気があって飲めないようでしたら、吸入や点滴を使うことがあります。また、小さい子供に使える薬かどうか、などで決めています。
お金の面では、新しい薬のゾフルーザは、薬剤費だけを一般的な保険の3割負担で考えますと、約1,440円になります。
タミフルは、3割負担で820円、昔からの薬でジェネリック(後発品)も出ていて、ジェネリックだと410円程度です。
ただ、上記は薬の値段ですので、これ以外にも診察費、薬局での薬を調整したり説明したりチェックしたりする費用(調剤費など)がかかります。
差額だと、600~1,000円ぐらい違う感覚だと思います。(ゾフルーザは、80kg以上ですと2倍の量(4錠)飲む必要がありますので、薬の自己負担が2,880円程度になる可能性があります。そのため負担金額を懸念して、医師によっては他の薬剤にする場合もあります。)
ゾフルーザについて、もう少し説明します。
今までの薬と何が違うのか…というところですが、ざっくりな説明では、今までの薬は、細胞の中で増えたインフルエンザウイルスが細胞の外に出るのを抑えていたのですが、ゾフルーザは、インフルエンザウイルスが細胞内で増えるのを抑える薬になります(※)。
そのため、タミフルと比較してですが、ゾフルーザの方が早くウイルスが身体から出ていくという結果も出ています。
ただ、どちらが良く効くか、という意味では、従来の薬と変わらないようです。
医師の診療時の判断になりますが、何か薬や治療法について希望や質問があれば医師に相談してみてもいいかと思います。
インフルエンザの予防については、『隠れインフルエンザかも!薬剤師が教えるインフルエンザの対処法』も参考にしてみてください。
インフルエンザウイルスは、鼻やのどの粘膜に付着して20分ぐらいで体内に入り込むと言われています。
そのため、ウイルスを付着させないように鼻やのどを乾燥させないようにするといいですね。20分に1回程度、こまめに水分を補給するのがお勧めです。そして、菌が付着しないように、マスクや手洗いをする、口や鼻周辺を汚い手で触らないことも大切です。
インフルエンザウイルスの増殖は、感染してから約48~72時間がピークになります。それゆえ、ピークになる前に薬を服用していただきたいので、48時間以内に飲むこととなっています。
インフルエンザウイルスが細胞内に感染すると、自分のウイルスの分身を増やし、増殖してから感染細胞から外に出ていきます。そして、また新たに他の細胞に感染していきます。
従来の薬は、インフルエンザウイルスが感染細胞から外に出る酵素を阻害するので、外に出て他の細胞に感染できません。ゾフルーザは、細胞内に入ったインフルエンザウイルスに対して自分の分身を作らせないようにして細胞内で増殖させません。そういった違いがあります。
ゾフルーザの方が、比較的早くウイルスが外に出ていきますので、2日ぐらいで治った感じになるとも言われています。が、自己判断で学校に行ったり出社したりせず、医師にいつから行っていいか確認してからにしましょう。
なお、インフルエンザ予防にはタミフルやイナビルなどが使われていますが、ゾフルーザは今のところ(2019年1月現在)予防に対する適応症はありません。これから開発、承認を受けるとは思いますので、今後の動向も気にしていきたいですね。
手洗いをしっかりとして、乾燥を防いで、睡眠と栄養をよくとり、もちろん軽い運動もして、インフルエンザの流行する季節を乗り切ってくださいね。
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この記事のライター
薬剤師
三上彰貴子
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外資系製薬会社勤務後、慶應義塾大学にてMBA取得。卒業後、朝日アーサー・アンダーセン(現PWC)にて主に医療分野のコンサルティングを手がける。2005年より独立し、株式会社A.M.C代表取締役となり、製薬会社・化粧品会社関連のマーケティング、人財育成セミナーなどを行う。現在は、薬科大学博士課程にて研究も行う。その他、薬局薬剤師、登録販売者向けの講師、薬科大学非常勤講師としても活躍中。
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