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国民年金の「第3号被保険者」。会社員・公務員(第2号被保険者)の配偶者として扶養されていれば、年金保険料の負担はありません。では、配偶者が離職してしまったら保険料の負担はどうなるのか?公的年金の専門家である社会保険労務士の浦野さんが教えてくれました。
日本の公的年金制度には3種類の被保険者があります。
夫が会社員・公務員で、妻が扶養されている(妻年収130万円未満が原則)のであれば、第2号被保険者の配偶者として、妻は第3号被保険者となります。
第3号被保険者は、年金保険料の負担はなく、年金を受給する際、公的年金の基礎年金部分は加入年数に応じた金額を受け取ることができます。
では、夫が会社員、妻が扶養というケースで、夫が会社を辞めてしまったらどうなるのか?
夫が会社を辞めたら、夫は「第2号」ではなくなります。
「第3号」は「第2号」の配偶者であることが要件ですので、夫が離職したら妻は「第3号被保険者」ではなくなってしまうのです。
保険料負担のない第3号被保険者ですが、第3号でなくなってしまうと原則として保険料を負担する必要があります。
夫が離職、元3号被保険者の妻の収入が変わらないという場合、夫も妻も「第1号被保険者」となりますが、第1号被保険者の年金保険料は定額で、月16,490円(平成29年度)。夫婦合わせると、32,980円(2人分・平成29年度)となります。
元々金額ゼロだった妻の分の年金保険料も負担する必要があるので、夫が会社を辞めた後の方が、夫婦の年金保険料が増えてしまうというケースもあります。
離職で収入減という状態ですので、負担感を感じる方も多いのではないかと思います。
国民年金の第1号被保険者は、収入にかかわらず定額の保険料ですので、所得が低く保険料を納めるのが難しいかた向けに、保険料免除制度があります。
免除制度を利用すれば、将来年金を受給する際、どのくらい保険料を払ってきたのかという「受給資格期間」に算入され、また、全額免除であれば基礎年金の2分の1の金額が、免除期間の分として年金額の計算に反映されます。
この免除制度、所得が低い世帯向けのものですので、前年の所得に応じて、所得制限額があり、所得が高い世帯は利用できないのが原則なのですが、「失業」が原因であれば、所得に関係なく免除制度を利用できます。
この場合の「失業」は、会社都合による離職だけではなく、自己都合による離職も含まれます。
夫が離職して夫婦ともに第1号被保険者となり、保険料の負担が厳しいという場合、免除制度を利用すれば、「未納」状態を回避でき、一定額の年金額を確保することができるのです。
夫の離職を契機に、妻のパート労働の時間を増やして妻が「第2号」として社会保険に加入することもできます。
パート労働者の厚生年金加入の基準は週30時間の労働時間ですが、大企業や労使が合意した事業所の場合、週20時間労働+月収8.8万円以上という基準もあります。(事業所により異なりますので、要確認です。)
妻が第2号被保険者として厚生年金に加入し、夫が無職状態であれば、夫が妻に扶養されている状態(専業主夫)として、第3号被保険者なることも可能です。(但し夫が失業保険を受給している期間は、収入ありとみなされてしまうので、第3号にはなれません。)
一般的には「会社員の妻」というのが第3号被保険者のイメージですが、男女は関係なく「第2号被保険者」に扶養されている配偶者であれば、第3号被保険者の資格はあるのです。
この記事のライター
浦野英樹
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昭和44年大分県出身。東京都立大学法学部卒。出版社人事労務部門に勤務の後、平成17年、社会保険労務士として独立。企業内での出産育児に関わる規定の整備・手続きに加え、子育てママが子連れで参加できるマネーセミナー「節約ママの楽しい家計塾」レギュラー講師として、わかりやすく労働法や社会保険の仕組みを伝える活動を展開。地元民放ラジオ局(大分放送)にて、家計のやりくりについてのコメンテーターも担当。
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